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第四十一話 オスカーさんとレグルスさん。

 ランクSの凄腕冒険者のオスカーさんと、ランクAのレグルスさん。

 二人ともダンジョンの小規模スタンピードで、オスカーさんは大怪我を負い、レグルスさんは視力と声を失った。


 オスカーさんは怪我で不自由になった自分の身体の事よりも、レグルスさんのこれからを案じていた所に、スノウの念話を訊いてレグルスさんに希望を持ったんだって。レグルスさんに下手な希望を持たせたくないから、スノウが本当に教えてくれるって確約されるまでは内緒にしていたんだそう。


 レグルスさんに会って欲しいというので、オスカーさんとレグルスさんがこの街での住まいにお邪魔する事になった。


 私たちも始めは遠慮した「まだ夜も明けぬこんな時間にお邪魔なんてレグルスさんに失礼ですよ、お邪魔するなら、突然じゃなくて来るってお話して貰ってからいきますから」って言ったのだけど…オスカーさんは訊き入れやしませんでした。

 一刻も早く伝えたいと必死に頼まれれば、私達が折れるしかなかった。


 オスカーさんに連れて来られた滞在している家はログハウスの様な感じだった。

 丸太っていうのかな? そういうのでガッチリ組まれてある家は、森に建ててありそうな見た目である。街だけど。


 オスカーさんが木製の扉を開き、家の中へと消えていった。


「本人がそう言うんだから、迷惑にならないよね…?」

 まだ日も昇らぬ時間で、周囲の家々から物音ひとつしない静寂の中、オスカーさんに来てくれと頼まれてはいるものの不安になるのである。


「いいんじゃない? もしレグルスって人に嫌がられても、その責任は全てオスカーにあるんだから。リティシアは堂々としてていいよ」


「悪い報告を持って来た訳ではなく、レグルスという者にとってこの上ない朗報なのだ、心配せずともよいのではないか? 早速入って挨拶を済ませてしまおう」


 スノウとユキに背中を押されるようにして室内に入った。







 レグルスさんは寝台の上で上半身を起こして座っていた。


 レグルスさんは深い海のように青い髪は背中の中ほどまで伸びている。

 瞳を閉じたままなので眠ってるのかと思う程だった。

 一見すると女性にも見えそうな中性的な容姿は、病人のような雰囲気も相まって儚げさが加わって、さらに女性のようである。

 オスカーさんに男性だと訊いていなかったら、性別間違えてしまいそうだ。


 レグルスさんの青い髪を見ていると、流石ファンタジーの世界だなと思ってしまった。染めた時の乾燥した感じはなく、傷みがないサラサラした長い髪はどうみても地毛にしか見えない。

 そういえば、ハーフバースデーの時にピンクの髪の人もいたような…

 うん、流石ファンタジー世界。



 レグラスさんの部屋は、ベッドとチェストがひとつだけのシンプル過ぎる室内だった。

 ベッド横に小さな腰掛椅子が置いてあって、たぶんいつもその椅子にオスカーさんが座るんだろう。


 オスカーさんに紹介されて互いに挨拶をする。

 レグルスさんは声が出せないので、私たちが一方的に話しかけてるだけ。

 耳だけは聴こえるので、頷いたり首を左右に振ったりして意思表示をしているようだ。

 私達の自己紹介にうんうんと何度か頷いた後、ペコリと深く頭を下げられた。

 前世日本人の癖で、私もペコリと下げたけれど、そういえば見えてなかったんだったと思い出して「こちらこそ宜しくお願いします」と声に出して挨拶を返した。


 今日はもう遅いから、教えるのは明日からということで私達は帰る事にする。


 オスカーさんが不安そうに「本当に明日来てくれるのか?」と訊いてきた。


 そうだよね、スノウに放置されてたもんね。と思って、

「スノウ明日は絶対くるよね?」と不安そうなオスカーさんの前で念押しする。


 スノウは失礼だなって拗ねたように呟いて「当然来るよ。また明日ね」と確約してくれた。

 オスカーさんはそこでやっとホッとした顔になる。


 今日一度訪れたので、次からは転移で直接ココに来ることをスノウがオスカーさんに話している。


 声には出すことは出来ないけれど、レグルスさんも不安そうにしてる気がして、レグルスさんに近づき「明日、絶対来ますから、安心して下さいね」と、レグルスさんの手を握って話すと、レグルスさんは何度もうんうんと頷きながら、私の手を強くギュっと握った。


「さ、ユキ、リティシア、朝日が昇る前に帰ろう?」とスノウが私とユキの手を繋ぐ。

 そしてオスカーさんとレグルスさんに手を振りながら、私の部屋へと転移したのだった。



御覧下さり有難うございましたm(_ _)m

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