第三十六話 聖獣様は超絶美形でした。
「ええっ!? スノウなの!?」
私の大きな声が静かで広い寝室で反響するように広がる。
「しぃーーっ、ユキが起きちゃうよ?」
ちょっとだけ面白がっているようなスノウの声が、私の耳元の傍でぼそぼそしていて、くすぐったい。
「あっ」
片手で口元を反射的に押さえたけど、大きな声を出した後では意味ない。
背後にはスノウ、目の前で寝てるのはユキ……なんだ。
どうみても人間の男の子、それも七歳の私よりは大きい身体を見ると、年上なのかな? 元々聖獣だから随分年上だとは思うけど。
見た目年齢ってヤツが気になる。
そして――――
この色白の生肌が見えている事から、上半身は裸である。
「スノウ…もしかして、スノウ達って全裸ではないよね?」
全裸だったら私も色々ギャー! となる訳ですが、全裸じゃないよね…?
「あー…うん、人は服を着るものなのは理解してたんだけど。
服を用意する事が出来なくてね? ボックスにも入ってな……「ちょーっと待って! 全裸!? 二人とも?」…うん。」
全裸と訊いて、心の中で盛大にギャーー! である。
「………。とりあえずお腹に回してる腕、外して貰える?」
とりあえず距離をとろうにも、ガッチリ固定である。
「……あー、うん。あとちょっとだけいい?」
「全裸は無理。」
「ええっ!? 全裸は初めてじゃないでしょう? いつも全裸だったよ僕たち。」
「あれは毛があったでしょ!」
毛の問題ではないのだが。
「じゃあ、魔法で今体毛を――「生やさないでいい! 生やしたら嫌いになる!」絶対生やさない!」
生やす生やさないのくだらいないやり取りを暫しする二人。
「いつも僕のお腹に顔を突っ込んで深呼吸してるくらい積極的なのに、何で後ろから抱っこして寝るのはダメなの?」
心底分からないというようにスノウが言う。
「……え、そこから?」
人と子虎の違いから話すの?
「なんでダメなの?」
「前は子虎だったけど、今は見た目は人でしょう? 凄く凄く恥ずかしいの。人の姿のスノウやユキと密着するの…」
「見た目が違ったら良い事悪い事あるって事? 人の姿になった僕は嫌い?」
少し落ち込んだ声のスノウに気付いて、リティシアは思わず後ろを振り返った。
そして、固まる。
夜の闇の中で月のように輝きそうな銀髪は、射し込む朝日を浴びて透けるような淡い色。銀色の長い睫毛に縁どられた蜂蜜のような金色の瞳には縦長の瞳孔。
へにょっと下げた眉、目尻に黒子が二つ並んでいる。
整った鼻梁は細く形が良く、口元はふっくらとして艶やかなピンク色。
真っ白で白磁のようにつるりとした頬、スッキリとした顎にスラリとした首筋……
「ス、ス………」
「ス? リティシアどうしたの?」
熱でもあるかのように頬を真っ赤にして、呆然としながら見つめられたと思ったら、今度はスと一言口にしたっきり、リティシアの口がパクパクとしている。
「ノウ……スノウだよね?」
やっと出た声が紡いだ言葉は、スノウかどうかの確認。
「僕? うん、スノウだよ? えっ、本当にどうしたのリティシア、大丈夫?」
「大丈夫! …だけど、大丈夫じゃない…」
「えっ!? どっち!? 顔が凄く赤いよ、誰か呼んでくるっ……「呼ばなくていい!」」
スノウは取り乱したようにアタフタしだして、私を全裸の姿で抱っこしたままベッドを降り、寝室の扉まで走った。
リティシアは、この姿は絶対ヤバイと慌てて止めた。
「呼ばなくていいって…! だって、顔が赤いよ。リティシアいい子だからお医者さんに診て貰おう?」
宥めるように言ってくるスノウ。優しいし心配してくれるのは嬉しいんだけど、今は大変困る。
「スノウが凄く綺麗な人だったから吃驚して見つめちゃっただけ。赤いのは恥ずかしいから。いろいろと。」
「恥ずかしい…どうして? 綺麗? 僕が?」
スノウからたくさん質問される。
全裸の男の子に抱っこされてるこの状況……
「スノウはカッコイイ、色々話したいことはあるけれど、まず先に服を着よう。」
話はそれからだ。




