第三十五話 えっと、誰ですか…?
誤字脱字報告いつも有難うございます。
夜明け前に起きて準備をして、スノウにいつもの森へと転移して貰う。
最近は、ユキとスノウにも『そろそろ魔力の放出をしてもいい頃だね』と言われて、薬草をそれなりの数を採取したら、ただ魔力だけを手のひらと指先から流す作業をしている。
スノウが魔物が来ても私に掠り傷ひとつ付けない強固な結界を張っているらしく、魔力の放出に集中してる間、無防備になっていても大丈夫らしい。
私に結界をしっかりとかけたら、ユキとスノウは二匹で森の奥へと駆けて行く。
薬草の採取の時待つのも暇だろうから行ってきていいよって二匹に伝えた事があるのだけれど、二匹とも鼻に皺を寄せて嫌そうな表情? をしながら『リティシアは夢中になると周りを見ないで森深く移動するからダメ(だ)』と言われた。
そんなことないけどなー、一応周囲は見てるけど…とは思うものの、忘れがちだけど二匹は聖獣様である。神の眷属のアドバイスには素直に従った方がいい気がするので、素直に従っている。
最近は採集にも手慣れてきて、鑑定スキルを使用しながら採集しているけれど、根ね葉も傷つける事なく、綺麗な状態でとる事が出来るようになった。
鑑定スキルを使うと、視界に赤い矢印と緑の矢印等が出て来て、赤い矢印を意識すると赤い矢印の説明アイコンみたいなのが出てきて魔物の名前レベル現在の魔物状態などを知る事が出来るようになった。赤い色は魔物って事らしい。
緑の色は草の色って事で植物ってわけだ。
その鑑定のおかげで、わざわざ本を開いて絵に似た植物を探すという面倒な手間が省略できるので、大変有難い。
二匹が魔物狩りに行って魔物を倒した経験値? 熟練値? のようなものは、私にも自動的に入ってるらしく、薬草採集と魔力の放出の練習しかしていないというのにレベルだけはどんどん上がっている。
楽して稼げるなんて、頑張ってる人に申し訳ない気がしないでもない。
――が、そんな事は良い子ちゃんぶりたいだけの私の勝手な偽善だと分かっている。
私はその人に成れないしその人も私に成れないのだから、妙な罪悪感は必要ない。
代わる気はないし代われないものだもの。
自分のしたい事の為にはふてぶてしく生きていこう。
定期的におそってくる罪悪感にいつものように言い訊かせて、リティシアは魔力放出に集中したのだった。
狩りからユキとスノウがご機嫌な様子で戻ってきた。
今日もたくさん倒してきたのか、ユキの尻尾がぶんぶんと揺れている。
スノウもゆらゆらと尻尾を揺らしていた。
『リティシア、かえるよー』
スノウに呼びかけられて、魔力放出を止める。
「うん! かえろ!」
そして、スノウに転移して貰って帰ったのだった。
いつものように勉学やレッスンに励み(最近は錬金術なども学び始めた) 両親と晩餐を食べて、入浴をして就寝。
ユキとスノウは森から戻ってきたら速攻私が入れているので、夜は入らない。
お風呂から戻ると、よっぽど疲れていたのかユキとスノウは鼻をぴすぴす鳴らしながら熟睡していた。
( 今日はよっぽど頑張ったんだな)
微笑ましく思いながら、私もすぐに眠くなり寝たのだった。
温かいな…
お風呂の中に居るみたい。背中もお腹も温かい。
パチリと目を開けたら目の前には色白の肌のような壁? が見える。
その壁を辿って頭の上を見上げると…
「……っ!?」
白っぽい髪をした男の子…?
飛び起きようとするも、ベッドに縫い付けられたかのように体が動かない。
( なに……?)
どうやらお腹部分を拘束されている事に気付く。
お腹へと手を伸ばしたら、温かい…腕?
「………えっ?」
思わず声が出た。
すると、お腹に回されていた腕に引き寄せるようにキュッと力が込められた。
「ん、リティシア起きた?」
眠そうだけど優しい声が背中側からする。
ビクッとしたまま硬直するリティシアを宥めるようにお腹をなでなでされる。
その行為にさらにビクッとするリティシア。
「ん…どしたの? ああ、僕だよ僕。」
「僕…?」
思わず問いかけたが、一緒のベッドで就寝するような僕の知り合いはいない。
「ふふ、緊張してるね。スノウだよ。昨夜リティシアが寝た後、ユキと一緒に人化が出来るようになったんだよ。昨日倒した魔物が結構手ごわいヤツでさ…ある程度経験値も溜まってたみたいで、覚醒する事が出来たの。」
「ええ!? スノウなの?」
私の大声が寝室内に響いた。
御覧下さいましてどうも有難うございました。




