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悪役令嬢の中身が私になってしまった。  作者: iBuKi


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33/55

第三十三話 取りあえず落ち着こう。

「こらこらこら! 落ち着いて!」

 目の前の悪人面の大男は取りあえず置いておいて、ユキとスノウを宥める。


 悪人面した大男は両手を上にあげて「物騒な番犬付きかー! お前らの可愛いご主人様に危害を加える気はないぞ!」と叫んだ。


 二匹の目線にしゃがんでそれぞれの首に腕を回してギュっと抱きしめる。

 物騒に唸っていた音が少しずつ消えていった。


 クゥーンというユキの甘えた声、スノウが私の頬をぺろりと舐める。

『危害を加える気なくても、いきなり肩に手を置くのはダメでしょ。』

 スノウが悪人面の大男に苦言を呈した。


「うおっ! 頭の中に声が…っ!」

 大男さんは頭の中に声が響く感覚に凄い違和感を覚えるのか、おろおろしだした。


「悪魔か!? 悪魔が頭の中に直接声を……痛っ!」

 取り乱した大男さんの後頭部を後から来たスラリとした長身の人が叩いた。


「落ち着けバカ」


 冷静ながら少しドスが効いた声は、さっき怪我で療養中なんて腑抜けた事言うならSランクなんて辞めろとか言われてた人だ。

 じゃあ、結構失礼な事いって怒らせてた人ってこの悪人面の大男の人…?

 言いそうな顔してる…思わずうんうんと頷いてしまった。


「お前、馬鹿力で叩くなよ! 目ん玉でそうになったわ!」

「出なかったからいいだろ。お前うるさい」

「頭ん中に声が聴こえたんだよ! お前もさっき聴こえただろ!?」


 この二人仲良し…?

 声だけ訊いてる時は仲悪そうに感じていたけれど、姿を目にしながら遣り取り見てると、二人の空気感が良くわかる。

 これは言葉を飾らないで本音を語れる気易い関係なのだと。


『念話って奴だよ。悪魔の声じゃーない』

 スノウが呆れたような声で説明する。


『慣れぬうちに驚くのは仕方ない』

 ユキは騒いでいた大男のフォローをしている。


 この大男の直情的な性格にユキは同族を感じたようである。


「それで、念話って?」

 長身の男の人がスノウに質問する。

『声を出さずに頭の中に直接声をかけるって感じ?』


「それは、声を失った人間でも使えるのか?」

『そりゃ使えるけど。ただ自分の声を記憶してないと無理だったかな』

「声を記憶ってなんだ?」

 眉間に皺を寄せて長身の人が尋ねる。


『元々喋っていて自分の声はこうだって記憶してることだよ。

 もし分かっていなかったら、どんな声で話すかイメージを固められないと発動しないし。無いものを形にするのは難しいんだ。』

「分かった。それは大丈夫だ。じゃあ、念話を俺に伝授してくれないか」

 淡々と会話を続ける一人と一匹。

 そのやり取りを黙って訊く私達。


『えっ、やだよ』

 スノウはあっさりと拒否した。

「対価はいくらでも払う! 伝授して欲しい」

 スノウに縋る長身さん。

 いくらでも払うなんて言ったらダメなのでは?

 もしスノウが悪人だったらどうするの…不用心な人だな。


 いやスノウは悪人じゃないな悪獣人?


『僕はリティシアの傍にずっといたいの。あんたに念話なんて教えてる間にリティシアに何かあっても嫌だし。』

「ならそのリティシアも一緒に居ればいい」

『今日はもう帰る。もし次に会う事があれば考えとくよ』

 長身さんがガッカリしたように肩を下げた。


「そうか、深夜だもんな。危ないから家まで送る」

 長身さんが提案してくれる。

 いい人だ、ちょっと強引だけど。

 でも…もう転移が出来る事分かっているし、わざわざ送って貰う方が面倒だ。


『送って貰わなくても大丈夫。(転移使うから)すぐそこだから。』

「すぐそこ…?」


 大男さんも首を傾げて「そんな近くに住む場所あったか?」と呟いている。


『リティシア、ユキ、かえろ』


 スノウが帰ろうと促してくる。


 そうだね、今日は狩りしたかったけど無理そうだもんね。

 この長身さん一緒に来そうだもん。


「わかった、ユキ、スノウもそう言ってるし今日はかえろ?」


 二人の大人の横を通り過ぎ、さっさとギルドの外に出た。

 少し駆け足になって距離を取り始めた所で「おい! 次はいつ来るんだ!」と長身さんの大きな声が背後から聴こえる。


 が、スノウは呼び声を無視して、速攻で私達を連れて転移したのだった。


 リティシア達が消えた場所に佇む男。


「えっ………消えた?」


 呆然と呟く声だけが深夜の街に響いた。

御覧下さり有難うございます。

学園が始まるまでは恋愛には遠くこのような物語の下地的なのが続きます。

すみません(;'∀')

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