第二十二話 ステータス・オープン
「スッ、テェー、タス・オッ、ォープンッ」
ステータス・オープンと唱えるだけなのに、気恥ずかしくてカミカミである。
『………ソレで発動できたのかな?』
疑わしげにスノウが確認してくる。
上下左右にウィンドウ的なのないのかと、きょろきょろするが見当たらない。
日本のファンタジー小説好きそうなティナ様なら、可視化出来るゲームウィンドウのような何かがありそうだと思ったんだけど―――
「ない……」
ガクッと頭が下がり落ち込む。
「スノウやってみない?」
『僕は女神様に何もいわれてないし多分言っても発動しないと思う。』
あっさり淡々とした口調で語る。
「そっか…試す?」
『やらない』
「はぁい……」
すぅーはぁー深呼吸をする。
何度も繰り返したい言葉ではない、もうさっさと終わらせたい。
「【ステータス・オープン】!」
フォンっとした耳慣れた音がした。ゲーム内でステータスウィンドウを開いた時のような効果音。
さっき話してた通りのウィンドウがリティシアの目の前にある。
薄くて青い半透明のウィンドウは、向こう側が透けて見えた。
[名前] リティシア・ファルメール
[年齢] 7歳
[職業] 公爵令嬢 / 隠匿中(女神フェルティナの愛しい子)
[レベル] 1
[体力] 25 / 隠匿中(500)
[魔力] 100 / 隠匿中(100000)
[属性] 光属性・闇属性 / 隠匿中(全属性)
[スキル] 鑑定・無限収納・■■■■・■■■■・■■■■
[特殊スキル] 状態異常無効・体力魔力自動回復・魔力増大
[■スキル] 隠匿中(複製・付与・吸収)・創造魔法・クリエイト
[加護] 聖獣銀虎の守護・聖獣銀狼の守護
「……ティナ様。」
小説で一度お見かけするようなチートなものが見えるんですが。
気のせいですか?
ぱちぱちと何度か瞬きするも、ウィンドウに載ってる文字は消えない。
複製・付与・吸収でも監禁待ったなしのスキルだったのに、創造魔法って並み居る転生小説の中でも上位中の上位の魔法では…。
既に隠匿してくれてるのは大変ありがたいですけど、創造魔法があったらこの世界にない魔法も使えそうで嬉しいですけど!
私、使いこなせる気がしない。
隠し通せるかなー!? 無理じゃないかなー!?
じゃあ使わなければ問題なし! とはならないもんね…無ければ無いで頑張るけれど、あるのに使わないってのも…
ステータス見る限り、簡単に死なないようにしてくれてるティナ様の気持ちが伝わるから、それはとても嬉しいことだし、こんな凄いものを色々授けてくれたティナ様に感謝の気持ちで一杯だけど。
何か素直にやったー! となれないこの複雑にもにょる気持ち。
リティシアの変顔をじっと見つめる聖獣様たち。
『リティシアどうだった?』
『どんな能力が授けられたのだ?』
二匹の嬉しそうな声に、複雑な気持ちになっていたリティシアは我に返る。
「見れたよ。うん、凄いのいろいろつけてくれてて…あと、スノウとユキが銀虎と銀狼って書いてるけど、二人とも白虎と白狼だよね?」
『そんなことまで書いてあるのか。ステータスって凄いな! 今は我とスノウは白狼と白虎で間違いないのだが、覚醒後に銀狼と銀虎になるのだ。』
『そぉそっ、覚醒したらそうなるんだよ、僕ら。』
ユキとスノウは互いを見遣り当然のように頷く。
「そうなんだ。」
何だかフワフワと頭がしちゃって、言いたい事があるのに言葉として纏まらなく、無難な相槌になってしまう。
「ユキとスノウ、詳しい事は起きたらまた話すね。何だか凄く疲れちゃって眠たい。」
『僕らは起きてからで構わないよ、大丈夫?』
スノウが心配そうに傍にきて、私の顎にスリスリしてくる。
その可愛い仕草に嬉しくなって、スノウの頭をなでなでした。
『起きたら全部教えて貰いたい。リティシアゆっくり休め』
ユキの言葉に「うん…」と返事をすると、リティシアはゆっくり体をベッドに横たえた。
二匹が慰めるように頬をぺろぺろしてくる。
「ふふっ、くすぐっ…た…い。」
リティシアは、そのままストンと眠りに落ちてしまった。




