第十八話 凄いな異世界の王族!
私のお父様は大天使ミカエル様の如き煌めく美貌をお持ちの美青年である。
きっと、女神様に器認定され記憶が戻る前の私では、父の美貌が美し過ぎるとか、大天使様だとか、思わなかったろう。
産まれた時から見ていて見慣れていれば、他の美しい男性というものに会う時、その物差しが自分の父なので、他の人が見惚れる容姿だったとしても、簡単には美しいと思わないかもしれないけれど。
でも実際、『他者よりも優れた容姿なんだな』程度の感想しか無いんだろうと思う。
私は、前世の人間が美しいとされる容姿をメディアという媒体を使って知っている。新聞、雑誌、テレビ、映画などなど―――
その多数の媒体でお見かけしたどの美しい男達より、この世界の我が父の方が他の追随を許さないほどに、ぶっちぎりで美しい人だと思う。
大天使ミカエルの兄は、全知全能の神ゼウス神のような美丈夫。
タイプは違えど、男性的な色気が増し増しされたちょっと筋肉に傾倒した父みたいな感じだから、顔の基本的なのは似ている兄弟である。
美しい男の兄弟は美しい。そしてその美しい遺伝子は仕事をするのだなと。
つまり、回りくどいけれど、何が言いたいかっていうと――――
「リティ、今日も可愛いね。」
「リティ、このお菓子を食べたらさ、僕達三人で庭に行かない?」
「…………」
「こらこら、双子たち。リティがまた固まっちゃうだろう? それに聞き捨てならないな。兄である僕を除け者にしてない? 行くなら四人だからね?」
距離感おかしい左右と正面に座っているキラキラしい天使様たち。
それも、父と叔父そっくりの。
「あれ? 固まっちゃった?」
左隣に座っている父に似た天使はリシャール王子ニコニコ笑いながら頬をツンツンしてきた。
「…っ!?」
思わずギョッと左隣を見る。
「あ、溶けた」
フワッと眩しい笑顔で金色の瞳を細めて嬉しそうに笑う天使。
「リティって面白い!」
右隣でケタケタとお腹を押さえて大爆笑する、これもまた天使。
楽しそうに笑っていらっしゃるこの右隣の天使は、セシル王子。
そして、この左右の天使は瓜二つの双子の天使様なのである。
もしこの世界にカメラなるものがあって、父の子供の頃の写真が出てきたなら、
間違いなくこの両隣の天使とそっくりだっただろう。
そのくらい、私の父に似ている。
(だから、多分どことなく私にも似てる…のかな? えっ、この天使様たちが?)
「はい、リティ、あーん」
正面の隣の天使より成長した天使が、私の口の前に焼き菓子を持って来た。
「あ、あーん…」
満面の笑顔につられて口を開けて、パクリと食べた。
正面の天使様は、双子の天使のお兄様で、リーンハルト王子である。
(あ、美味しい…良かったー今回は味はするみたいだ。)
多分ハーフバースデーの時会ったかもしれないけれど、あの時は何食べても味がしない気がしていたような記憶。
記憶が戻る前だったけど。
あの時の緊張とは種類が別物だからかもしれない。
あの時の異常な緊張は、お父様やお母様に恥をかかせないように優秀であれと必死だったからかな…
今のはこの正面と左右の天使たちのせいで妙な緊張感に包まれているけれど。
「リティ、美味しい?」
輝かんばかりの笑顔を浮かべた正面に座る天使は、叔父様である陛下似だ。
将来はゼウス様になるんだな。うんうん。
「はい、美味しいです。」
口の中の物を慌てて咀嚼して答えた。
「兄様ズルい! 僕もリティにあーんする!」
「シャールがするなら、僕も僕も! リティどれがいい?」
「あっ! お、お花が見たいなぁ…!」
食べさせ合戦が勃発しそうな会話に、庭への散歩を提案しようと口を開く。
「僕がリティを庭にエスコートしてくるから、お前たちは戻ってきた時のリティのお菓子を選んでおいて?」
正面の天使様がニコニコしながら立ち上がる。
「リティと庭に行く方がいい!」
「兄様のそういう所よくないと思います。」
双子の天使も立ち上がる。
「「「さぁ、リティ、お手をどうぞ。」」」
三つ並んだ手を前に、私は思う。
ここは、何てハーレムですか?




