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第71話 何でもやってやる


「おひさ」


4人の古代竜の一人、長い髪を2つのお団子にまとめたララミーナがいつもと変わりない無表情で片手を上げて挨拶をする。

ジャスがそれぞれに視線を向けると、ダリウスはひらひらと手を振ってきたが、ローラルダとルルエンティは特に反応を返すことはなかった。

いや、ルルエンティはわずかながらに険のある目つきになったような気がした。


「おひさじゃないだろ。ゲートを閉じるだけでなく記録石まで壊しやがって。シェロは?シェロはどうしたんだよ?」


椅子から立ち上がり一歩踏み出しかけたジャスをローラルダが手を上げて制した。

そしてフっと口元に笑みを浮かべるとジャスの足先から頭まで一瞥する。


「上位の魔人と戦い生き残るとはな。汝は本当にただの人間か?」


「残念ながらこの化物二人と違って一般人だよ。そんなことはどうでも良い、質問に答えーー」


「サーナ、すまぬが妾達にも何か出してはくれぬか?」


「!?」


スッと音もなくジャスの横を通り過ぎると4人はリオン達が座るテーブルとは別のテーブルに腰を下ろす。


「!?・・・は、はい!ただいま!」


ローラルダからの要望にサーナは声を裏返しながら返答する。

彼女の目には4人の動きが全く追えておらず、気が付けばいきなり真横のテーブルに座っていたように見えた。


そしてそれは、ジャスも同じだった。


「おいおい、ジャスよ。いくらなんでも油断しすぎだろ?オレ達が「その気」ならお前、今ので死んでたぜ?」


ダリウスがテーブルに片腕で頬杖をつきながら挑発的に笑う。

不敵に笑うダリウスがその美しい茶色の髪をかき上げた瞬間、その首元には青白く光る聖剣が突きつけられていた。


「それはキミもだよね?」


「このヤロォ・・・」


それこそいつの間に抜剣したのか、リオンが感情の籠もらない蒼い瞳でダリウスを見下ろしており、その声は普段の彼からは想像もつかないほどに冷たいものだった。


「貴方、舐めすぎ」


ボソリとした声とともに強烈な重力波がリオンに襲いかかる。

そして彼の周囲の床が抜ける直前にそれは突然に消え失せ、魔力の粒子が宙を漂った。


「誰に何をしようとしてるのよ?この寝ぼけトカゲ」


大きな瞳を釣り上げてチェルロッテがララミーナを睨む。

ララミーナはちらりとそちらの方を見ると面倒そうにため息を吐く。


「邪魔をしないでほしい、ぺったんこ」


「また!また言ったわね!!」


静かににらみ合うリオンとダリウス。

そしてその横で火花を散らすチェルロッテとララミーナ。

その二組を尻目に薄い金色の髪を靡かせてジャスに近付く女性。


「ルルエンティ」


「お久しぶりね」


薄く微笑み挨拶をする彼女の目は全く笑っていなかった。

そこに宿っているのは、怒り、憎しみ、そして何より失望。


「正直なことを言うと、私は貴方をかなり評価していたのよ。それが・・・どうしてこうなったの?」


こう、というのは間違いなくシェロのことだろう。

何故、シェロが追放されなければいけなくなったのか、ルルエンティはそう言っていた。


「すまない、でもーー」


「でも、何!?」


ルルエンティはジャスの胸ぐらを掴みあげると瞳にうっすらと涙をためながら言葉を被せる。

まっすぐに射抜いてくるその瞳から目を逸らさずにジャスは彼女の手に自分の手を重ねる。


「俺がなんとかする」


「貴方に何が出来るの?ただの人間の貴方に」


「正直策はない。でも何とかする。だから知恵を貸してくれ」


「な、何を言ってーー」


真っ直ぐに見つめてくるジャスにルルエンティが何かを言い返そうとしたその時、大きな赤い雷が落ちた。



「何をやってるんですかーー!!?」



殺伐とした空気が漂う店内にサーナの怒声が響き渡った。

全員がビクっと跳ねて揃って声のした方に目を向けると、そこにはお盆に紅茶を載せた看板娘が燃えるような瞳を吊り上げて全員を睨んでいた。


「シェロちゃんの事で話し合いに来たと思ったのに・・・。リオンさん、その剣は何ですか?」


「え、いやこれは聖剣ーー」


「そんなことは聞いてません!」


ゴ、ゴメンと慌てて剣を納めるリオン。

その姿を見て口の端を上げた二人をサーナは見逃さなかった。


「ララさんにダリウスさん。何を笑ってるんですか?」


ビクリと二人の肩が震える。


「申し訳ない。謝る。謝罪。ララが悪かった」


「ワ、ワリィ。というか嬢ちゃん何か凄味が増してないか」


等とあっという間に白旗を上げる二人。

その横で下を向いているチェルロッテから「ごめん」という声を聞くと、サーナは今度は一転して笑顔になりカウンターの方に視線を向ける。


「それで、お二人は何で手を握り合っているんですか?」


その言葉を受けてバっと二人して両手を背中に隠す。

特に責められるようなことはしていないはずだが、何故だか二人の背に冷たい汗が流れる。


「ねぇ、何でですか?」


「ふふ、サーナよ、その辺にしてやってはくれぬか」


更に一歩詰寄ろうとしたサーナの両肩にふわりと手が置かれた。

そして彼女の手からお盆を取り上げると店内の全員に声をかける。


「サーナが淹れてくれた茶じゃ。冷める前に頂くぞ」


そのありがたい申し出に異を唱える者はいなかった。







「先程の臣下達の無礼を許してほしい。こやつ達もシェロのことで気が立っておってな。すまぬ」


全員が席に着いたのを見てローラルダが頭を下げる。

慌てた三人が口を開くより前にジャスがそれに応えた。


「それくらいわかってるよ。そんなことよりシェロは元気なのか?」


問われたローラルダはフっと微笑を浮かべて頭を上げる。

そしておもむろに淹れられた紅茶を一口含み、ほぅ、と艶っぽく吐息を漏らす。


「元気なわけがなかろうに。ここ1ヶ月ずっと汝の心配ばかりじゃ」


「俺の?俺なんかより自分の心配しろよ・・・」


シェロらしい。

そう思いながらジャスは誰にともなく呟く。


「あの、シェロちゃんの追放を無しにする方法って何か無いんですか?」


不安そうに質問するサーナに先程のような凄味はなかった。

そのことに小さく安堵しながらルルエンティが首を振る。


「残念だけど。正直1ヶ月も先延ばし出来ている今の状況だけで御の字というところよ」


「そんな・・・」


絶望的な答えにサーナはカップに視線を落とす。

紅く映る自分の顔が滲んで見えた。


「それじゃやっぱり他の神の説得でしょ。なんとかして許してもらうとか?」


「もうした。ダメ。奴らは、頭が固い」


チェルロッテの提案に答えるララミーナはいつもの無表情ながら、他の神への怒りが滲み出していた。

虚空を睨みつけるララミーナを見て、チェルロッテも何も言えずに黙り込んでしまう。


「やっぱり説得だ」


ポツリと呟いたジャスに全員が視線を向ける。

そして若干の怒気を含ませながらルルエンティがそれを否定する。


「姉さんが言ったように説得ならもうイヤという程したわ。でも結果は変わらなかったの」


「俺はしていない」


「え?」


「俺はまだ何もしていない。だから諦めない」


「私達で駄目なのに、ただの人間である貴方が何を出来るというの?」


「何って色々だ。説得だったりお願いだったり買収だったり。最終手段として武力行使でも良い。俺が出来ることなら何でもやる」


大真面目な顔でとんでもないことを言ってのけるジャスに古代竜達は呆気にとられてしまう。

神を相手に武力行使とは、頭がおかしくなってしまったのではないか。


臣下の古代竜達が互いに顔を見合わせる中、ローラルダが堪らず吹き出してジャスを指差す。


「ふは!あははは!!汝は、本当に汝は面白い奴じゃの!くくくっ・・・武力行使か・・・それもありじゃな!」


ひとしきり笑った後、呼吸を整えるとローラルダは真剣な表情でジャスの瞳を覗き込んだ。


「シェロを助けるためなら何でもするという言葉に偽りはないか?」


「ない。何でもやってやる」


「それが汝の未来全て、魂まで捧げるようなことでもか?」


「それでもだ。シェロが助けてくれなかったら俺の未来なんてなかったしな」


「なるほどの」


ローラルダは満足したように大きく一つ頷くと椅子に深く腰掛け、カップに残っていた紅茶を一気に飲み干した。

そして不敵に笑みを浮かべると全員を見回して告げた。



「そうであれば1つだけ、策がある」


次回、最終話です。

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