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第34話 急いで向かいますか


ジャスは早速聞き込みを開始する。


先程店で聞いた話だとミミが居なくなったのは閉店後の夜中。

昼間にこの通りを歩いている人達とはそもそも層が違うだろう。

とはいえ、可能性は低いかもしれないが彼女らしき人物を目撃している者もいるかもしれない。


あまり大きな期待をせずに通りで聞き込みを行ったジャスであったが、やはり有益な情報は得られなかった。


次に彼女が本当に町の外に出ていってしまった可能性を考慮して、町の東西にそれぞれある入り口で門番に確認。

丁度良く見張りの交代時間であったため夜番の者に直接問いかけたがミミらしき少女が町を出た様子はないとのこと。


と、なるとまだ町の中にいるか、こっそりと出ていったかの二択。


「と言ってもミミちゃんがこっそり出ていく理由はないし。これは本当に事件に巻き込まれた可能性が高くなってきたなぁ」


勿論、友達の家に遊びに行っているなどの平和な理由で帰ってきていないのかもしれない。

出来ればそうであって欲しい。

しかし酒場で聞いた彼女の話や、ジャスが本人と話していて受けた印象からしてもそれはないと再度考える。


父親である店主と切り盛りしているあの店はミミにとってかなり大事な場所であることは間違いない。

それを喧嘩しているとはいえ、理由も告げずにサボる。

しかもかきいれ時である昼食時間帯に。

あくまで勘になってしまうが、そんなことをするような娘とは到底思えなかった。


これからの方針を考えながらジャスはトラネコ亭が見える人通りの少ない路地に入りおもむろに膝をつく。

そして懐から魔力を帯びた小さな石を取り出すとそれで地面にガリガリと魔法陣を描いていく。

ほんの2,3分程でジャスの周囲には細かく書き込まれた魔法陣が出来上がった。


「それじゃ、ちょっと本気出そうか」


そう呟くとジャスは両手の掌を地面について薄く魔力を町中に広げていく。

薄っすらと町の様子が頭の中に流れ込んできた。


王都には程遠いものの、ルクトウの町も中々の面積を誇っている。

一度に探索する範囲はジャスの魔力では町の四分の一がやっとといったところであった。

トラネコ亭は町の東門から少し行ったところにあるのでこれで町の東側はほぼ探索できるということになる。


(しかし、ミミちゃん自身がそんなに大きい力を持っていた訳じゃないから精度は低いだろうけど)


その後、数分程度探査魔法に集中するがミミらしき存在に行き当たることはなかった。

しかしそれにも関わらず、ジャスは更に両の手に込める魔力の量を増やし、頭の中で魔力を制御するため思考を加速させる。


(ミミちゃんが店を出ていったのは昨日の閉店直後ということだから半日ちょっと前か。追えるか・・・?)


ジャスの脳内にぼんやりと魔力の球体のようなものが無数に出現する。

これが今この時点での町の人たちの魔力を感知したもの。


そしてそこから絡まった糸をゆっくりとほどいていくように慎重に時間を遡っていく。

通りから聞こえてきていた喧騒が遠くなり消えていったような錯覚を覚えるほど探査魔法に没頭していく。


(これは・・・違う。これも違う。あーくそ、魔力が小さいから中々見つからん。こんなことならもっと魔力の波長をよく見ておくんだった)


ぶつぶつと悪態をつきながらも探査の手は緩めない。

20分程そうしていただろうか。

ついにジャスは昨日出会ったばかりの魔力の波長を捉えた。


(・・・見つけた!店を出た後は・・・あぁまずい、すぐに見失いそうだ。出た後は・・・大通りか。ん、なんだ?ミミちゃんの魔力が大きく歪んだ?で、その後向かった先は・・・)


それから少し経ってジャスは大きく息を吐き壁に背を預けて地面に座り込んだ。

多量の魔力を使った疲労と、単純に暑さから汗が止めどなく滴り落ちてきていたため、懐から魔力回復ポーションを取りだし、正直あまり美味しくない液体を一気に飲み干す。


喉が潤うと同時に魔力が少し回復したことを実感する。


(ミミちゃんの魔力が大きく歪んだのは恐らく何かの魔法をかけられたんだろう。眠らされたか操られたか、何にしても事件に巻き込まれたのは残念ながら間違いないな)


服についた汚れを軽く手で叩いて腰をあげる。

ミミの失踪が事件とわかった今、ゆっくりしていては手遅れになってしまうかもしれない。

それにさっきの規格外れの探査魔法で犯人グループが何か動きを見せる可能性もあった。


あれだけおおっぴらに広範囲を探査したのだから、勘の良い者やある程度魔法が使える者ならば勘付いただろう。


とはいえ、探査しなければミミの動向を掴むことが出来なかった事を考えると仕方がなかったとも言えるが。


「さて、急いで向かいますか。こういう仕事は久しぶりだ」


彼女のことは心配だが、それで焦って失敗しては元も子もない。

ピンチの時こそ平静に、いつも通り。

ふぅ、と軽く息をついて気持ちを落ち着かせるとジャスは町の中心部に向かった。



目指す先は「領主の館」



何でも屋ジャスにとって潜入するのに大して苦労するような案件ではない。

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