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第20話 今度からは気を付けるね


突然現れた不遜な態度の少女を見てジャスは思いっきり顔をしかめた。

そして慌てて顔を逸らしたが、残念ながらその表情は件の彼女にしっかりと見られていたようで、


「随分と失礼な態度を取るのね?」


眉間にシワを寄せ、わなわなと声を震わせながら入室する少女。

彼女の歩みに合わせて弾むように揺れるふわっとした桃色の髪からはエルフの特徴である長い耳が覗いていた。

そんな彼女にリオンがにこやかに話かける。


「久しぶりだねチェル!今はこっちの支部にいたんだね」


「あ、リオン、お、お久しぶり。そうなの。居たといってもさっき魔導師組合の本部から到着したばかりなんだけどね」


先程の不機嫌さは何処へやら、今度は顔を赤くしてしどろもどろに返答するチェルと呼ばれる少女。

もじもじとする少女を視界に入れつつサーナが「あの、店長?」とそっとジャスに近づいた。


「あの可愛らしい桃色の髪の方ってやっぱり・・・」


「そうだよ。勇者ご一行で有名な賢者チェルロッテその人だね」


思った通りの回答に「今度は賢者様・・・」と呆然と虚空に視線を漂わせる。


一般人のサーナにしてみれば世界を救った大英雄のリオンもチェルロッテもまさに雲の上の存在であった。

勇者のリオンが現れたことだけでもいっぱいっぱいだったのに、あろうことか、なんと一緒に旅行に行けるというまさかの奇跡。

そしてその感動の余韻に浸る間もなく、今度はこれまた英雄の一人である賢者チェルロッテの登場である。


賢者チェルロッテ

エルフ族の長老の娘にして世界で最も魔法の扱いに長けている人物であり、現在、魔導師組合の名誉顧問に籍を置いている。

先の魔族との争いでは、その卓越した魔法で人類側の勝利を大きく手繰り寄せる一因となった。

子供のような愛らしい見た目であるのに反して、無尽蔵の魔力を擁しており広範囲に高威力の大魔法を放つ様から<小さな大災害>と呼ばれ恐れられている。


ちなみに勇者リオンに惚れていることを隠しているが、本人達以外にはバレバレであったりする。


(現実感なさすぎ・・・あ、お茶出さないと)


ふらふらとおぼつかない足取りで店の奥へと消えていく看板娘を苦笑しながら見送り、勇者相手に頬を赤く染めている小さな賢者に声をかける。


「で、何の用だ?チェル嬢」


「気安く愛称で呼ばないでっていつも言ってるでしょ!」


リオンに向けていたそれとは180度違う、きつい表情で反応する。

サーナも喜怒哀楽が結構激しいが、「喜」と「楽」の割合が多いのに対し、チェルロッテのジャスに対する態度は「怒」の感情が飛び抜けて多い。

原因の半分以上はジャスの自業自得ではあるのだが。


「だってさ。リオンも気を付けろよ~賢者チェルロッテ様はご自身の愛称がお嫌いらしい」


こういうところである。

先ほどチェルロッテが来店したときのしかめっ面も、そうすると彼女が噛みついてくるとわかっててやっていたのであった。


「そうだったんだ。ごめんね、チェルロッテ。今度からは気を付けるね」


「え?ち、ちが!リオンちがうの!!今のは貴方は関係なくて!あいつが悪いの!あの性悪が!」


申し訳なさそうに愛称をやめて呼び掛けてくるリオンに、さっと血の気が引いた青い顔で誤解であることを必死に訴える。

この天然な青年の場合、冗談のやり取りであっても本当に信じる可能性があるからだ。

想い人の誤解を解こうとすがり付くチェルロッテの目に、片手で顔を覆って笑いを堪えている悪魔の姿が。

「怒」スイッチが再びカチリと入った瞬間であった。


「・・・殺すわ」


リオンからそっと離れると小さな火の玉を3つ出現させ、ゆらりと笑いをこらえる悪魔に向き直る賢者チェルロッテ。

3つの浮かぶ火の玉は先日サーナとの講義でジャスが出したものとは込められている魔力量が天地の差であり、火の玉の周囲は陽炎で空間が歪んでいるようにも見えた。


火の玉が視界に入ったジャスは慌てて椅子から立ち上がり<小さな大災害>に向かって抗議の声を上げる


「まてまてまて!それは洒落にならん!この辺一体が火の海になるぞ!」


今にも魔法を放ってきそうな形相の賢者を止めようとするジャスの耳に、紅茶を淹れて戻ってきたサーナの「な、何これ」という困惑した声が届いた。


それが引き金となった。


「どうせ貴方ならなんとかするんでしょ!もしくはなんとか出来なくて死になさい!」


ジャスが一瞬サーナに気をとられた隙に、見た目だけは小さな火球がチェルロッテから放たれた。

そしていつの間にかジャスを囲む形で周辺に被害が出ないように結界が張られており、それは同時に彼を逃さない檻の役目を果たしていた。


「お、おいちょっと!これは!本当にマズイって!!」


ジャスの叫び声と爆発音が店内に響き、閃光が何でも屋の窓から周囲へと溢れかえった。



結局、張られていた結界のお陰で爆発は極々狭い範囲の中だけで収まり、周囲の民家どころか何でも屋のテーブルの一部分がほんの少し焦げただけという信じられないほど小さい被害に抑えられた。


また、シーマ海岸の高級ホテルにはチェルロッテも入れた4人で行くことになり、ジャスが2往復半の転移を自ら提案することで彼女に不本意ながらも矛を納めてもらえることとなった。

お読み頂きありがとうございます。

賢者も登場です。

まだ数話続きます。

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