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第12話 ドン引きされます!


「で、これが店長の新しい短刀なんですねー。とっても綺麗ー」


ドワーフ王国のガルラガから帰ってきた翌日。

店のカウンターで新調されたジャスの2本の抜き身の短刀を見てサーナがうっとりする。

新しい短刀は刀身は銀色のはずなのだが、ほんの少し虹色に光っているように見えた。

いや、光っているというより虹色の膜がうっすら張っているといった方が近いか。


柄の部分は前まで使っていた短刀についた癖を参考に握りやすいように加工されており、手に吸い付くようにジャスの手に馴染んだ。

ちなみに、前のミスリルの短刀は結局返してもらうことなくトーリに処分してもらっていた。

というのも、既にあの短刀は壊れており、彼に預けた時点でもう刃はボロボロになっていた。


トーリには「ミスリルの刃がこんなにボロボロになるなんて。一体何を斬ろうとしたんですか」と驚かれた。

古代竜の女王です、とは言えず笑ってその場は誤魔化したが。

その会話中にルルエンティが複雑な感情がこもった視線でじっとりとジャスを見つめていたのは言うまでもない。


「本当に綺麗だなぁ。これ何で出来てるんですか?ミスリル、じゃないですよね?」


サーナが短刀の刃の横っ面を突っつきながら問う。

キィィンと澄んだ音が小さく響いた。

更に刃を見る瞳が潤むサーナにジャスは答える。


「あ~それね。なんかルルエンティの爪で出来てるってさ」


「へぇ、ルルさんの爪ですか。・・・え?」


予期せぬ返答に一瞬で顔色が青くなったサーナは先程まで触れていた短刀からゆっくりと手を離した。

そして震えながらジャスの方を向くと掠れる声で短刀を指差しながら辛うじて疑問を口にする。


「と、と、ということはドラゴンウェポン、ですか?あの超高級品の!しかも伝説とまで言われている古代竜の!」


「そう。とんでもないよね」


ドラゴンウェポンというのは、ドラゴンの爪や牙、あるいは鱗を使って作られる武器で、加工や材料の入手が困難と言うことでとんでもない高値で取引される。

安いものでも王都で屋敷を建てることが出来てしまう。

そしてここにあるのは古代竜のドラゴンウェポンである。


値など付けることが出来るはずもなかった。


「と、とんでも!そういう次元の話じゃないですよ!あぁどうしよう、私触っちゃった・・・怒られないかな」


短刀を手にした布で拭こうとするが、短刀にまた触れても良いものかとオロオロするサーナ。

怒られるも何も所有者はそこにいるジャスなので何の問題もないのだが。


「そんなに貴重なものでもないわよ。サーナさん」


裏口の扉が開き、短刀を前に挙動不審になるサーナを見て苦笑しながらルルエンティが入室してきた。


後ろには「来たよ!」とシェロと「お邪魔」とララミーナ。

サーナは先頭のルルエンティに掴みかかりそうな勢いで叫んだ。


「めっちゃくちゃ!もう!めちゃくちゃ貴重ですよ!国宝を越える勢いです!」


「大袈裟ね。サーナさんも何かいる?」


その言葉に更に顔を青くするサーナ。

ぶんぶんと首と両手を振りながら「結構です!」と力強くお断りした。

こんな超高級品を持っていたらいつどこで襲われるかわかったものではない。

そもそも剣術などかじったこともないサーナには宝の持ち腐れだった。


「何、これ?」


カウンターの上に置かれた短刀を手に取り首を傾げる双子の姉のララミーナ。

そして刀身をじーっと見つめると、ふぅんと何か納得したようにカウンターに戻す。


「ルルが、こそこそしてた原因、これね」


「別にこそこそはしていないわ。何かお礼をって思っただけ」


「最近、嬉しいもんね、女王様に甘えられて」


「な!?」


しー!しー!と赤面しながらララミーナに内緒にするようにジェスチャーを送るが、残念なことに既に何でも屋の二人には周知の事実になっていた。


というのもシェロが「ルルはお母さんに私より甘えてる時があるよ」と店で何度か言っていたからだ。

しかしルルエンティの威厳のためにも知らない振りをしようという話になっていたのだが見事に台無しになってしまった。


「でも、お姉ちゃん、少し感心しない」


ジャスとシェロに聞こえないようにカウンターにいる二人から離れて、妹に近づいて呟くララミーナ。


「え?何か問題あったかな?」


姉の言葉に不安そうな顔をするルルエンティ。

しばらく目を閉じていたララミーナは、ゆっくりと瞼を上げると妹の目を見つめて言った。


「自分の体の一部、プレゼント。正直、重い。人間の世界では、怖いはず」


「・・・え?重い?・・・怖い?」


「うん。むしろ、きもい」


「きも!!?」


バっとルルエンティは勢いよくカウンターに振り返ると様子を見ていたサーナの方に向く。

その迫力にひぃぃとサーナからか細い息が漏れた。

そして可哀想なことに、カウンターから引き離されて彼女はルルエンティとララミーナのところに引っ張られる。


「サーナさん。正直に答えてもらえる?人間の世界で爪を加工して異性に贈り物として送る女ってどう思うかしら?」


「そ、それは人間の話ですか?」


「そう、人間の話。正直に答えてね?」


優しく笑顔で質問されているのに、背筋が凍るような寒気を感じてサーナは正直に思ったことを何の配慮もなく口にしてしまった。


「しょ、正直に言うと無しです!ドン引きされます!」


サーナの言葉に雷が落ちたかのような衝撃を受けるルルエンティ。


彼女にはサーナの「人間ですよ?ドラゴンは別ですよ!」というフォローの声は既に聞こえていなかった。

恩人にきもいプレゼントをした重い女になってしまったという事実に生真面目なルルエンティの精神は崩壊しそうになっていた。


これを回避するには。


(返してもらわないと!別のものにしないと!)


そう決断するとカウンターで件の短刀を見て盛り上がっている義理の親子のところに向かって口を開く。


「あのジャス!その短刀の事なのだけど、本当に申し訳ないけーー」


「パパ!カッコいい!その武器よく似合うね!」


「・・・れど、返してーー」


「これルルがパパにくれたの?ありがとう!凄くカッコいいよ!」


「・・・ど、どういたしましてぇ」


あは、あはは、と虚ろに笑いながら親子から離れる。


そしてララミーナとサーナの方に振り返ったルルエンティの瞳にはいっぱいの涙が溜まっていた。

どんまい、とばかりに肩を叩く姉の胸でこっそりと泣く妹であった。



その後しばらくの間、ジャスが短刀を使う度にルルエンティが赤面していたのは女子3人組の中だけの内緒の話であった。


お読み頂きありがとうございます。

常識って人や育った場所で色々違いますよね。


素敵なレビューを頂いてしまいました!

小躍りしてしまう程嬉しく、執筆意欲が間欠泉の如く湧き上がりました!

ありがとうございます!

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