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第4話 黄金の噂

 

「『貴族決闘(きぞくけっとう)』それは、″貴族(ノーブル)″と″英雄(ヒーロー)″が一体(いっつい)となり、雌雄(しゆう)を競いあうバトルロイヤルなのです。そして、勝者には名誉と″どんな願いでも叶う奇跡″があたえられるのですよ」


 うむ、やはり何度聞いても怪しい話だ。


「にわかには信じられないな。そもそも、どんな原理でもって、願いを叶える、なんて言う戯れた妄想を語っているんだ?」

「願いの成就、それには、どうやら『黄金(おうごん)霊薬(れいやく)』を錬成して使うみたいなのですね」

「黄金の霊薬……ゲイシャ神話にでてくる世界をつくたっとかいう、伝説上の魔法の薬のことか。そんなものが本当にあるとでも?」


 やはり、益体のない眉唾であったか。

 そもそも、一体だれがそんな怪しい決闘に出るという。


「むう、正直いって、私だって黄金の霊薬があるなんて思ってないのですよ! ただ、仕方ないじゃないですか、この儀式を有力貴族相手に触れ込んでいるのは、あの″()()()()()()()″なのですから!」


 レイスは立ちあがり、バタバタと二階へあがっていくと、数十秒後にバタバタと客間にもどってきた。


「これです! 見るのですよ、クリフ!」

「ぉ、おう。どれどれ、手紙、だな」


 (ろう)で封されていたらしき開封済みの封筒から、手紙を取りだし目をとおす。


 これは……本物か?

 魔術による刻印が、手紙のしめくくりに記されおり、その色が音に聞く黄金の輝きをはなっている。


 黄金に煌る刻印。


 基本、刻印を刻む、それだけでも刻んだ術者が一流のわかる証拠となる。


 その色が黄金ということは、それは重大な意味だ。


 黄金の錬金術師とは、魔術協会が指定した、偉大な霊薬、魔導具、術式などを発明した栄光の錬金術師たちを選出した『八大錬金術師』に数えられる術師の名前だ。



 彼を端的に説明すると、()()()()()()()()()()とでも言えようか。


 なぜなら、彼は協会から重要指名手配されており、冒険者ギルドと魔術協会が血眼(ちまなこ)になってさがしているという噂の、″関わったら絶対にろくなことがない厄介者″のひとりだからだ。


 過去に一度、ライトフック家だって痛い目にあっている。

 依頼がきて、意気込んで腕利きを送りこんだはいいが、暗殺には失敗するし、暗殺者の首がライトフック家に届けられるし、さんざん馬鹿にされたものだ。


 はっきり言って、やつは暗殺者(俺たち)より血生臭い。


 勤勉な錬金術師だが、それゆえに狂っている。


 どれくらい狂ってるかと言うと、手のひらに収まる、わずかな砂金をつくる実験のために、街ひとつを蒸発させて、八大錬金術師の名誉を捨てるくらいだ。


 手紙に記された黄金の刻印を指でなぞる。


 どんな願いでも叶う奇跡を賞品に、貴族の名誉ある戦いを開くから参加してみないかーー手紙の内容を端的にまとめるとそんなところ。


 文字だけ読んだなら、すぐ鼻をかむためのちり紙にでもする妄言だが、刻印は無視できない。


 あの世界有数の狂気者の名前を、偽りにでも語ろうとする者はいない。


 となれば、これは本物の黄金の錬金術師から贈られてきた可能性が高い。


「黄金の錬金術師は、本当に奇跡をかなえる霊薬を開発しようとしてるのか? 霊薬の錬成のために必要な、選ばれた人間を招待して儀式をおこなうと」


「伝説の成就をみたいだけだから、黄金の霊薬そのものは戦いの勝者にくれるみたいなのです! どうですか、信憑性が出てきた感じがしませんか?」


 起死回生の機会に嬉しそうに笑うレイスが、トタトタと走りよってきて、俺の右手を握ってくる。


「お願いなのです、私と一緒に貴族決闘に参加して、アークスター家を救って欲しいのです! 報酬は、その、……そ、そう、アークスター家が見事に再興したらどんな富でもクリフにあたえて見せるのですよ!」


 富には興味がない。

 貴族決闘を信用したわけでもない。

 入れ食い、漁夫の利ありきの戦いは向いてもない。


 ただ、もし奇跡があるなら、賭けたい願いがある、会いたい存在がある、会わなければいけない奴がいる。


 それは普通の方法ーーまず普通がわからないがーーでは、およそ出会えない者だ。


 その者に万が一にでも会えるなら、この戦いに出る価値はある。


 それにーー。


「出てくれる、ですよね……?」

「ぅ」


 目をキラキラさせている、この少女の期待を裏切ると理不尽な罪悪感にさいなまれそうだ。


「……仕方ない。いいだろう、その貴族決闘とやら、アークスター家の英雄(ヒーロー)を、このクリフォードが承った」


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