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プロローグ
「ピッチャーに大事なのは何か分かるか?」
「スピード?」
「いや違うな」
「コントロールかな?」
「あるに越したことないが、無くても大丈夫だな」
「キレ?」
「違うな」
「変化球?」
「そういう技術的なことじゃない」
「根性」
「まぁそんな感覚に近い」
「じゃあ度胸!」
「んー方向性は近いんだけどなー」
「負けん気!」
「惜しいな!」
「勝ちたい気持ち!」
「ちょっと違う」
「んーじゃあ何なんだよ!」
「いいか、カツトシ。ピッチャーになによりも大事な事はな
『勝利する』というなんだ」
そう言っていた親父は俺が中2になった頃あっさり死んだ。
交通事故として処理されたのだが、タイミング的に言えば野球人生から追放された後なので自殺かもしれない。遺書もないからよくわからない。
遺書として残ったのは上の言葉だけだ。残念な父親ではあったが家族には優しく、俺にその言葉を伝えた時は満足していた。
そうして俺は父親に託された大事なことを胸に刻み野球人生を歩み始めた。