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【ショートショート】黒ネコの恩返し

作者: 海野 幸(うみの さち)

ショートショートです。3分くらいで気軽に読める短編を上げていきたいと思います。


【黒ネコの恩返し】

わたしの職場の駐車場には1匹の黒ネコが住んでいる。もちろん野良ネコだから名などない。駐車場に行くたびにこちらをじっと見るものだから、きっとお腹が空いているのだろうと思ってある日安物のペットフードを買ってきて、与えてみた。「ほ~れ、食いな」


黒ネコは警戒心が強いのか、なかなか食べようとしなかったので、仕方なくエサをおいたまま立ち去り、その後、気になって戻ってみたら、おいしそうにムシャムシャ食べていた。まったく素直じゃないヤツだ。


それからというもの、わたしを見かけるとニャーニャー言いながら寄ってくるようになった。エサがもらえると期待してるんだな。わたしも黒ネコに愛着が湧いてきたのか、スーパーでお徳用サイズのエサを買って来たりして、与えるようになった。マンション暮らしだから今までネコを飼ったことがないが、なるほど、ネコを飼う人たちの気持ちがなんとなく分かった気がする。黒ネコって不吉なイメージがあるから今まで敬遠してたけど、こうやってニャーニャーいいながらなついてくるネコを見ていると、黒ネコでもかわいく見えるもんだ。こうして私と黒ネコとの奇妙な友情関係がスタートした。


そんなある日、うっかりして車の鍵を落としてしまい、車の下に入り込んでしまった。やばい、手を伸ばしても届かないし、近くに棒のようなものがないかキョロキョロと見回したが、そんな都合のいいものはない。事務所に戻ってほうきでも取ってこようかと考えていたその時、車のしたからニャーニャー声が聞こえる。


「なんだお前、そんなとこにいたのか。」


ネコって暗くて狭いところを好むと聞いていたが本当なんだな。今じゃわたしの車を覚えたのか、車の下で待っていれば、そのうちわたしががやってくる事まで理解しているようだ。わたしはちょっと遊び心がわいて、「おーいネコや、そこの鍵を取ってきてくれ」と頼んでみた。もちろん持ってきてくれるなんてこれっぽちも思ってない。


ところが、なんと持ってきてくれたのだ!いや正確にいうと、ネコのしっぽに鍵のストラップがひっかかって、結果的に持ってきてくれる形になったのだが。それにしてもこんな偶然、まるでネコの恩返しじゃないか。わたしは思わず笑ってしまった。


「ニャーゴ、ニャーゴ」黒ネコは腹ペコなのだろうか、うるさいぐらいに鳴いてエサをねだってくる。やれやれ、食いしん坊なヤツだ。わたしは無事に車を開け、朝スーパーで飼ったお徳用サイズのペットフードを取り出すと、黒ネコに与えた。ありがとうな。今度高給なエサ買ってきてやるからな。黒ネコはそんなわたしの気持ちなどおかまいなく、一心不乱にエサにかじりついていた。


おしまい


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― 新着の感想 ―
[良い点] 軽妙で、テンポがよくて、 楽しく読めました。 [気になる点] お話として、 もっと起伏のある?ストーリーや、 綾があったらいいと思いました。 [一言] 僕の小説も感想くださいね。(^^♪
2019/10/30 13:56 退会済み
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