出来る事が無さ過ぎて立ち尽くす
「……………………助けてポリスメ~~ン……」
最初に出て来たのがこれだった。我ながら、良い芸人魂をしていると思う。というかそう思わないとやってられない。
えっ…と、え?俺にどうしろと?突然こんな所に現代日本人の俺を放り込んでどうしたいの?
……あぁだこうだと悩んでいても現状は変わらないし、よし。この辺を見て歩くか!
幸い服は着ていた為、俺はその場にTシャツの上に着ていたポロシャツをその場に置いて、小石をいくつか重石にすることで目印としてこの辺りを散策することにした。
時計なんて無いからどれだけ歩いたかわからなかったけど、取り敢えず服を置いた所を中心に全力疾走15秒ぐらいの所を1周グルッと歩いた。
俺の100メートル走の平均タイムがだいたい10秒ぐらいだから、服からだいたい120メールから140メートルぐらいかな? その間には何も無かった。
仕方がないから戻ることにする。
戻るとポロシャツの上に置いていた小石の内の1つが薄く光っていた。
いや、気のせいかもしれないけど、そう見えた小石が1つ有った。
……………………………
何も無いこの荒野で目の錯覚かもしれないけど有った唯一の変化……。
俺はその光っていたように思う小石を持って目線の高さに持ってきた。そして角度を変えてその小石を観察してみる。
すると俺の頭の中にこんな声が聞こえてきた。
『私と契約して、この世界の覇者になってください。報酬は世界の半分と永遠の命です』
……………よぉーっし!ちょっと待とうか!!色々思うところはある。色々聞きたいこともある。知りたいこともある。でも悲しいかな、俺はこれを言わずにはいられない。
「なにそれ、色々混ざり過ぎてて怖い。もう少し捻ってから出直してください!!」
『タロー=ヤマダをマスターとして認識しました。 以後タロー=ヤマダをダンジョンマスターとして支持します。
マスター、支持を!』
この何も無い荒野に唯一有った変化。人は何も無いと精神が耐えられず狂ってしまうらしいから、小石を持った事については何も異論は無い。
それでもこの言葉を叫ばずにはいられなかった。
「……助けてポリスメーーンッ!!」
ο────────ο
「……で?つまり俺はダンジョンマスターとかいうのになったの?」
『Exactly. その通りでございます』
「また…。えっと、ダンジョンコアさん。じゃああなたのその知識はなんですか?」
『私は新世界の神です』
「……その部分には触れるなってこと?」
『Exactly. その通りでございます』
「よしわかった。お前はもう、必要なこと以外喋るな」
取り敢えず拾った小石の話を纏めると、
小石はダンジョンコアと呼ばれる生物の心臓であること。
ダンジョンとは迷路のようになっている洞窟や迷宮なんかのことを指し示すこと。
ダンジョンコアはそのダンジョンの核となっている物。
ダンジョンにはダンジョンマスターというものが存在して、この小石さんの現在のダンジョンマスターは俺とのこと。
ダンジョンマスターはダンジョンコアと契約すると半永久的に生き続けることが出来ること。
ダンジョンマスターの死はダンジョンコアの破壊のみであること。
ダンジョンコアは最初は小石ほどの大きさしかないけど、リソースが増えればそのサイズを徐々に大きく出来ること。
リソースとはダンジョン内の生物や、ダンジョンが生成された地に流れる竜脈から得られる生命エネルギー(以降ライフエネルギーポイント=LP)のこと。
ダンジョンを大きくするには、このLPを使用したりダンジョン内で生物が死ぬことで集まるLPが溜まることで大きくなること。
LPはモンスターを出現させたり、宝物を設置したり、罠を仕掛けたり、他にもダンジョンマスターの知識次第で基本何でも出来る万能エネルギーであること。
ダンジョンコアにとってダンジョンが大きくなることは自分の力の強さの証明で、大きくなることはとても誇らしいことであり、ダンジョンマスターの力の強さでもあること。
この世界に住む全ての知性ある生物は、基本ダンジョンコアの破壊をしようとすること。
ダンジョンコアがダンジョンの領域から出るとダンジョンマスターとの契約は強制的に解除されること。
以上のことがわかった。
うん。つまりゲームでよく聞くダンジョンと同じで、LPは一種の振り分け可能なポイント。ダンジョンコアを大きくするには経験値のようなものを集める必要がある。そしてダンジョンを大きくすることはダンジョンコアさんの為であり、俺の為であるってことか。
ふむふむ、なるほど?
じゃあ俺は、強制的に半永久的に生き続けなくてはならなくなって、尚且つ知性ある存在全てから命を狙われるってことか。
「何勝手にダンジョンマスターなんかにしてくれちゃってるんですか!!?なんばしよっとね!!」
『……………………』
「なんか言いなよ!!」
『私は我が儘なマスターを持ってしまったようです』
「俺が必要なこと以外喋るなって言ったのが原因だったの?!
今の俺の質問はダンジョンコアさん的に不必要なことだったの!!?」
『Exactly. その通りでございます』
「……………わかった。もう決まっちゃったことは仕方ないよね。
それとダンジョンコアさん、やっぱり普通に喋って良いよ。じゃないと会話が成立しなくなることが多々有りそうだから。
俺と君は一心同体運命共同体になった訳だし、互いに遠慮せずにこれから頑張ろう」
『私は我が儘なマスターを持ってしまったようです。
やれやれだぜ』
「………………………」
ダンジョンコアさんのなんだか怖くなるような発言はこの際気にしないようにしておこう。遠慮せずにって言ったあとすぐに怖くなるようなことを言ったってことは、ダンジョンコアさんなりのOKのサインだったって思っておこう。
取り敢えず今は何をしなくちゃいけなくて、何が必要で、何が出来るのかを確認しないとね。
あと今のダンジョンがどのくらいの大きさかも確認しないとね。
「ダンジョンコアさん、今のダンジョンの大きさってどのくらいなの?」
『マスターと私が契約した地点を中心に、約半径130メートル以内が現在のダンジョン領域です。』
「130メートル……。だいたい俺が走った辺りまでかな?」
『Exactly. その通りでございます』
「そっか。 ……あ、そうだ。
ダンジョンコアさん、そのダンジョン領域って地上何メートルとか地下何メートルとか、そういう縦の範囲ってどのくらいなの?」
『基本契約した地点を中心に球状に領域は展開されているので、現在のダンジョン領域はどの方角から判断しても130メートルです』
「じゃあその範囲って移動とか出来るの?例えばダンジョンコアさんを持って移動するとダンジョン領域も一緒に移動するとか。」
『私のマスターは我が儘な上に頭まで悪いようです。
私とマスターとの契約強制解除があるのですから移動出来ないに決まってるではないですか。もう少し物を考えてから発言してください』
「ホント口悪いね君。まるで何処かの自称神みたいだ。
でも確かにそうだね。契約強制解除があるんだからそりゃ移動出来ないよね。
じゃあ契約した地点に依存するってことかな?」
『私が新世界の神です。
正確には私とマスターが契約した時の私の座標位置です』
「君は神様にでもなりたいの?どうせなるなら自称じゃなくて自他共に認める神になりなよ。
よしじゃあ、うん。情報は整理出来たけど、何をしようか」
ダンジョンコアさんのことやダンジョンのこととか今の俺のこととか、色々知れてこれから俺が何をすれば良いのか、漠然とだけどだいたいわかった。
差し当たっては現時点での目の前の問題に着目しないとね。
「何をしたら良いんだろ……」
現時点で出来る事が思い浮かばず、尚且つ何から手を付ければ良いかわからず俺はその場に立ち尽くした。




