また衝撃の事実に立ち尽くす
「さて、何しようか」
『やりたいようにやればよろしいのではないですか?』
「えー、何すれば良いのかわからないから何しようかって言ったんだけど?」
『ならその無い頭で必死に考えてください。何をしたいのかの具体的な方向性すらも決められていないのなら、私は提案しようにも提案出来ません。
それほどまでに、現時点で既に環境が整い過ぎてます』
「えーー!そうは言うけどさぁあー」
『くどいですよマスター。幼い子供ですか?』
「相変わらず言葉が酷いなー」
たぶん今の俺の表情は緩くなっていることだろう。
そう自分でわかるぐらい、ダンジョンコアさんの復活が嬉しい。
やっぱりなんだかんだ言いつつ、ダンジョンコアさんが居ない5年間は寂しかった。だから、思わず甘えるというか、ダンジョンコアさんを困らせたくなる。
といっても、本当にすることが無い。
この世界に俺の思う『自然』というものは創り出した。
その自然に『季節』というものも付けた。
あとはダンジョンらしいことをする、したい訳だけど、完全にまだまだダンジョン外の生物が生まれる様子は皆無。微生物なんかはもしかしたら生まれてるかもしれないけど、そんなのわかる筈がない。
さて、やることなくて困ったぞ。
俺はその事を、改めてダンジョンコアさんに話して、どうしようか、どうしたら良いかを聞いた。
『そういうことでしらマスター、予め最初から動物や魔物を分布していれば良いのではないですか?』
ん?
『マスターはこの世界の生物の発展と成長を見たいのですよね?』
「まぁ、うん。そう、なる、のかな?うん。この世界独自の生物って物を見てみたいかも」
『でもそれを見るには、あまりにも時間が掛かり過ぎる』
「そうそう」
『でしたらダンジョン内だけでも先に食物連鎖を用意すれば良いのではないですか?』
「んーー?!」
『……ですから、マスターが用意出来る物はマスターが予め用意しておき、ダンジョン化していない部分での成長を待ちながら生物を用意すればいくらかの時間の短縮に繋がるのではないですか。と言っているのです』
「なるほど?なるほどなるほど」
『…………マスターはわかってますか?私が言ったこと、理解出来ていますか?』
「わかったようなわからないような!」
『ハァー……。取り敢えず兎や鼠なんかの小動物を召喚してください』
「OK!」
言われた通り、小動物達を1度に召喚出来る限界数まで召喚した。
『ではこう命令してください。今から好きに生きろと。』
「?そこがわかんないんだけど…、まぁ良いや。
みんな、好きに生きて良いよ!」
俺がそう命令すると、動物達は戸惑った様子だったけど、次第にこの場から離れて行った。
ホント、これに何の意味が有るんだ?
『ではマスター、これを地点を変えてあと5ヶ所ほどで2回ほど行いましょう』
「えぇー、そんなに?」
『重要な事です。そしてそれが終わった1ヶ月後に、また同じ場所に、今度は牛や羊や鳥や山羊などの畜産系の動物を分布させます。その1ヶ月後には川魚や海魚などの魚類を分布させます』
「……………………ん?」
『そしてそれが終わった1年後に狼や虎、蛇やライオンといった肉食の動物や爬虫類を分布させます。そして更にその1年後に、今度は鷹や鷲やフクロウなどといった猛禽類を分布させます』
「………………んん?」
『そして最後に、猛禽類を分布した1年後に召喚した種類の数分だけ召喚した地に赴いてモンスターから取れる魔石を1ヶ月ほど掛けてその動物達に食べさせます。これはここで行っても良いですね。
そうして食物連鎖のピラミッドを擬似的に作り上げれば、進化の過程をいくらか飛ばすことが出来ませんか?』
ここまで噛み砕いて1から説明されてようやく納得がいった。
なるほど、そういう理由か。
確かにそれだと進化の過程をいくらか飛ばすことが出来そうで、より『自然』の完成が出来る。
んー、でもなぁ……。この世界のこの星独自の生物っていうものも居て欲しいんだよな……。
『マスターが何を考えているのかわかるので言いますが、それこそダンジョン領域にしていない場所での地道な進化を遂げてもらうのが良いんじゃないですか?動物達に入らせたくないなら、一時的にダンジョン領域との境界に大きな壁を作ったりして1億年ほど放置すれば、いずれ生まれるでしょう』
「1億ねッ」
『何を驚いているのですか?マスター、今この世界は、マスターの住んでいた地球で言うところのまだ生物も果てには陸地すらも、月になる前の隕石との衝突すらしていない頃の地球なのですよ?』
「…………………………は?」
あまりにも話が大きくなり過ぎた事に、俺は頭がついて行かずに脳が停止し立ち尽くすことになった。
急にまた、話が凄絶過ぎないか?!
ダンジョンコアさんの言う通り、この世界は現在、月すらも生まれる前の地球と同じ状態です。
違うのは星の大きさと最初から陸地だけは有ったことと、月が有ることぐらいです。
あとは原初の地球と変わりありません。