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ダンジョンマスターは現地で立ち尽くす  作者: 荒木空
世界(ダンジョン)創世記
12/19

新しいモンスター


「ダンジョンコアさん、そろそろ新しいモンスターを召喚しようかと思うんだけど、どんなモンスターが良いかな?」


『なんの脈略もなく唐突に何を仰ってるのですか、このマスターは。召喚したいのでしたら勝手に召喚為さればよろしいではありませんか』



 ヘラスフォダラーに名前を付けて、ドラゴンさんと糞ナルシスト君を配下に加えて5年。この世界に来て10年が経った。


 ドラゴンさんに乗ってこの世界を見て回ったあといつもの場所に戻った俺は、まずダンジョンコアさんの機嫌を取ることから始めた。


 何をどう言ったら機嫌を直してもらえるかわからなかったから、取り敢えず出来ることや言えることは全部言った。

 そうすると、『……マスターは何故謝って来るのですか?』と言われた。素直に『ダンジョンコアさんが機嫌悪い時って大抵俺のせいだよね?だから、何が原因で機嫌が悪いか知らないけど、取り敢えず俺が悪いなら謝っておこうと思って』と暴露したら、溜め息を吐かれた。それで呆れたような声で『もう、良いです。貴方はそういう人です』と言われて、何故かソコからいつものダンジョンコアさんに戻った。


 だいたいダンジョンコアが機嫌を直すのに1ヶ月掛かって、それからの4年と11ヶ月はひたすらヘラスフォダラーに手伝ってもらって、俺の戦闘スキルの能力を上げることに費やした。


 糞ナルシスト君の件もそうだけど、俺は今まで戦うことを避けてた。でも糞ナルシスト君に一方的にやられた事もそうだけど、それよりもヘラスフォダラーに物凄く頼りきりになってるのをあの一件で自覚した。

 だから、空いた時間は全部俺自身の強化に費やした。


 その結果がこれ。


【短剣術Lv.6】【投擲術Lv.6】【格闘術Lv.7】【不動Lv.4】

【無属性魔法Lv.4】【火属性魔法Lv.8】【水属性魔法Lv.3】

【風属性魔法Lv.3】【土属性魔法Lv.6】【光属性魔法Lv.5】

【闇属性魔法Lv.6】【雷属性魔法Lv.5】【氷属性魔法Lv.4】

【毒属性魔法Lv.5】【重力属性魔法Lv.3】【空間属性魔法Lv.4】

【モンスター作成Lv.3】【宝作成Lv.3】


 ここまでが5年前にドラゴンさんや糞ナルシスト君と出会うまでに持ってたスキルの成長。


 で、ここからがこの約5年で手に入れたスキル。


【剣術Lv.5】【収納術Lv.2】【移動速度上昇Lv.3】

【物理攻撃力上昇Lv.4】【物理防御力Lv.7】

【魔法攻撃力上昇Lv.5】【魔法防御力Lv.2】

【衝撃耐性Lv.6】【斬撃耐性Lv.7】【刺突耐性Lv.7】

【毒耐性Lv.7】【麻痺耐性Lv.7】【混乱耐性Lv.7】

【射撃物耐性Lv.7】【幻覚耐性Lv.7】【呪術耐性Lv.7】

【攻撃力無効耐性Lv.7】【防御力無効耐性Lv.7】

【精神攻撃耐性Lv.8】【盲目耐性Lv.6】【第六感Lv.5】

【魔力耐性Lv.6】【盾術Lv.6】【暗器術Lv.5】

【起死回生Lv.3】【不屈Lv.6】


 と、取り敢えずはこんな感じかな。


 …………耐性系や防御系や【盾術】【暗器術】【投擲術】が高いのは察して。

 ヘラスフォダラー、案外容赦なく、俺のスキル獲得の為ってありとあらゆる方法で攻撃して来たんだよ……。俺が頼んだのも有るけどさ。


 その容赦の無いしごきを生き残る為に、自然と身に付いたスキルなんだ……。

 そしてそんな攻撃の合間に俺も攻撃しないと駄目で、でも俺の攻撃は必ず避けられるか受け止められたんだよ。そしてその度にカウンター。だから、そんな状況で俺の攻撃をヘラスフォダラーに届かせるには不意打ちしかない訳で……。


 此処に糞ナルシスト君の【呪術】とかダンジョンコアさんの精神攻(口)撃が来るもんだから、本当に死に掛けた。

 この世界に来てから何度も死んでるけど、その中でも1番ギリギリだった5年間だった。



 そんな5年間を過ごして、改めて周りを見た俺は思った訳だ。


 俺のダンジョン、基本ゴブリン系か動物しか居ねぇって。


 【モンスター作成】スキルで確かにゴブリンと似た種族は作ることが出来るようになったし、動物から発展させる事だって可能だけど、俺の想像力が貧弱過ぎるのか、全然良いのが思い付かないんだよね。


 だから、新しいモンスターの開拓の為に、5年経った今、ダンジョンコアさんに提案してみた訳だ。



「いやさ、俺達のダンジョンって、ゴブリンか動物しか居ないじゃん?」


『そうですね』


「【モンスター作成】でゴブリンや動物達と似た奴等を作れるようにはなったけど、俺の想像力が貧弱なのか良いのが思い付かないんだよ」


『マスターが貧弱なのは今に始まったことではありませんね』


「……でな?5年前にドラゴンさんや今も俺に攻撃しようとしてヘラスフォダラーに絞められてる糞ナルシスト君が仲間になってからもその状況が変わってない訳じゃん?」


『なんでしょう、何故か今のマスターの話し方は怒りを覚えます』


「………で、だから、新しいモンスター開拓の為に、最初の頃みたいにダンジョンコアさんにモンスターを召喚してもらいたいってわけ」


『なるほど、話し方の腹立たしさはともかく、確かにマスターの仰ることには一理あります。


 それにマスターも、この10年で"一応"戦っていると言えるぐらいには強くなったと思います。ですのでそろそろ次のステップに移っても良いかもしれません』


「お、珍しくダンジョンコアさんに褒められた。


 それに次のステップ?それは何?」


『茶化さないでください。それに褒めてもいません。純然たる事実しか口にしておりません。


 次のステップ、つまり群れで行動するモンスターか、物理か魔法の効かないモンスターです』



 あ、なんか一気に嫌な予感がしてきた。

 【第六感】なんてスキルを身に付けたせいで、嫌な予感がする=嫌な事が起こるの方程式が確立されてしまう。



「え、えっと、つまり具体的には?」


『群れの場合ですと、狼系や凶暴な草食系のモンスターを召喚することに。物理や魔法が効かないモンスターの場合ですと、この場合スライムやゴースト系になります』



 どっちも死ぬコースじゃん!それにスライムって!

年末年始のバラエティー番組みたいになれってか!


 あとゴースト系はマジ無理なんで、早々にお引き取りください。というか来ないでください。チビってしまいます。



『マスターはこの5年で、ソコのゴブリンキングの助力も有り防御や耐性といった打たれ強さは並以上の物になりました。


 ですが対して攻撃系は正直並です。

 ですので、マスターの要望を叶えつつ、マスターの現時点での弱点を克服するために、私はスライムやゴースト系のモンスターにすることをオススメいたします』


「お断りします」



 即行で答えてやった。


 誰がぬるぬるのヌチョヌチョになったり、お化けと会ってやるか、バーーカ!!


 怖いのはマジでお断り!!



『…………やけに返事が早いです』

「お断りします」


『…………怖いのですか?ゴーストが』


「こ、こここ怖くねぇし!ただ理解出来ないだけだし!

 人間は理解出来ない物に関わりたくない生き物だから、俺も理解出来ない物に関わりたくないだけだしぃ!!」


『………………………』


《………………………》


「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!

 人間、お前、さてはただのビビりだ痛ェェエェェェェ!!


 痛い!痛い!痛い!痛い!痛いいいい!!


 痛いですヘラスフォダラーさん!また自分チョーシ乗りました!サーセン!!


 だ、だから、か、かか堪忍してくだ


 ギャァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!」


「へっ!お前もいい加減学習しろよ、この脳ミソ詰まってない糞ナルシスト!ヘラスフォダラーにやられとけバーカバーカ!」


「糞人間ーーーーーッ!!」


《マスターには敬意を払えゴミ》


『………………………』



 今まで(実は)近くで俺とダンジョンコアさんの会話を聞いていたヘラスフォダラーや糞ナルシスト君が話に入って……というか茶々を入れてきた。


 ホント学習しないよな、あの糞ナルシスト君。

 俺に悪口言ったり何か危害を加えようとする度にヘラスフォダラーに絞められるっていうのに。


 ホント馬鹿。



『……マスター、始祖の吸血鬼を馬鹿にしても、さっきの私の提案は撤回しません』

「嫌です。お断り申し上げます」


『………………………』



 だぁれがお化けと会うかってんだ!バーカバーカ!!



『…………………わかりました。そこまで嫌がるのでしたらゴーストの方はもう少し経ってからにします』


「いえ、一生来なくて良いです。すぐに昇天してください。どうぞ」


『……………ゴースト系は本当に嫌なようなので、今回はスライムにしてみてはどうでしょうか?


 スライムはダンジョンでは別名、掃除屋なんて呼ばれるほどダンジョンには欠かせないモンスターです。


 スライムさえ居れば、ダンジョン内で人間やモンスターが生理的行為を(おこな)った時に出る廃棄物や戦闘で流れた血液などを吸収して、ダンジョン内を綺麗に保つ役割を自然に担ってくれます。


 勿論モンスターですので、ダンジョン産や今後自然発生するスライム種はマスターに攻撃し、マスターを捕食しようとするでしょうが、それを除けばありとあらゆる面でスライムは優秀と言えるモンスターです』


「え、スライムって、最弱モンスターじゃないの?」


『…………ソコのゴブリンキングを除き、基本的に最弱のモンスターはゴブリン種ですよマスター。


 動物に似たモンスターは当然今後生まれるでしょうが、ゴブリン1匹と相対すればゴブリンが負けるぐらいの差は有ります』



 ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん。


 ヘラスフォダラーを除き、ゴブリン種が、最弱、ねぇ…?


 思う所は有る。有るけど、ふぅん?なるほど?

 ダンジョンコアさんの説明を聞く限り、スライムが良さそうかな?



『ちなみにゴースト種ですが』

「話さなくて良いです。結構です。お断り申し上げます。


 Do not speak!!」


『………………………』



 何故だろう。ダンジョンコアさんに目なんて無いのに、ダンジョンコアさんからの視線が痛い。



『……では、早速召喚させていただきます』



 俺の返事を待たずにいきなりですか。


 まぁでも、召喚するのは確定してたし、良いか。



「ちなみにダンジョンコアさん、スライムの倒し方や弱点って」

『え、ゴースト種にするのですか?わかりまし』

「黙るんでやめてくださいお願いします」


『……なら最初から必要なこと以外馬鹿な事を(のたま)わないでください。


 では改めて、召喚します』



 ダンジョンコアさんがそう言うと、初めてこの世界に来て、初めてゴブリンというファンタジーモンスターと出会った時のように、紫色の怪しい光を放つ魔方陣が現れて、ソコの真ん中が更に光る。



 久し振りの光景だ。いやぁ~、あの時は本当に何度も死んだね、うん。今やそれが10年も前の事だっていうんだから、時間の流れってのは早いもんだね。


 なんて……。


 んな訳あるか!俺の運が文字通りゴミ以下の微妙なゴミだったことが知れた嫌な思い出だわ!!

 あの頃は本当に辛かった。まず素手で現代日本の帰宅部高校生はヤンキーより容赦のないヤツ相手に勝てる訳がない。



 そんな、10年前の事を思い出している内に魔方陣の中で姿が形成された。


 形は球。見るからにプルプルしてる。でも頭の部分は尖ってない。

 シンプルな球。それがこの世界に於けるスライムの形らしい。



 ヘドロのようなドロドロじゃなくて本当に良かったと思う。


 スライムは……なんというか、無色透明だ。色が付いてないのは意外だ。水色か緑色を想像してたし。


 無色透明な球状の膜の中に、これまた球状の、意識して見ないとわからないほど透明が少し白く濁ったようなものがある。

 どう表現したら良いんだろう……。2リットルの水の中に牛乳を1滴垂らして、混ざった牛乳を外の膜を小さくしたような球状に圧縮した感じ?


 たぶんこれが核ってヤツだと思う。



 にしても、へぇー……。スライムって無色透明なんだ……。



『さぁマスター、スライムを召喚しましたよ』



 とかなんとか、初めて見るスライムの観察をしているとダンジョンコアさんに召喚を終えたことを伝えられる。


 まぁ、召喚が終わった事なんて、見ればわかるんだけどね。



『なんでしょうか?』


「なんてもありませーん」



 ダンジョンコアさん、察知能力高過ぎ!

 おぉ、怖っ。



 さて、召喚してもらったんだし、倒すか。


 と言っても、弱点丸見えでしょ?ソコに剣でも槍でも刺すかシャベルか柄杓かなんかで核を取り除けば良いんでしょ?

 転生日の前日にオタクな友達がスライムについて語ってくれたから、俺、お前の事はある程度知ってんだよ!


 まぁ、早速聞いた知識外の見た目してるけど。



 スライムって酸も持ってるとか聞いたから、俺は試しに土属性魔法のスキルを使って両手でも持てるほど長い柄杓を造って、それで目の前のスライムの核を取り除く事を試みた。


 柄杓をゆっくり近付け、スライムの核を狙う。

 スライムにある程度近付きあとはスライムの中に柄杓を突っ込もうする。



 突っ込もうと触れた途端、それは起こった。

 スライムは今まで、「お前絶対俺等の事を認識出来てないか動けないんだろ?」と言えるほど微動だにしていなかった。

 それなのに、柄杓がスライムに触れた瞬間、柄杓を伝ってスライムの体が伸びて、柄杓を這って俺の手まで来ようとした。



「うわっ!」



 咄嗟に手を離した。それが良かったんだと思う。


 (まばた)きが終わるその頃にはもう、柄杓はスライムの中に吸収され、徐々に溶かされていた。


 それはまるで、肉(土)が腐って行く様を見ているようでゾッとした。



 誰だよスライムが最弱モンスターとか言った奴!スライムほど凶悪なモンスターなんて居ないだろ!!

 なんだよあの反応速度!

 誰だよスライムが最弱モンスターとか言った奴!あんなの危険の塊のようなモンスターじゃねぇか!!



「えっと、ダンジョンコアさん?」


『教えませんよ』


「えーー、まだ何も言ってないじゃん」


『顔が五月蝿いのですよマスター』


「顔が五月蝿いって何?!そんな俺、顔だけで騒音撒き散らしたりしてないぞ!」


『そう思うのならそうなのでしょう。マスターの中では、という注意書が付きますが』


「出た!久し振りに聞いた!!


 え、ダンジョンコアさん?それ、ダンジョンコアさんのキャラ付けじゃなかったの?」


『やれやれ、これだからこのマスターは……。


 もう1度申し上げましょうか?


 そう思うのならそうなのでしょう。マスターの中ではですが』



 この言い回しって、流せる時は笑って流せるけど、流せない時あるよね?


 勿論それは俺にも有って、正直今のにはイラッと来ました。


 ホントダンジョンコアさんって、ダンジョンマスターである俺を怒らせたり貶したりするのが上手いよな……。




 …………………いや、それよりも、そんなダンジョンコアさんのどうでも良い事は今は関係無いんだよ。


 今大切なのはこの召喚されたスライムをどうするかだ。


 流石に10年もサバイバル擬きをしてたらスイッチのオンオフぐらい慣れる。勿論このオンオフってのは、戦闘する際の意識の切り換えのこと。


 オフだったスイッチをオンに変える。


 すると視界が拡がったかのようにスライムしか見えてなかった視野が拡がって、色々把握出来るようになった。



 広くなった視野から得られた情報から、色々現状を分析してみる。



 見た様子だとスライムは動く気配は今のところはない。

 ただ、実はハッキリと俺がわかってないだけで、ミリ単位で動いてる可能性もあるから油断は出来ない。そしてさっきやられた土属性魔法スキルで作った柄杓。アレが物体だから吸収したのか、魔法系のスキルから産み出された物だから吸収されたのか、ソレを考える。


 スライムって、魔法や魔力を糧にしてるとか、普通に何でも食べるとか、色々諸説有るから、この世界のスライムがどうかなんて現時点ではわからないしね。


 今度はゴミ置き場に行って、ソコから過去に【宝作成スキル】で出したゴミを持って来て、ソレをスライムへ向け投げてみる。


 ゴミを取りに行く際、見た目は全く動いてなかったから、まずスライムがその場から動くという考えは捨てる。


 で、持ってきたゴミを投げてみた結果、柄杓同様スライムに吸収された。


 どうやら物体とか魔力とか関係無いらしい。



 あれ、詰んだくね?



 いや、まだだ。


 次は魔法スキルを試してみよう。

 スライムの弱点として挙げられる魔法って確か、雷と氷だっけ?いや、火もあった?


 んー、うん。わからん!

 わからんけど、まぁスライムの見た目的に液体だろ。


 俺はそう結論付けて、氷属性魔法のスキルを使う。

 氷属性魔法のレベル1は「氷なら手に触れるとすぐに溶けてしまうような氷しか出せない。」ってダンジョンコアさんは言ってたけど、レベル4になった今は何でも液体なら凍らせる事が出来るし、この世界に来る前に思い描いてた"ファイヤーボール"みたいな魔法の氷バージョンぐらいは作れるようになった。


 これでスライムを凍らせて、固体になったところを俺の相棒で殴る!


 俺の相棒ってのは、アレ。成長する武器。

 アレ、今、刀身が物凄く厚くて俺1人ぐらいなら余裕で入るほど太い大剣になってんの。

ヘラスフォダラーにしごかれてる時に、何度も相棒でガードしてたから、必然的に防御にも使える武器になったんだろうな……。


 ただデカ過ぎるから、普段は指輪になってる。

 俺が望んだ時にだけ武器の姿になる、完全ファンタジー装備になった。


 まぁ、ヘラスフォダラーの攻撃から逃げたり防いだりなんて、身軽じゃないと無理だしね。



 って訳で、俺の相棒なら物理特化でもあるし、たぶん割れる。


 あとついでに、いずれ糞ナルシスト君をコイツで真っ二つにする。いっつもやられてるから、ヘラスフォダラーに任せるんじゃなくて俺がやり返したい。



 決意を新たに、氷属性魔法を行使する。

 今回は攻撃系の魔法じゃなくて、スライムを凍らせる方の使い方で。



 ある程度スライムに近付いて、魔法を使う。


 魔力が俺の手から抜けて行く感覚と共に、スライムへ向けて触れた物を凍らせる魔力が発せられる。


 それは近付いていたこともあり、すぐにスライムに掛かって、スライムが凍り始める。



 よし!やっぱり凍った!



 でも、そう思った途端、やっぱり俺はモブなのかな?いつの間にか魔力を放った方の肘から先が無くなってた。



「…………………………はい?」



 思わず思考が停止してしまう。

 当たり前だよね。だって、凍った!あとは相棒で殴って終わりだ!って思った瞬間、痛みも無く肘から先が無くなってたんだもんな。


 なんでこうなったのか周囲を確認してみると、すぐ隣には【無限の刃】の能力で出した刃物を持ったヘラスフォダラーが居て、その先には伸ばした体を元に戻すような動きをしているスライムの姿があった。


 しかも、恐らく俺の肘から先だと思われる骨だけになった人の腕。

 その腕も、瞬きしてる間に無くなった。



「………………はい?」



 状況を理解して、もう一度同じ言葉を呟く。


 え、今わかった情報を纏めると、俺は魔法を使って、その使った一瞬の内にスライムに腕を肘までやられて、糞ナルシスト君を絞めてたヘラスフォダラーにその肘から先を斬り落とされて、一命を取り留めた……ってこと?



「はい?」



 あのね、うん。キャパシティーオーバー。


 は?

 いやまじ、誰だよスライムが最弱のモンスターとか言った奴。スライムこそドラゴン以上の最強モンスターだろ。

 なんだよこの理不尽。人類はやはり、モンスターには勝てませんってか?




 【スキル:酸耐性Lv.1 を獲得しました】

 【スキル:斬撃耐性Lv.7 が 斬撃耐性Lv.8 にレベルアップしました】

 【スキル:麻痺耐性Lv.7 が 麻痺耐性Lv.8 にレベルアップしました】

 【スキル:幻覚耐性Lv.7 が 幻覚耐性Lv.8 にレベルアップしました】

 【スキル:防御力無効耐性Lv.7 が 防御力無効耐性Lv.8 にレベルアップしました】

 【スキル:物理防御力Lv.7 が 物理防御力Lv.8 にレベルアップしました】

 【スキル:魔法防御力Lv.2 が 魔法防御力Lv.4 にレベルアップしました】

 【スキル:混乱耐性Lv.7 が 混乱耐性Lv.8 にレベルアップしました】



 うっわ、とかなんとか考えてたら、いきなり耐性系防御系のスキルがレベルアップしたし、なんか新しいスキル獲得したし。


 そして何よりね、うん。



「痛いいいいいいいいいいいい!!!!」



 麻痺耐性や幻覚耐性のスキルがレベルアップするとね、そのとき大怪我してると麻痺とか幻覚での誤魔化しが出来なくなってね、痛みがモロに来るんだよ。

 しかもご丁寧に出血過多の大サービス。



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