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ダンジョンマスターは現地で立ち尽くす  作者: 荒木空
世界(ダンジョン)創世記
1/19

山田太郎は現地で立ち尽くす


 旧姓石泉太郎。現山田太郎。よくあからさまな偽名や、履歴書なんかの明記例なんかでよく用いられるこの名前が本名なのが俺だった。


 この名前になったのは中学生の頃。

 父親の会社が父親のミスで倒産して、それをきっかけに母親が父親の名前と印鑑のついた離婚届を役所に提出した。これにより俺は母親側に引き取られ、母親は父親との縁を切って無関係を装うためか旧姓を名乗るようになった。


 俺の名前もいつ父親との繋がりが有ると見られるかわからないからとかいう理由で、石泉という苗字から山田という苗字になった。


 俺からすれば、ハッキリ言ってお断りしたかった。

 まず俺の名前だ。俺の名前って太郎じゃん。日本の男の子に付けられる名前の上位ランクに組み込んでそうな名前じゃん。

そこに山田という苗字。誰が聞いても偽名だとか、もし本名なのだとすれば、確実に虐められるであろう典型的な名前である山田太郎になる。中学生という1番仲間意識や差別意識が芽生えやすい時期に俺の名前はこれになった。


 結果は言わなくてもわかるだろう。案の定虐められた。それはもう、自由度の高いR18GのゲームのNPCのように虐められた。


 母親に抗議して苗字を石泉にしたいと言っても聞き入れてもらえず、教師達にも笑われ、警察には相手にもされない。そんな中学校生活を送った俺。そんな俺は、高校生になってはっちゃけた。高校生デビューというヤツだ。

 元々俺は三枚目のような立ち位置だったから、それを全面に出して、モブキャラ扱いされないように頑張った。


 その甲斐あってか、高校ではクラスの中心になるようなポジションにつけた。楽しさでいえば、苗字が変わる前よりも楽しかったように思う。



 そんな楽しい楽しい高校生活を送っていたある日、悲しいことに俺は、ゲームのNPCを挽き殺すかのように大勢の人を撥ねている車に撥ねられ、17年と3ヶ月という短い人生に幕を閉じる事となった。




「筈なんだけど……」



え、ここどこですか?あの、アニメの心の世界!みたいな雰囲気のなにも無い、色も無い、重力も天と地も無い、俺の語彙力と言語能力では言い表せない場所に居るんですけど。



えっ、ホントこれ、いったいどんな状況なんですかわたくすぃ?



 「ちょっと君、君が居たところとは別の世界に行って、その世界の人柱になってちょ」



 俺が現状を理解しようと頑張っていると、そんな声が聞こえてきた。


 いきなり人柱とか、ちょっと何言ってるかわからないですね~。あ、事務所を通していただいて良いですか?これ番号です。



「何が番号だよ。君、ただの一般人でしょ?しかもモブキャラみたいな名前の。儂知ってるんだよ?」



 なんか心読まれてるし、なんか軽いし、あれかな?孫がはっちゃけて、その孫の話に合わせるために頑張ってるお爺ちゃんか何かですか?


 お爺ちゃん、無理はしない方が良いですよ?余計孫に嫌われますよそういうの。



「君、神に対してかなり失礼だね。不敬だね。それと儂、一人称が儂だけどまだまだぷりちーなナウいヤングだよ?失礼過ぎない?」



 ぷりちーとかナウいヤングとか、完全にもう化石レベルの死語じゃないですかヤダー!今は小学生がエッチなことをしちゃうような時代なんですよ?出直してくださーい。



「ホント失礼だね君。お願いが有ったんだけど、もう強行しちゃって良いよねこれ?」



お願い?



「そうそうお願い。」



 どんな?



「世界の為にボロボロの牛乳臭いぼろ雑巾のようになるまで、向かった世界の人柱になって!というかなれ。うん今決めた。はい決定!」



 なんだこの口悪い変な奴は!!?人柱を終えた後、アンタの口に入ってやろうか!!

 というかお願いってなんなの?お願いって言葉知ってる?お願いって、何かやってくださいって誰かに頼んで、それを引き受けてもらえるように頼む行為の事を言うんだよ?



「知ってるけど?神を馬鹿にするなんて、本当に君は失礼だねぇ…。何か特別な力を与えて送ろうと思ってたけどそれももう良いや。


必要最低限の力だけ与えてさっさと送るね」



 いや!だから!!なんで此処に俺が居るのだとか!此処はなんなのかとか!俺は今から何処に何をするために送られるのかとか!他にも色々説明があっても良いと思うんだけど!!



「うるさいな~。キャンキャンキャンキャン文句ばっかり言って……。これだから最近の若者は……」



 アンタやっぱり確信犯だろぉぉおおおお!!




 そこで俺の意識は1度途絶えた。



 そして次に目を覚ました時、俺の目の前には何も無い荒野が広がっているだけだった。



「えっ」



 俺は呆然とその場で立ち尽くすしかなかった。



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