病室
とても暑い昼下がりの箱の中で、
僕は少しだけ瞼を閉じた。
空は青濃く深い海のように冷たく、
日差しは空気を突き抜けて肌を削る。
風は並木を撫でるように消えて、
蝉の声が高く耳奥に刺さり続ける。
君は雨を避けるように木漏れ日に隠れ歩き、
僕は引き寄せられるように歩いてる。
並木の先で影に捕まった君は僕を待っている。
地面が君へと緩やかに傾斜してるみたい。
僕は少しだけ瞼を開けた。
最後にいい人生だったと思いたいなら、
今、死ぬしかないと思った。
この小さな箱の中の世界で。