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この世界で生きる意味を僕に教えてください  作者: ヤマト〆
世界の行方
7/11

世界の真相

この世界にもまた、奇妙な違和感があった。


それはもちろん、この世界に生きている人間達の文化や知識が、日本と酷似していた事だ。


これに対してムサシは最初、ミカの手による世界の改変だと思い込んでいた。


だが、それはあの銭湯での光景を見て違うと確信した。ミカはこの世界に何も手を付けてはいない。


ならば、何故こんなにも世界が似通っているのか。


次に考えたのが、この世界と日本は繋がっているのではないかという事だ。


それはユウキの言葉から閃いた考えで、誰かが日本からこの世界に迷い込み、そしてこの国を造りあげた。


けれど、その考えをぶち壊したのがあの神話だ。


恐らく、あの魔法使いはムサシだ。欲有る家を手にしていたあの時のムサシに違いなかった。


そしてこの国は、ムサシが創ったものをベースにして、この世界の人の手によって造られたのだ。


だが、ムサシはあの時全てを跡形も無く消した。感情のままに。


なのに何故、あの時のムサシを知る者がいるのだろう。


それに対する答えは簡単だった。


きっと、跡形も無く消えた訳では無かった。ただ、”場所が移動した”だけだ。


あの時ムサシは、一人になりたかった。だから、あの世界ごと突き放したのだ。


そして突き放された世界の人々は、何百年という時間を使ってこの国を__世界を造ったのだ。


これがこの世界の揺るがない真相だ。


「…………」


ムサシは気付けばあの神殿の前に立っていた。


石造りのレトロな神殿が、ぱっくりと口を開けて、ムサシが入ってくるのを待っているような気がした。


ムサシは蜜の匂いを嗅ぎつけたカブトムシのように、誘われようにその入口へと向かって行く。


だが、そんな簡単にはいかなかった。


「おいそこの君! 止まりなさい! そこは立ち入り禁止区域だ!」


髭を蓄え、甲冑を着た男が、ムサシの肩を強く掴む。


「入れば死刑は免れない! 分かってるのか!」


老兵は本気で怒っていた。


時々、この神殿に入って自殺する輩がいる。この少年もその一人だと老兵は思っていた。


「お前はまだ若いんだ! そんな事してどうする! 良いからそこを__」


「黙れ」


ムサシの声は濁り切っていた。


「馬鹿が! 俺はお前を助けて__」


「邪魔すんな!」


ムサシはぐるりと反転してぐっと拳を引っ込めて、その老兵の腹部目掛けて全力で拳を打ち込んだ。


だが、何も起こらなかった。ただ、乾いた音がしただけだ。


「こんな事をしても無駄だ。所詮、人間なんてそんなもんさ。一人じゃ何も出来ない」


「分かってるさそんな事」


ムサシは全く痛みのない拳を引っ込めると、逃げるように神殿の方角に駆け出した。


「あ、おい! 待て!」


老兵は呼び止めるも、ムサシは躊躇う事なく入り口に入る為の一本道を駆けていく。


「馬鹿が。命を粗末にしやがって」


老兵は心底嫌そうな顔をして、たすき掛けにしていた銃を手繰り寄せた。


「神殿を汚す前に冥土に送ってやる」


カチャンとセーフティーを外し、老兵は標準を定め、発砲した。


「この”ゆとり世代が”」


忌々しい一言と共に鉛玉は空を切り、やがてムサシの後頭部に直撃した。


だが、まるで鉄にでも当たったかのように、鉛玉は弾かれてしまった。


「__は?」


老兵は、今起きた光景を信じることが出来なかった。


だから彼は、もう一発撃った。だが、それはやはりムサシの体に当たると弾き返されてしまう。


「な、なんなんだよあいつ!」


老兵はムサシが見えなくなるまで何発も撃ち続けた。だが、被弾はしても血が出ることは無かった。


そしてムサシは神殿の奥へと姿を消した。


老兵はもう、ただただそれを唖然と見ているしか無かった。




***




ユウキはムサシを追い掛ける為に、占いの館を出て行こうとしていた所だった。


だが、マダムに呼び止められた。


「待ちなよムサシ。ゆっくりティータイムでもどうだい?」


マダムはこれまた趣味の悪いティーカップを啜りながら、ユウキにそんな提案をした。


その言葉に、ユウキは少しムッとした。こんな時に優雅にティータイムなんて出来るかと思ったからだ。


だが、ムサシはそんな言葉をおくびにも出さず、にっこりとマダムに笑いかけた。


「すいません。僕、ムサシを追いかけなくちゃいけなくて」


ユウキは軽く会釈をして、その場を立ち去ろうとしたが、


「もうすぐこの国は征服されるよ」


その一言でそうはいかなくなった。


「征服……? 誰にですか?」


「イリーガルの人間達さ。彼等はここを潰して乗っ取ろうとしているんだ」


それは何とも非現実的な話にユウキは思えた。


何せユウキは、イリーガルに人が居ることを、今ここで初めて知ったのだから。


「本気で言ってるんですか?」


「あぁ間違いない。私の水晶占いがそう言ったからね」


ユウキはここで迷いが生じた。


ムサシを追い掛けるかマダムの話を詳しく聞くか。難しい二択だった。


「お前が行った所で何も出来やしない。それに、もうどこに行ったか分からないだろ」


マダムの言葉は的を得ていた。もうこの占いの館を出た所でムサシを探すのは困難だろう。


ならば、ここはマダムの口車に乗っておくべきとユウキは考えた。


「分かりました。お望み通り優雅にティータイムでもしましょう」


ユウキはマダムと対面するように席に座った。


目の前には水晶が置かれており、妖しい光沢を放っている。


「潔い男は嫌いじゃないよ。さぁ飲みな」


マダムから奇抜なティーカップを渡され、ユウキはそれを手に取った。


色は薄茶で、良い香りがユウキの鼻孔を擽った。


そして一口飲むと、力んでいた体が少しずつほぐれて行く気がした。


「それはハーブティーと言ってね。リラックス効果があるんだよ」


「……なるほど。流石は占い師ですね」


これはきっと緊張しているお客に提供しているのだろうとユウキは思った。そうしなければ、良い結果は生まれて来ない筈だ。


「いやこれは私の趣味だ。客なんかに出したことなんて一度も無いよ」


「……………」


ユウキは上手く弄ばれた事が悔しかったが、顔に出すのも癪なので無表情を貫いた。


「何だい。小粋なジョークだよ。そう怒んなさんな」


「マダム。話を進めて下さい」


「フェッフェッフェ。悪い悪い。誠実な男を見るといじめたくなる習性があってね。困ったものだ」


マダムは愉快に笑ったが、ユウキは眉一つ動かなかった。


「イリーガルの人間がこの国を征服すると言いましたが、いつするんですか?」


「今日に決まってるだろ? 私の占いは今日より先の事なんて占えないよ」


「今日!? 今日のいつですか!?」


ユウキは予想外の切り返しに、思わず身を乗り出してマダムに聞いた。


「さぁね。そこまで正確に分かりゃしないよ。でも__場所くらいなら分かる」


「なら教えて下さい! そのイリーガルの人間はどこに現れるんですか!」


「神殿だよ。そこに奴等は出現する」


マダムはきっぱりとそう言い張った。


「現れて………その後は?」


「__滅ぶんだよ。この国は」


ユウキはその瞬間、全身の力を脱力して椅子にぺたりと座りこんだ。


「本当なんですか……?」


「あぁ。コレクトはイリーガルに負ける。それが今の占い結果さ」


「そしたら僕達はどうなりますか?」


「さぁね。大方奴隷になって、一生イリーガルの人間達に(かしず)く事になるかもね」


「そんな……」


ユウキは奥歯を噛みしめた。


これは占いで、まだ絶対にそうなると決まった訳じゃないが、何だかその結果を運命のように感じてしまった。


「運命の所為にするのは簡単さ」


ユウキは心の内を見透かすようなマダムの言葉を聞いて、下がっていた視線を上げた。


「ユウキ。これは占いだ。信じればそうなるし、信じなければまた違う未来が待っているかもしれない」


「……運命は変えられると?」


「この世に変えられないものなんてないさ。人生だって運命だって、そして占いだってね」


「まさかこんな所でお年寄りに説教を喰らうとは思いませんでした」


ユウキは苦笑した。


こんなに格好良くて青春の一ページのような言葉を、まさかこんな年寄りから聞かされるとは思いもしなかったからだ。


「フェッフェッフェ。年寄りの話は大切に聞いとくものだよ」


「そうですね。ならマダム。このコレクトが逆転する為に何をしなきゃならないのか教えて下さい」


「……ほぉ。どうして私が知ってると思ったのかな?」


「不幸の占いにはラッキーアイテムとか助言とかあるじゃないですか。だから、マダムにもそういうものがあるかと思いまして」


するとマダムは、まるで何かに満足したような顔でにこやかに笑った。


「良いだろう。教えてあげるよ。助言とラッキーアイテムをね」


するとマダムは、人差し指を一本立てて先ず一つと呟いた。


「ムサシをその戦いに引っ張り出すこと」


マダムは次にもう一本中指を立てて、二つ目と呟く。


「ムサシをイリーガルのボスである__ヤマダ=タロウに引き合わせること」


そして最後に薬指をもう一本立てて、最後はと呟いた。


「ユウキ。お前が自分を知ることだ」


そして最後にマダム、はまるで何かを企んでいるような意味深な表情をして、ユウキにこう語りかけた。


「ラッキーアイテムは、ゲーム機とゲームソフトだ」


「ゲーム機とゲームソフト……とヤマダ=タロウ?」


何だか素朴な名前の人物だと思った。そしてその人物は一体何者なのか。


後はゲーム機とソフトの方だが、ユウキはその存在自体は知っている。だが、この国に果たしてそれが存在するのかは分からなかった。


「ヤマダ=タロウはイリーガルの国のリーダーだよ」


「なるほど。覚えておきます。それで……そのイリーガルの人間達はいつやって来るんですか?」


「やって来る? 誰がそんな事言ったんだい?」


「え?」


ユウキはその言葉の意味が分からなかった。


「奴等はもう、何年も前からここに潜伏してるよ」


「え__」


「しかも、お前は奴等を良く知ってる」


「知ってる……?」


ユウキはマダムが一体誰を指して言ってるのか分からなかった。だが、変な寒気が襲ってくるのは確かだ。これは、嫌な事が起こる時の前兆だ。


「エモーションのメンバーだよ。彼等の殆どは、”あちら側”の人間さ」


その瞬間、ユウキの頭は真っ白になった。




***




気付けばムサシは扉の前で立ち尽くしていた。


神殿の入り口を抜け、また長い一本道を歩いた先に、この扉は存在していた。


まるで宝物庫の扉のように装飾が施され、眩い光を放つその扉を暫く眺めた後、ムサシは勢いよくその扉を開けた。


随分と開けられた事が無かったのか、扉はゴゴゴゴゴと軋む音を立てて、埃を撒き散らしながら開いていく。


そしてその先に映った光景は、ムサシが思い描いていたものと同じだった。


ベッドや机やテレビ__様々な見覚えのある家具が、まるで供物のようにそこに置かれていた。


きっとここは誰かが住む為に建設計された部屋ではなく、何かを奉る為の部屋だとムサシは感じた。


現に、この部屋の家具は一度も使われた形跡が無かった。ムサシはそれを物悲しく思った。


取り敢えずムサシは部屋の奥へと足を運んでいく。聞こえるのは床の軋む音くらいだ。


この神殿の部屋は、灰色の壁で全て覆われており、窓や扉といった類のものは存在していない。


ムサシはその時、この部屋で見慣れないものを発見した。


それはガラスケースと木箱だった。


木箱を護るように覆いかぶさるガラスケースには、埃一つ付いていなかった。


ムサシはそれに近づくにつれて確信した。


きっとあれはこの世界の根幹となるものだ。


そして__この世界を決定づける筈だ。


ムサシはゆっくりと近づき膝を折り、そっとガラスケースを取り除いた。


ガラスケースに何か特殊な細工は施されていないようで、そのケースは簡単に取れた。


次にムサシは木箱を手に取った。軽すぎるという程でも無いし、重過ぎるという程でもないが、思った以上に大きかった。


ムサシはゆっくりと木箱の蓋を開けた。


「これは__」


ムサシは中に入っていたものをじっくりと眺め、やがて手に取った。


それはゲーム機とソフトだった。


これはムサシが欲有る家で一番最初に出したものだ。それが今__ここにある。


こんな物が世界を決定づける物だったなんて、ムサシは想像も付かなかった。


古ぼけ、所々錆びてぼろぼろになったそれは、もうプレイする事は出来ないだろう。


それなのに、こんな立派な神殿にまるで拝まれるようにここに保管されている。


それがムサシにとって嬉しかった。嬉しくて嬉しくて堪らなかった。


気付けばムサシは涙を流していた。


木箱にぽたぽたと雫が落ち、染みていく。


「生きてた……生きてたんだよな」


ムサシは木箱をそっと抱き締めた。これはあの世界の人間が消えていなかった事の証明だ。


ムサシはとても感謝した。こんなガラクタを後生大事にしてくれた人の事を。


そしてムサシは徐に涙を拭いて立ち上がった。


その視線の先は、出口だった。


ムサシにとってここにはもう用はない。長く留まっていても無意味に泣き続けるだけだ。


それよりも今は自分が出来ることをしようと考えた。


先ずはユウキやフアンに謝らなければならない。酷い仕打ちをしてしまったのだから。


そしてその後、フアンに神話の話をしなくてはならない。そういう約束だった筈だ。


ムサシは木箱を脇で抱えたまま、神殿を出た。


そしてムサシは見たのだ。真っ赤に燃えた空と、何かが焼け落ちていく音。そして人々の叫びと狂乱。


まるでそれは、大空襲を彷彿させるような光景だった。


「一体何が起こってるんだ……?」


今起きている事態に頭がついていかないムサシは、ふらふらと壁まで歩き続ける。


その時、ムサシの視線に人影が映った。その人影は、壁の上でじっと阿鼻叫喚の国を眺めていた。


「うん?」


人の気配に気づいたのか、その人影はふとムサシの方を振り返った。


その人影は、真っ白な鉄仮面を装着していた。そして、これまた真っ白な丈長のコートを着ていた。


「お前……一体どこから出てきた?」


声から判断して、その人影は男性だと分かった。彼は怒気交じりの声色で、ムサシに話し掛けた。


だが、ムサシにはそんな問いかけなんて耳に入らなかった。


「これ……お前がやったのか?」


「……そうだ」


彼は静かに答えた。その声に、感情は入っていなかった。


「何で……」


ムサシはそこから声が出せなかった。余りにも、この状況に対して整理がつかなかったからだ。


「それより俺の質問に答えろ。お前はどこから来た? もしかして__神殿か?」


「……だったらなんだよ」


「お前を殺す。それが、創造主のためだ」


彼はコートに隠れていた純白の細身の剣を引き抜き、壁から飛び降りた。


「俺の名前はサンド。覚える必要はない」


サンドは剣を構えた。その構えはまるでフェンシングのようだった。


剣も刃があるのではなく、先端が鋭く尖っていて、これは刺突を武器としたレイピアだという事が分かった。


「名前なんてどうだっていいよ。それより何でこの国を潰そうとしてんのか、教えろよ」


「我が王のため。そして、創造主のためだ」


サンドは素早い動きで、ムサシの喉にレイピアを突き刺さんとした。


だが、ムサシはそれを首を横に逸らして避けた。


「王って誰だよ。創造主って誰だよ」


「お前には関係ない」


「関係あんだよ」


ムサシは震える手をグッと握り締め、サンドを睨んだ。沸々と煮えたぎるような怒りが、ムサシの内側で燃え盛っている。


「俺はこの国を守らなきゃいけねぇ。それが俺の生きる意味だ」


「ふん。ヒーローにでもなったつもりか。たかが人間如きで」


「お前だって人間じゃねのかよ?」


「俺は人間じゃない。寿命を持たない不老の魔女だ」


「魔女?」


「お前に話しても無意味だ。さっさとここで死ね」


サンドは冷ややかな言葉と共に、ムサシに駆け寄った。


そして目では追いつけない程の素早い動きで、ムサシにレイピアを突き刺した。


だが、それはただそう確信しただけに過ぎなかった。


「__居ない!?」


それは初めてサンドが取り乱した瞬間だった。


そしてその瞬間、下から突き上げるような衝撃が身を包み、気付けば彼は壁に背を預けるようにして横たわっていた。


「その力……お前こそ人間か?」


サンドは体を動かそうとするが、頭が揺れた衝撃で立ち上がる事が出来ない。


たった一発の拳でここまで酷い有様になるのは初めての経験だ。


「人間だよ。そして俺は、哀れな魔法使いだ」


「魔法使いだと!? その名前を軽々しく口にするな愚弄が! お前等人間如きが口にしていい言葉じゃ__」


「もう黙れよ」


ムサシはもう、このサンドの言葉を聞きたくなかった。聞く気も無かった。


ムサシは気付けばサンドを何度も殴り飛ばしていた。彼はもうとっくに気絶していた。


「くそ……くそがぁ!!」


ムサシにとって今、この国がどれほど大切なのかを、このサンドという男は知らないのだ。


それが、ムサシにとって悔しかった。やり切れなかった。


そして何度目か分からないくらい拳を振り上げた時、それは止められた。


「もうやめろ。ムサシ」


「__え?」


ムサシは今、拳を止められている事に驚いた訳では無かった。いつの間にか鉄の仮面が割れていた事に驚いた訳でも無かった。


その鉄仮面に隠れていた素顔を見て、ムサシは驚いたのだ。


「イカリ……?」


それは間違いなくイカリだった。見間違う筈が無かった。


「一体何が……?」


「説明するよ。ムサシ」


ゆっくりと後ろを振り返った先には、ユウキがいた。彼はこの事態に驚いている様子では無かった。


「知ってるのか?」


「あぁ。知ってるよ」


「なら何で止められなかった!! 知ってたらこの状況どうにか出来たんじゃねぇのかよ!!」


気付けばムサシはユウキに掴みかかっていた。頭に血が上り、彼は正常な判断が出来なくなっていた。


「く……離せ」


「何とか言えよ! どうなんだよ!」


ユウキはまるで万力のような力で締め上げてくるムサシに恐怖を感じていた。明らかにその力が人の許容を超えていたからだ。


「君はここで……あいつらと同じように……人を殺す気かい?」


「__!!」


その瞬間、ムサシは掴みかかった手を放して後ずさった。


「わ、わりぃ……ついカッとなった」


「良いさ。それよりどうしてこんな所に?」


「あ、いやちょっとな……それより説明してくれないか? この国で何が起きているのかを」


「あぁ」


ユウキはマダムと話した全てを、ムサシに話した。


ムサシはその間、神妙な面持ちでずっと黙って話を聞いていた。


「これで納得いったかい?」


全てを話し終えユウキはムサシにそう聞いた。


その瞬間、ムサシは意味深な笑みを浮かべた。


「__あぁ。納得したよ」


ムサシは徐に、サンド改めイカリの下へ足を運んだ。


「どうやらお前も俺の子供らしいな。悪かった」


膝を折り曲げ、語り掛けるようにそう言った。


「だが許せ。間違いを正すのが父ちゃんの役目だからな」


ムサシはそっと赤く腫れあがった頬を撫でると、そっと割れた仮面を元の位置に戻した。


「倒すべきはお前じゃない。お義父さんであるヤマダ=タロウだ」


ムサシはその人物を頭に思い浮かべた。彼はムサシが創りあげた人間の”一人目”だ。


そしてイリーガルのリーダーでもある。


「あいつがラスボスだ」


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