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この世界で生きる意味を僕に教えてください  作者: ヤマト〆
この物語の始まりへ
2/11

エピローグと

そこは草原だった。見渡せど見渡せど緑一色というある意味殺風景な所だった。


彼はてっきりもっと異世界チックな所に連れていかれると思っていたので少し幻滅した。


「あ、あったぁ」


ミカの気の抜けるような言葉でふと我に返り、前を見た。


すると何で気付かなかったのか不思議に思う程、それは整然と建っていた。


それは戸建の一軒家だった。何処にでもありそうな普通の家と言えば分かりやすいだろうか。


まあ一軒家の想像は任せるとしよう。所詮、唯の家だ。


ミカはその家の前に立っていた。


「ここは?」


尋ねると、またもや無い胸を張ってミカは答えた。


「ここはね、人間の欲望を集めた家だよ。名付けて"欲有る家"」


「シャレた名前だな」


名前を考えた奴は天才だろうか。そうに違いない。


「そんで、ここで何をするんだ?」


「まあまあ先ずは入ろうよ? ね?」


そう言ってミカは急かすようにドアを開けた。キィィィと軋む音が草原に響き渡る。


老朽化が進んでるんじゃないかと思う音だったが、中に入って驚いた。


六畳程のフローリングの床が丸裸だったからだ。家具も無ければ家電製品も無い。だが、その床はまるで最近張り替えたのかと疑うばかりの綺麗さだった。


「驚いたかな? 驚いたよね! でも驚くのはこれからなんだよ」


そう言ってとことこと部屋の中央に歩いて行ったミカの後ろを、彼はついていく。


キュッキュッとフローリング独特の床音が鳴り響く中、ミカは足を止めた。


そしてうーんと唸る。


暫く考えた後、突然ミカの顔が輝き始めた。


「決めた!ここがベッド、ここがソファーで、ここにテーブルと椅子!」


その瞬間、それぞれ指差した所にいきなり言われた通りの家具が出現した。


彼は呆気に取られた。


「て……手品か何かか?」


出て来た言葉はそんな低レベルなものだった。


それに対してミカは眉を顰めて切り返した。


「違うよ! これはこの家の特性なの!」


「特性?」


「そう。要は欲しいものは何でも言えば手に入る魔法の家。因みにあそこの扉を潜れば性欲、あそこの扉は食欲、あそこは睡眠欲がそれぞれ満たせるよ。まぁ、性欲なら私も頑張れば……」


とか何とか言いながら、ミカは自分の胸を揉んだ。いや、触ったみたいなものだった。


彼はそんな様子に溜め息を吐いた。


「胸無し幼女の神様とはしないな」


「ずがぴしゃん!」


「自分で効果音流すな」


ミカは、うぅと落胆していたが、そんな事よりこの家はとても素晴らしいと彼は思った。


この家でゴロゴロして欲を満たして生活する事は、彼にとって至福の時になるに違いない。


そう考えただけで胸が高鳴った。


「なぁ、いつまでとか制約無いんだよな?」


「無いよ。好きなだけいていいんだよ」


それを聞いて彼は顔を綻ばせて喜んだ。生きてて良かったと思うばかりだ。死に巡りしていた自分に感謝である。


そんな彼を見て、ミカはくすりと笑った。


「じゃあ後は楽しんでね。ミカはお家に帰るよ」


「おう! ありがとなミカ!」


こうしてミカは手を振りながら家を出て行った。


そして彼は一人になった。


「おっしゃー!」


彼はまずテレビを出現させて、ひたすらアニメやドラマ等を見た。


腹が減ったら食欲の扉に入って欲を満たした。言えば何でも直ぐに出てくる食卓の飯は全て格別に美味かった。


アニメやドラマに飽きたらゲームをやった。新しいゲーム機やカセットを出現させてクリアしたら直ぐに次のカセットに取り掛かった。


彼自身、ゲームはシナリオをクリアしたらもうそのゲームは終わりだった。執拗に何かを集めたりとか達成したりするのは自分の主義には合わない。


そして人間の三大欲求の一つでもある性欲は、性欲の扉で済ました。


そこは、艶かしい光を使った部屋で、入って横のタッチパネルから好きな女性を選び、タッチする事でベッドにその女性が出現する。


その女性達は皆、上手かった。彼は足繁く通って性欲を思う存分満たした。


睡眠がしたい時は、睡眠欲の扉に入った。一応リビングでも寝られるが、それを遥かに上回る程、上質な眠りがここでは出来る。


ここは正に天国だった。


彼は時の流れを忘れてこの家に夢中になった。




***




ある時ふと思った。


この生活をいつまで続けるのか。死ぬまでやり続けるのだろうか。


彼はそれは怖いと思った。


確かにゲームは面白いし、よく眠れるし、性欲も満たせる。けれど、何かが決定的に足りない。


「……友達」


彼には分かっていた。ここで過ごせば一生一人きりだという事を。


最初はそれでも良いと思ったが、時が経つにつれて寂しく思った。


だから彼は友達を出現させた。


思い描いたのは、漫画でお馴染みの幼馴染の親友だった。


昔ながらの付き合いで、友達作りが上手くイケメン。ノリも良く、周りをなんだかんだと気にするタイプ。


これは結果的に言うと大失敗だった。


理由としては、あちらが親友だと思っても彼としては全くそう思えないからだ。


「お前は昔からそうだよな」と言われた時は思わず吐きそうになった。その友達は直ぐに消した。


次に作ったのは、互いに面識が無い同士__いわば初対面だ。


これは一応成功と言えた。


よそよそしいが、最初から友達面されるよりかは遥かに良い。


名前は山田 太郎にした。


太郎とはゲームをしたり、美味い物を食べたり、3Pとかいうのをやったりもした。


だが、何故かすぐに飽きてしまった。


理由は何となく分かった。人が増えてもやる事が変わらないからだ。


だから彼はまた人を増やした。女も作った。


そして家を大豪邸に変貌させ、間取りを広くした。これで少しはマシになるだろう。そう思っていた。


だが、彼の想像とは違う形でこの造られた人間__略して人造人間は、思い思い行動し始めた。


先ず、男女の人造人間がどんどんカップルになっていった。


彼はこればかりは仕方ないと割り切り、欲有る家の横に一軒家を建て、カップルを住まわせた。


暫くすると子供が生まれたらしく、彼はとても驚いた。まさか人造人間から生命が誕生するとは思っていなかった。


彼は驚愕同様嬉しさも感じた。何だか孫が生まれた気分だった。


だから彼はもっと人口を増やした。


そして、どんどん増えていく男女は次々カップルになり、その度に家を建てた。


因みに家を建てたと言っても、ただ欲有る家の中で一軒家を建てたいと願えば直ぐに建つので建てたというよりかは創ったに近い。


なので彼は色んな家を建てる事にした。マンションやアパート等も創りあげた。


マンションやアパートも全て新築ではなくわざと老朽化させたり、高層にさせたりと一工夫入れた。


すると気付けば草原しかなかった家の周りが閑静な住宅街になっていた。


彼は所々に公園やコンビニ、スーパー等の店を創り、日本と同じ金の制度を創り、警察署や役所なんかも創った。


彼は面白くなりどんどん世界を創りあげていった。


世界創りに邁進していた彼はふと気づく。欲有る家に誰も人が住んでいないことに。


彼は寂しくなり、妻を創ろうと考え、自分の事が好きな女性を創り上げた。


そして「結婚してくれ」と言った。


だが結果はノーだった。何百人何千人と創っても、誰一人として首を縦に振る人間は居なかった。


彼が理由を尋ねると、決まって彼女達はこう言った。


「産みの親と結婚することは出来ないし、何より貴方はこの世界の創造主。私達では荷が重すぎます」


彼は寂しさと悲しさで昼夜を問わず泣いた。


そして彼はこの世界に対して猛烈に嫉妬し、あろうことか全ての人間を消した。


建物、人造人間そしてそこから産まれた子供達全てを跡形も無く消し去った。


彼は一日中ベッドでボーっとしていた。来る日も来る日も、彼はボーっとしていた。


気付けば彼の年齢は60を超えていた。


ますますボーっとする日々が増え、盆栽や骨董品集めが好きになった。


骨董品集めに関しては、一日に出現させる量を決めてゆっくり集めた。


そして80を超えた辺りから時の流れが以上に早くなり、体も動かなくなっていった。


だが彼はそれを良しとし、流れに身を任せることにした。


100を超えた時、重い病気になった。


今までも病気になったが、何でも治せる薬を創ってすぐに治していた。


彼はそれを飲むのを止めて、そのまま死ぬことにした。


穏やかに日々は流れていった。


あくる日、病状が一気に悪化し、彼の意識は朦朧とした。


こんな時、誰かが傍に居てくれたら良かったのにと、彼は泣きそうになった。


「あぁこのまま死ぬな」と悟った時、ベットの傍にミカがいた。


「久しぶりだなぁミカ」


しわがれた声で、彼がそう言うと、ミカは驚いた顔をした。


「え? 別れてから80年くらいしか経ってないよ?」


それを聞いて、神は時間の流れに鈍感なのだと分かった。


「ねぇどうだった? 楽しかった?」


ミカは顔をわくわくさせながらそう聞いた。彼は言葉を詰まらせた。


この長い年月、本当に楽しかったのだろうか。


楽しかった事はあった。けれど、それは本当に心の底から楽しんでいたのだろうか。


「分かんねぇなぁ」


彼はミカから天井に視線を移した。見慣れた白の天井が視界一杯に広がっている。


「じゃあ貴方の願いは叶ったの?」


「……あぁ叶った。でもなぁ、俺が求めていたものじゃなかったなぁ」


「貴方の求めていたものは何だったの?」


「俺はきっと自由そのものが欲しかったんじゃないだよ。自由を求める自由が欲しかったんだ」


これが彼の出した結論だった。彼は薄く笑った。


手に入れた自由は、きっとそこで価値を失ってしまう。


手に入らない自由こそが、彼の求めていたものだった。


「じゃあ貴方は欲しいものを間違えちゃったんだね」


ミカの口調は軽く、そして優しかった。


「そうだなぁ。俺は自分が何を求めていたのか分からない愚かな人間だったよ。だからさっさと死んで楽になりたいねぇ」


「それでいいの?」


「良いも何も、もうじき俺は死ぬんだ。例え死ななくても、もう俺にすることはないよ」


やりたい事はやった。ただそれだけで十分だ。


この世の中にはやりたい事もやれずに死んでしまった人が大勢いる事だろう。


それを考えれば気は楽だった。


「嬉しい事はあった?」


「あぁ」


「悲しい事もあった?」


「あぁ」


「面白かった?」


「……あぁ」


「貴方の人生は幸せだった?」


「____」


そんな唐突な一言で、彼の頬に一筋涙が伝った。そしてとめどなく溢れてくる。


「どうしたの?」


「いや、これは別に……」


彼は手の甲で涙を拭った。だが、涙は止まらない。


「俺は……幸せになりたかった」


「うん。知ってる」


「もっと、生きたかった」


「うん。それも知ってる」


「もっともっと、世界を楽しみたかった」


「うん」


「死にたくない……死ぬのが怖い」


「……うん」


「なぁ、俺を殺してくれないか?」


「どうして? 貴方はもうじき死ぬんでしょう?」


「殺されて死にたいんだ。これは償いなんだよ。この世界の人を殺してしまった罰を、俺に与えてほしいんだ」


この世界に来て、これが一番の後悔だった。


悔しくて、情けなくて、寂しくて、つまらなくて、色んな感情が混ざって、気付いた時には世界は消えていた。


創った人、人から生まれた子供も全て、彼の一時の感情で殺したのだ。


「貴方は後悔しているの?」


「あぁ。死んでも死にきれない位後悔してるよ」


「死んでも死にきれない、か。何だか不思議な言葉だよね」


「どういう意味だ?」


「だって死んだら何もかも忘れられるのに、人は死んでも後悔しようとしてるんだから」


「はは。ミカの言葉の方が何だか不思議だよ」


その切り返しが上手く伝わらなかったのか、ミカは首を傾げた。


きっとこの言葉の意味は、神様には分からないのだろう。


「まぁ、人間ってのは不思議な生き物なのさ」


「うん。それは知ってるよ。人間って不思議。だって__」


ミカはそこでふと我に返ったのか、言葉を止めて彼を見た。口元が薄く笑っている。


「ねぇ、貴方はまだ死にたくないんでしょ?」


「……まぁ」


それは否定しない。


「ならミカは貴方の死を否定します。そして世界を救ってください」


「……は?」


彼はよぼよぼの口を開けてミカを見た。


「んとね、そんなよぼよぼじゃ戦えないだろうから、体はここに来た時に戻すね」


「いやだからちょっと待てくれい。話が見えないんだがな?」


ミカに手を伸ばすというささやかな抵抗空しく、ミカは止まらなかった。


「あそれ! ちちんぷいぷいの開けゴマ!」


「センスねぇぇぇのぉぉぉぉ!!」


ポンというミカの初登場シーンと同じ間の抜けた音が響いた後、彼の見た目は元通りになっていた。


「これでよし! せっかくだから名前も決めちゃおっか! んーと、貴方は971634人目だから……」


「え、さっきの俺死んだ扱いなの!?」


「じゃあ貴女の名前はクナイ ムサシに決定!」


ぱちぱちと拍手を送るミカに彼__ムサシは喚く。


「安易だなおい! つーか先ずは俺の話を聞けよ!」


地団太を踏むが、ミカは意に介さない。


「確かに俺は死にたくない。でも俺は世界を手に掛けた一種の殺人犯だ。だから生きる資格なんてない」


「人間は平等に生きる権利があるの、ミカは知ってるよ?」


「確かにそういう法律はある。でもそれは犯罪者には適用されない」


するとミカは難しそうな顔をした。


「んームサシは死にたいの? それとも生きたいの? 死にたいならミカが一瞬で楽にしてあげるよ?」


「そ、それは……」


そういう切り返しをされるとムサシは返答に困ってしまう。


生きるか死ぬかの二者択一なら、人は間違いなく生きる事を選ぶし、ムサシもその一人だ。


だが、生きたいか生きたくないかと尋ねられたら、ムサシは生きたくないを選択する。


ここで難しいのが、生きたくないからと言って、なら死にたいのかと言われると話が別だ。死にたい訳ではないが生きたい訳ではない。


こういうどっち付かずなのも、人間の一つの特性と言ってもいいかもしれない。


「人間って本当に不思議だね。どうして生きたいのにはっきりそう言わないの?」


「それは人間の個性みたいなものかな。人間ってヘンテコなんだよ」


「ヘンテコだから生きたくないの?」


「いや、俺には生きる資格がないんだ」


「それは決めつけっていうんじゃないの? この世界の人間を消したからって生きる資格が無くなるなんて聞いたことないよ?」


「そうだけどさ。ミカにはきっと人間の気持ちは分からないよ」


ムサシは顔を伏せた。何だかミカに合せる顔が無い。ここまでして貰って、恩返しの一つもしないまま生きる意味を失くしているのだから。


「ならムサシはこの世界の人達の気持ち分かる?」


「……え?」


「この世界の人達はムサシによって創られて感情というものを授かった。その人達の気持ち分かる?」


「多分、怒ってるんじゃないのか? いきなり消されて……」


「ううん。彼等は皆感謝してるんだよ。ムサシに」


「そんな筈はない。だって俺はあいつらを殺したんだ。そんな訳がない」


「確かにムサシは彼等を消した。でもね、創ったのもムサシで、楽しいとか嬉しいとか悲しいとかそういう気持ちを沢山味わわせたのもムサシなの。だからね、彼等は怒ってないよ。寧ろありがとうって気持ちで一杯なの。幸せで溢れてるの」


ミカは何だか彼らを知ってるかのような口振りだった。


「消したのは唯の結果論。大事なのは過程なんだよムサシ」


「はは。そりゃまた人間の世界とは随分違うな」


あの世界は結果が全て。ムサシはそう教えられた。


社会に出れば誰も助けてくれない。それは父親の口癖だ。


ムサシにとってその言葉は酷くつまらなくて、虚しさを感じさせる言葉だ。


助けてほしい訳ではない。ただ、手を取り合って社会と戦ったって良いとムサシは思う。


そんな決めつけはこじつけとなり、社会がただただ冷たくなるだけだ。


これは幻想的かもしれないが、現実的過ぎるよりかは良い。


「だから今度は貴方の番。貴方が本当に嬉しいとか楽しいとか悲しいとかを感じるの。そしてそれがミカの役目でもある」


「なぁ、どうしてそこまでしてくれるんだ?」


ムサシにとってここまでミカが自分を気遣ってくれるのは不思議だった。


最初、ミカはこれを贖罪だと言った。だが、それだけでこうも尽くしてくれるのだろうか。


「最初に言ったけど、これはミカの贖罪でもあるんだよ。でももう一つあるんだ。それはね__自分への罪滅ぼし」


「罪滅ぼし?」


「そう。私はね、ただ死んだ人間を生まれ変わらせてただけで、その人の事なんて全く見てなかったし、見ようともしてなかった」


ミカは、人間の生まれ変わりを単純作業として考えていた。


だからその人間が自殺してもそれは仕方ない__いや、それすらも考えていなかった。


けれどその中でただ一人だけ、どんなに生まれ変わらせてもずっと死に続ける一人の少年がいた。


最初は気にも止めなかったけれど、段々とミカはその少年に興味を抱くようになった。


少年は必ず十六歳で死ぬ。その年月はミカにとっては蝉の命よりも早いものだった。


ミカはこの時初めて人間に対して申し訳ない気持ちになった。


「ムサシはね、ミカに気付かせてくれたの。人間の生まれ変わりは単純な作業なんかじゃないって事をね。ミカはこれに気付くのにムサシを971633回殺しちゃったの。

ううん。もっと沢山の人を何度も何度も殺しちゃった。そう考えると、ミカはムサシよりも重い罪があるかもしれないね」


そう言ってるミカの顔は、ムサシと違って曇ってはいなかった。


「でもね__幸せになれた人もいるの。これは事実。だからミカはこれからも人間を生まれ変わらせ続ける。それが私の使命だよ。そしてムサシはその罪滅ぼしの第一号」


ミカもまたムサシと同じだったのだ。創った人間に、命の大切さを教えられたのだ。


「なんだ、俺とミカは似た者同士だったんだな」


「うん」


二人してクスクス笑った。


その時、ムサシの体が緑色の光に包まれた。


「やっと決めたんだね」


ミカの一言でムサシは合点した。


今、ムサシは世界を救う事を受け入れた。だからこの緑色の光に包まれたのだろう。


この時ムサシは違う恐怖に襲われた。


「ミカとはもう会えないのか?」


「うん。もう会う事はないよ」


その瞬間、どうしようもなく心が痛んだ。痛くて痛くて堪らなかった。


「ミカ!」


ムサシは無意識にミカに手を伸ばしていた。


「さようならムサシ」


「嫌だ!」


ムサシの目尻から一筋の雫が垂れた。


その瞬間、彼の視界はブラックアウトした。


「本当に人間って……」


ミカはその光を見つめながら__


「面白い」


妖艶に笑った。







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