第2章:ラブラブコメディ
第2章
「じゃあ、場所を変えるか!」とランドは言った。
皆、反対する理由も無いので頷いた。
マスターだけは、もっと面白い展開が見れると期待していたが、ガックリと肩を落とす。
外に出ると、ソルとルルが何か悪い事をしようと相談をしていた。
「アレは、悪い盗賊団で俺の子分のソルとルルだ」とソフィアに紹介した。
「悪い盗賊団!?子分って事は、お兄ちゃん盗賊の親玉なの?」ソフィアは聞いた。
「ランドは悪い盗賊団とか言ってるけど、何も悪い事はしないってゆうめいなのよ」とプリムが答えた。
「なんで、有名って漢字にしなかったんですか?」とソフィアは聞く。
「良いのよ!それは、大人の事情よ!」とプリムは答えた。
そう!大人の事情だから気にしないで欲しい!決して、直すのが面倒だからとかの理由じゃ無いしね!
そんな、意味の無い話をしていたら、ランドの姿が見当たらなかった。
ソフィアとプリムは数十メートル先にランドの姿を発見し駆け寄って行った。
「ここが、花屋さんだ」と言って花屋を指す。
何のへんてつも無い花屋。
「もしかして、ここでクルシスの花を買ったの?」とプリムは聞いた。
「おうっ!」とランドは答えた。
「お兄ちゃん、クルシスの花って何?」とソフィアは、仲良く話す2人の間に入り聞いた。
「クルシスの花ってのは、大事な人に贈る花なんだ。花言葉は、永遠の…」と言い欠けたが、口を塞いだ。
何か美味しそうな匂いがする!それも森の方から!
ランドは森の方を見た。
ソフィアも森の方を見ている。
「お兄ちゃん!この匂い…もしかして!」
「ああ間違い無い使〇だ…違う違う、コンガリピッグの匂いだ!」
「コンガリピッグ?」とプリムは聞いた。
「コンガリピッグとは、数年に1回現れる豚に似たモンスターだ!最高に美味しいんだ!」とランドの目付きが変わった。
「毎度思うけど、ランドの鼻って良すぎじゃ無い?」とプリムは言うが、ランドは無視した。
「お兄ちゃん!森に行こっ!」
「ああ!行こう!」と言い再度獣人化をする。
ソフィアも獣人化を解いた。
真っ白な狼が現れる。
ウルフはプリムをお姫様ダッコをして森に向かって走った。
ソフィアもそれを追い掛ける。
「お兄ちゃーん!ズルイ!私もお姫様ダッコして欲しい!」と叫びながら走るが、まったく聞こえて無い様だった。
プリムは嬉しかった。
本能に任せて、2人で森へ行くのか…と思っていたのに、何だかんだで私を担いで、しかもお姫様ダッコをしてくれてるしっ!
プリムが色んな妄想をしているウチに、森へ着いたウルフ。
後から、ソフィアも息を切らせながら森へ着いた。
「アッチから匂うぞ!」と言い走り出す。
ソフィアは、また走るの?と言う顔をして、走り出した。
走り出して5分ほど経った頃に、急に止まるとウルフは、プリムを降ろした。後では、汗だくでソフィアがはぁはぁ言っていた。
プリムはソフィアを無視して、ウルフに話しかけた。
「ねぇ?コンガリウェルダンポークは何処に居るの?」と聞く。
「プリムさん…コンガリピッグですよ」とソフィアが言う。
ランドは2人にしっ!と言うと前を見ている。
しばらくして、ズシン…ズシン…と地響きが聞こえて来た。
体長は3メートルくらいで、重さは500キロくらいで、背中からは湯気をだした豚が歩いてきた。
「ちっ!まだ子供か!」とウルフは呟くと、豚が目の前を過ぎて行く辺りで近寄ると、腹をおもいっきり殴る。豚は甲高い声をあげて、その場で倒れた。
プリムは口をパクパクさせていた。
「この大きさで、まだ子供なの?」と聞こうとしていたのに…。
ウルフはまた、獣人化を解いた。
ソフィアは獣人化をして駆け寄ってきた。
プリムも駆け寄る。
「さぁて、まだ生きてるけど…頂いちゃいますかっ!」とコンガリピッグの腹におもいっきり噛みついた。
ソフィアは喉らへんから、食い付いた。
プリムはもちろんの事、片隅で見ていた。
「あれ?プリム…食べないの?ほらっ!」と言って肉の塊を差し出すランド。
プリムは受け取った。
すると、肉は少し温かくてコンガリ焼いた様な匂いがしていた。
プリムは思いきって、肉を食べてみる。
「!!…美味しい!」プリムは思わず声をあげた。確かに、コンガリピッグと言われる由来が分かった気がした。
プリムはランドの隣に座りコンガリピッグの腹に噛みついたが、なかなか肉を取ることが出来なかった。ランドは笑って、プリムが噛みついた辺りの肉を取ってあげた。
「あ…ありがと」
そう言い、手で受け取ろうとしたが朝のソフィアの言葉を思いだし、そのまま口で受け取った。
「ははは…プリム、狼みたいだな」とランドは笑って言った。
プリムは、顔を赤くして肉をモグモグしている。
しかし、面白く無いのがココに居た。
しかめっ面でプリムの隣に座るソフィア。
「プリムさん。食べたくなったら、私に言って下さい!兄より綺麗に取りますので!」と言い豚にカジリつく。
「ソフィアは優しいなぁー。でも、お前は食べる事に集中してくれればそれで良いから」とランドはソフィアの肩を叩いた。
「プリム!まだ、入るか?」と聞くとプリムは頷いた。
そして、首の後ろ辺りに移動をするランドとプリム。
ランドはその辺りに噛みつき、肉を取るとプリムに渡した。
プリムは素直に受け取る。
「この辺の肉は、高級料理とかで使われてるんだ。多分、プリム食った事があると思うんだけど」とランドが言うので、味わって食べてみたら、確かに城の宮廷料理で良く使われている肉の味がした。
「うん!このお肉の味!良く使われてるお肉だ!」とプリムは驚いた。
「それで、背中の方は…」とランドが歩み寄ろうとすると、ソフィアが背中の方の肉を加えて待っていた。
それをプリムに差し出す。
しかし、ランドは笑ってソフィアの頭を撫でた。
「いいよ。俺達の事は気にしないで。ジャンジャン食べてくれ」と言われ、首を横に振るがランドは気付かなかった。
女の子の気持ちを全く気付かないランド。
プリムは、また優越感に浸っていた。
数分後…
「はぁー…食った食った」とお腹をポンポン叩くランド。
ソフィアとプリムは、2人で1/3程食べたのだが、ランドは残り全部食べた。
残っているのは、頭と骨だけ。
プリムは幸せだった。
肉を腹一杯食べれたとかでは無く、ランドが優しく肉を取ってくれた事に、幸せを感じていた。
ソフィアだけは、つまらなさそうな顔をしていたが…。そして何かに気付いた。
「お兄ちゃん!そう言えば、さっきの花言葉って何?」と聞く。
「ん…?花言葉?あぁ、アレは、永遠の…」と言おうとした瞬間である。
森の中から声が聞こえた。
「エイツリー!エイツリー!エイツリー!」
女が森の中を叫びながら、走っている。
ランドは"エイツリー"と呼ばれて何故か返事をしそうになった。
しかし、返事はしないで女の元に駆け寄った。
「ちょっと!お兄ちゃん!花言葉は?永遠の何?」
プリムは、疑視感を感じていた。何か前にもあったなぁ〜…"永遠の"で途切れて色々妄想してたっけ?
「プリムさん、ごめんなさい!きっとお兄ちゃん結ばれないと知っていても、私に永遠の愛を告げる気なんです!」
とソフィアは言った。
あぁー…やっぱり勘違いしてるわこの子…。
それでも、意味を教えないプリム。
「お兄ちゃん!私達、血は繋がって無いから結ばれるのよ!」
そう言って、ランドの元へと駆け寄って行く。
プリムもそれに、付いて行った。
「エイツリー!お願い出てきて!幽霊でも何でも良いから!エイツリー!」女が叫ぶ中、ランドが女の前に立つ。
女は中年で40歳なかばと言った所だが、顔は若く綺麗な茶色の髪が腰まで伸びていた。
何となく、ランドに似ている所があるけれども…。
「どうしたんだ?この森で大声を出すと危険だぞ?今すぐ帰れっ!」とランドは冷たく言う。
「スイマセン…でも!息子を探しているのです!」と女は言う。
「息子?どんな奴だ?」
「私が昔、木に縛って逃げられない様にした息子です。もう生きて無いと思うんですが…」と女は答えた。
「いや…多分だが、生きているとは思うな。だって、俺も昔この森で木に縛られた事があってな。でも、今は生きている!だから、ソイツも生きてるハズさ!」とランドは言った。
その後に、プリムとソフィアが追い付いた。
「ふぅ、ランド。この人は誰なの?」と聞いた。
「あっ私、グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨと言います!」
「グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨと言えば、あのアクアランドの騎士団長の奥様じゃないっ!」プリムが叫ぶ。
「グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨさんて、そんなに偉い人何ですか?」ソフィアが聞く。
「グランツ・ペストパ…何とかって、お前らよく1回で覚えたな…」とランドは驚いた。
「グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨさんは、アクアランドの領主グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタナさんとグランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベターヨさんの娘さんで、領主の騎士団長ペペロンチーノ・タベタイ・ケド・オカネナイさんと結婚した人よ!」とプリムは言う。
「あのグランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨさんの娘さん何ですか?」とソフィアは驚く。
「違うわよ!グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタナさんよ」鋭いツッコミが返ってきた。
「あーもー!どーでも良いよ!スリッパタベタとかタベタイとか!」
ランドがキレた。
「ちょっと!ランド、失礼でしょ?スリッパタベタイって!私、この家系の名前3日かけて覚えたんだから!」
意味の無い暗記。
「それよりも、グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨさんは、何でこの森に来たんですか?」とプリムはグランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨに向いて聞いた。
「あの、昔…16年程前に、この森でエイツリーって言う名前の子供を捨てたんですよ。ここらへんの木に縛りつけたんですが、今になって迎えに来たんですが…何処にも居なくて…」とグランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨは泣き出した。
「でも、俺は生きてると思うんだ。だって、俺だってそれくらいの昔に、この森の木に縛りつけられたんだけど生きてるもん」
とランドは言った。
「ああぁっ!ありがとうございます!まだ生きてるなんて言ってくれて…うううっ」グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨは泣きながらランドにお礼を言った。
あれ?変な違和感をプリムは感じた。
16年前に木に縛りつけた子供…。
ランドが捨てられた時、木に縛りつけられてた。
現在18歳…。捨てられたのは2歳の時…。
計算すると、16年前。
捨てた子供ってランドじゃん!!
プリムは確信した。
このグランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨさんは確かに森に子供を捨てた。
そして、木に縛られた子供はランド!
って事は…、ランドの本当の本当のお母さんは、目の前にいるこの人じゃん!
「え…っと!スリッパタベタヨさん!俺達が、その子供を探して来ます!」とランドはグランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨに言った。
「そんな!見ず知らずの方に、そこまでして頂くなんて…。本当にありがとうです!」とグランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨはお礼を言った。
「じゃあスリッパさん!子供の特徴を教えて下さい!」とランドが聞く。
あの長い名前を言うのが面倒になったのだろうか、省略して聞いた。
「あの時から、成長してますので想像上ですが…、髪は茶色でお父さんに似てボサボサだと思うんですよ」
「ふんふん」とランドは頷く。
「目は優しい目付きをしていて、人を寄せ付ける魅力があると思うんです」
「ふむふむ」とソフィアも頷く。
「結構、トボケてる所があると思うんですよね」
「ふ〜ん」とプリムはランドを見る。
「名前はエイツリーと言います!今は変わってると思いますが…、なんかランドさんと似ていると思うんですよね」とスリッパは言う。
気付けよ!とプリムは思った。まさに、その通りの人物が目の前にいるじゃん!
しかし、誰も気付かない。
「俺ってそんなにトボケてるかなぁ…」とソフィアに聞くランド。
ソフィアは少し考えて、答えた。
「うーん。トボケてるって言うか鈍感なだけじゃない?」
「鈍感かなぁ…」とランドはプリムに聞いてきた。
「はっきり言うと、トボケてる上に鈍感だわね!」とプリムはキッパリ言う。
「まぁまぁ、そんな事で喧嘩しないで…ね!」とスリッパはなだめた。
「いや!お前が先に言ったんだろ!」とプリムは思った。
「じゃあ、探すか…」とランドは森の中を歩き出した。
何で?何で気付かないのよ!それでも、何も言わないで付いていく。
スリッパは、黙って森を出ていった。ソフィアは、スリッパの後を付いていく。
「ねぇランド!本当に、この森にエイツリー君が居ると思うの?」とプリムは聞いた。
「多分な…。死んでは居ないと思うんだ。だって、俺が生きてるんだもん。エイツリーだって生きてるさ!」とランドは自信満々に答えた。
本人が本人を探して見つかるのかな…見つかる訳が無い!とプリムは思い話を切り出した。
「ねぇ?ランドが、捨てられたのって16年前でしょ?グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨさんも子供を捨てたのが16年前でしょ?」
「うんうん」と答えるランド。
「グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタヨさんは木に縛ったって言ってたでしょ?」
「俺も木に縛られてた」とランドは答える。
「と言う事は…?」
「と言う事は…そうかっ!」とランドは閃いた。
「そうよ!そう言う事よ!やっと気付いてくれたのね!」
「ああっ!ありがとうプリム!やっと気付いたよ!エイツリーは、まだ木に縛られてる可能性があるって事…」
「無いわよ!違うわよ!そしたら生きて無いわよ!」とプリムは叫んだ。
「エイツリーは俺と同い年なんだな?」とランドは気付いたように驚く。
「そうよ!それは最初に言ってたでしょ?見かけを聞いたでしょ?」
「うん…茶色の髪で俺に似てるって…そうかっ!」
「そうよ!本当に気付いたの?」
「ああ…ありがとうプリム!エイツリーはまだ、木に縛られ…」
「て無いって何回言わせるのよっ!本当、ランドってトボケてるわね」とプリムは呆れている。
「トボケてる…エイツリーもオトボケキャラ…もしや!」と何かに気付いた。
「はいはい…もう良いから」とプリムは聞く耳を持たない。
「もしかして、同一人物なのか…?」とプリムに聞いた。
「もしかして、気付いたの!?そう!同一人物なのよ!」
「グランツ・ヘストパスカル・ゾンビラアッチ・スリッパタベタナと!」
「違うわよ!」プリムのパンチがランドの後頭部に直撃した。
「やっと…噛まないで……言えたのに…」とパタッと倒れたランド。
ふぅ〜。とため息をついて倒れたランドを引きづり町へと帰っていく。
プリムは、あの人にどうやって気付かせようと考えていた。