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ヤンデレ後輩と異世界ライフを!  作者: 月代麻夜
第三章 動乱の帝国//第零階層世界編
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第六十八話 牙を剥く皇龍Ⅲ

 優莉「むっ。なんでしょう、今、取るに足りない下僕を叩きに行かなきゃならない気がしました」

 菜月「なんだそりゃ。電波でも受信したのか?」

 優莉「おかしいです……わたしは菜月先輩からの電波しか受信しないはずなのに。はっ! まさか愛の巣(ネットワーク)が汚染されている!?」

 菜月「ちょ、どうしたお前? 投稿期間が空いてキャラが崩れたのか!?」

 優莉「ちょっと千年前まで四島家の男女おとこおんなを叩きのめしに行ってきますね。あ、先輩、お土産はとある社長令嬢だった奴隷でよろしいですか?」

 菜月「良くねぇよ!?」


 ↑は『半天使』の方に入れるかこっちに入れるか悩んだネタ。どっちに入れても分からない人は分からないですね。スミマセン。



「この国は今、大きく分けて三つの勢力に分かれている」


 アースドルが説明を始めると、皆黙って耳を傾ける。皇子としての気質がそうさせるのか、物音一つ立たない。


「一つは、第二皇子ガディアスを担ぐ第二皇子派。彼らは帝国の優れた魔法技術を武器に、周囲の小国家群を攻めて吸収したいらしい」


 魔法大国とまで呼ばれるセルデセン帝国の魔法技術は言われるまでもなく大陸トップクラスだ。いや、他の大陸から見ても桁外れであろう。そして、それを使えば国の一つや二つ、それどころか十も二十も纏めて手に入れることができるだろう。それは比喩でも何でもなく、純然たる事実なのだ。


「次に、僕たち第一皇子派。自分で言うのもなんだけど、帝国法に則れば正当な皇太子を頭に据えた派閥だ」


「もう分かっていると思うけど、わたしもこの派閥に属してる。一応、リリィも」


 口を挟んだのは、第一皇女であるエミアリスだ。彼女が口にしたリリィとは、第二皇女リリアーナのことだろう。


「僕達が目指すのは……というか取り組むのは、第二皇子派が皇帝を押しのけて勝手に進める侵略行為や国民への圧迫を止め、生活基盤の向上を図ること。そして、帝国の魔法技術をさらに発展させることだ」


「……これ以上、魔法技術を発展させる必要なんてあるのか?」


 帝国の魔法技術が他国と比べものにならないことは、この国の皇族であるアースドル達が一番分かっているはずだ。だというのにこれ以上進化を続けて、一体なにを目指すというのか。

 そう問いかける菜月に、アースドルは「キミの言いたいことも分かるよ」と答える。


「でも、ここで止まっちゃいけないんだ。キミも見ただろう?《終焉教》の魔法技術を。彼らは並みの魔道士(ウィザード)では敵わない強力な魔法生物をいくつも作り出し、しかも理論上不可能に近かった複数転移の魔法まで使うんだ。そんな輩に対抗するためにも、そして何より、建国の母たる『煉獄の魔女』が残した大量の魔法式や魔道具を説き明かすためにも、僕達はまだまだ魔法を進化させる必要がある」


 停滞に慣れ、怠惰に(ひた)れば、いずれ他国に追い抜かれる。国防のためにも研鑽を怠ることはできない、ということか。

 菜月が理解したことを察したのか、アースドルは話を続ける。


「そして、三つ目。……これは少々イレギュラーなんだけど……」


 言葉を濁すアースドル。その表情を見るに、言いたくないというよりは、信じたくないといった思いがあることが()(つき)にも読み取れた。

 しかし口を止めるアースドルを待たず、『一月の剣帝』レービスがその名を告げる。


「――《終焉教》。それが、第三勢力の名だ」


「っ!!」


 その忌まわしき組織の名に反応したのは、菜月だけではない。一時的に所属し、そして大司教の地位にある『二月の魔女』イアミントに精神を歪められていたテニーも、菜月以外の他人に対してほとんど感情を動かさない(ゆう)()さえも反応を示した。

 しかし一番強く表情を動かしたのは、菜月達と違って既に情報を得ているはずのエミアリスだった。


「……アリス」


「っ、アース(にい)……」


 アースドルが愛称で呼ぶと、エミアリスはピクリと肩を揺らす。それから何かに耐えるようにぐっと表情を歪めた。


「……これは僕達が乗り越えなくちゃいけないものなんだ。あの人の子供として、()()()と血の繋がった者として……決して諦めてはいけないもの」


「分かって……いる」


 彼らの語る話の内容は、菜月には分からない。けれど何か重要な縁が彼らと《終焉教》との間にあることはなんとなく理解できる。

 ふと、菜月の脳裏にある言葉が蘇った。


『魔女の妹は、魔女と同じく不幸を齎す』


 アレは確か、優莉とのデート(?)を終えて城に帰った時に遭遇した、帝国騎士団長アルバンが口にした言葉だったか。

 魔女という単語が差す言葉が菜月の想像する通りの人物であれば、アースドルの言う「血の繋がった者」という言葉も理解できる。そして、エミアリスがその名に強く動揺する理由も、ある程度推測することはできる。

 と――そんな時だった。

 今の状況を一気に切り崩しに掛かる言葉が、()()()に響いたのは。



『ざ、ザザ――れ、は――――ある――』



「……? なんの音だ……?」


 壁に寄りかかるレービスがいち早く反応し、眉を顰める。

 対して、最初に発生源を特定したのは、この場で最も魔法技術に優れるエミアリスだった。


「っ、【広域声伝法式(ブロードキャスト)】……? 一体誰が……」


「なんだそれ?」


「第三位階に属する風属性の魔法だよ。効果は広範囲に自身の声を届けるというもので…………まさか」


 菜月の問いかけに答えたのは、何かに気付いたかのように表情を変えるアースドルだった。


「まさか、これは――っ!」


 言いかけた言葉は続かない。

 それより先に、全員の意識を吹き飛ばすほどの衝撃が襲ったからだ。

 ()()()()()()()()()()()



『――である。吉報だ。喜べ、「煉獄の魔女」の系譜に従属する誇り高き帝国民よ。第一皇妃オリアナを殺した忌まわしき女、第二皇妃クラリーヌは死んだ。我らがその汚れた魂を刈り取ったのだ!』



「んなっ」


「ふざけ……ッ!?」


 ただでさえ《終焉教》の襲撃で不安定状態にあった帝都に、本来秘すべき皇妃の訃報が落とされる。それがどれだけの混乱を生むかなど、火を見るより明らかなこと。

 ――しかし、衝撃はそこで終わらない。



『これより我らは腐ったこの帝国に終焉を齎す。不要な戦乱を、無意味な死を、無価値な破壊を招く皇族が憎い者は立ち上がれ。私腹を肥やし民を虐げる貴族が恨めしい者は武器を取れ!』



 煽動。

 戦乱を疎うと(うた)いながら、戦乱を巻き起こす理不尽な宣戦布告。

 それは、()の御旗の下に放たれる。



『――《終焉教》の名のもとにッ!!』



   ◆ ◆ ◆


「あー……始まっちゃったわね」


《終焉教》の衝撃的な放送によって動揺する第一皇子派の隠れ家から、少し離れた高台。帝都民にもあまり知られていない、街全体を一望できる絶景スポットで、赤髪の少女と銀髪の少女がベンチに並んで腰掛けていた。

 無条件で守りたくなってしまうような可憐さと、思わず(こうべ)を垂れてしまう美麗さという違いはあれど、どちらも絶世の美少女である。そんな二人が並ぶ姿は、著名な画家が渾身の力とその全ての才を振り絞って描いた生涯の傑作のように優美で、或いは荘厳で、余人の入り込む余地のない聖域のようであった。

 しかし二人の距離はとても近く、ほとんど密着しているようなもの。仲が良いというより、どこか禁断の愛に染まった雰囲気を感じさせる。


「……、」


 先の銀髪の少女の呟きに、赤髪の少女は沈黙を返す。その黄金の瞳はじっと一点を見詰めており、隣の少女に向くことはない。

 対して銀髪の少女は、赤髪の少女の美貌を横から見詰めながら続けた。


「で? 貴女はどうするのかしら?」


「……、どうするって?」


「決まってるでしょ。あの子達のこと」


 銀髪の少女が示すのは、恐らく、赤髪の少女に最も縁のある者達のことだろう。

 しかし、赤髪の少女は表情を変えずにこう返す。


「どうもしない。というか、どうもできない、って言った方が正しいかな」


「……どういうこと?」


 眉を顰める銀髪の少女に、赤髪の少女は唇に指を当てて、


「んー……ほら、カフェで見たでしょ? ()()


「えーっと……あぁ、あのプレイボーイくん」


「いやプレイボーイって……あの人、たぶん緊張すると変なこと口走っちゃうタイプなだけじゃ…………ま、まぁいいや。うん、その人」


 擁護を諦めた赤髪の少女は、こほん、とひとつ空咳を挟んでから、


「彼が関わるってことは、私達は手を出さない方が良いかな。あの人に殺されちゃうし」


「あー……あのクソ女」


 けっ、と悪態を吐く銀髪の少女に、赤髪の少女は苦笑する。


「あんまり悪口言っちゃダメだよ。どこで聞いてるか分からないんだから」


「あの女はどうせ彼だけストーキングしてるわよ。他の人間なんて目に入らないわ」


「確かに」


 ふふふ、と笑う赤髪の少女に釣られて、銀髪の少女も笑い出す。

 ひとしきり笑うと、銀髪の少女が切り出した。


「さて、と。じゃ、あたしはあの二人に貴女の意向を伝えてくるわ。貴女はどうするのかしら?」


「私は……」


 続きを口にすることなく、赤髪の少女は視線を再び一点に向ける。

 銀髪の少女がそちらに視線を向ければ、一軒の質素なログハウスがあった。あの中では今、不意の《終焉教》の宣戦布告に混乱する第一皇子派の面々がてんやわんやしているだろう。

 赤髪の少女がそこを見詰める意味を推測すると、「なるほどねぇ」と呟き、銀髪の少女はにんまりと笑みを浮かべた。


「自分の可愛い可愛い娘を見守りたい、と」


「っ……いや、娘どころか()(まご)でも玄孫(やしゃご)でも足りないけど」


「見守りたいってところは否定しないのね」


 にやりとする銀髪の少女に、赤髪の少女は頬をぷくっと膨らませて、


「……いいじゃん。久しぶりに戻ってきたんだし」


「むふふふーっ! あーもーっ! かーわーいーいーっ!!」


「わっ! ちょ、いきなり抱きつくの禁止っ! って、きゃあ!? どこに手入れてるの!」


「可愛い貴女がいけないのよーっ。ふふふ久しぶりに野外というのも悪くないわねぇ☆」


「ちょ、ちょちょちょ待って何する気っ!?」


「安心して、ロリコンと神絵師(女の子限定)の合作の指南書(エロ本)で学んだから作法は完璧よ」


「本当に何する気!? というか何やってるのあの二人は!」


 ……国家の象徴たる帝国城内も、帝都の外れで息を潜める者達も――帝都中が大混乱に陥っている中で、彼女達だけは平和に百合の花を咲かせていた。



 とある鬼人鍛冶士「むっ。なんか今、すごく幸せな光景を見逃した気がする」

 とある元社長令嬢「なんだいその勘は? というかキミ、そのメイド服、破滅的に似合ってないよ。吐き気がするレベルだよ」

 とある鬼人鍛冶士「お前がやれっつったんだろうが!?」


 おかしい……奴らが出るとシリアスがどっかに行ってしまう。なぜだ。

 まぁこれからずっとシリアスの予定なんですが。……こいつらが出なければ。

 次回も宜しくお願いします。

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