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ヤンデレ後輩と異世界ライフを!  作者: 月代麻夜
第三章 動乱の帝国//第零階層世界編
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第五十九話 茶髪ネコミミ少女Ⅱ

 遅れた理由(言い訳):『白百合の姫』の更新を三連続でやったら時間が消し飛んだんです本当にスミマセン。

 今月中にあと一本更新したいなぁ……超ガンバリマス、はい。

 なお、話はまだ明るいです。まだ。大事なことなので二回言いました。



 つき達が適当に飛び込んだ店は、『シジマ・イン・セルデセン』という店名のカフェだった。

 できるだけ外から見えない席に陣取り、それぞれ適当に注文したところで、ようやく一息つける。

 ひとまず落ち着けた事で、知らないはずの魔法の使い方をしていただとか、警備隊に捕まるのは厄介だから逃げるために咄嗟に女の子の手を握っちゃったけど気持ち悪がられてないかなーだとか、今更ながらに色々考えが浮かんでくる。が、それらを整理するより早く、正面に座る茶髪の少女が、ネコミミをピコピコと揺らしながら頭を下げた。


「あ、あの……えっと、助けてくれて、ありがとう」


「ん? あ、いや……顔を上げてくれ。余計な事じゃなかったか?」


「い、いえ、助かったわ。私だけじゃ、この子を守れなかった」


 そっと、先ほどまで男達に向かって怒鳴っていた者と同一人物とは思えないほど優しい手付きで、隣の席に座る男の子の頭を撫でる。表情も柔らかく慈しんでいるようで、それが少女の本当の顔なのだろうと菜月は感じていた。

 と、そんな菜月の生暖かな視線に気づいたのか、少女はカアッと顔を赤くして男の子の頭から手を放す。


「……なによ」


「い、いや別に……優しいんだなって」


「……このくらい普通よ。自分の弟ぐらい、ちゃんと面倒見るわ」


「弟……?」


 疑問を覚え、菜月は視線を男の子へと移す。

 先ほど荒っぽい冒険者達にいちゃもんをつけられていたというのに今はのんに椅子に座ってぷらぷらと脚を揺らしている、くすんだ緑の髪を持つ男の子。年齢のほどは七、八歳程度で、これといった外見的特徴がないので人間種(ヒューマ)だと思われる。

 髪色も種族も一致しない二人が姉弟きょうだいなのか。まぁそれぞれ両親から別の色を受け継いだと思えば違和感はないし、種族だって男の子の方は血が薄くて特徴が出なかったハーフかも知れない。そう菜月が考えていたのに気づいたのか、「違うわよ」と茶髪の少女は否定してきた。


「別に血の繋がった姉弟な訳じゃないわ」


「複雑な家庭環境、か。ごめん」


「うーん……言葉にすればもっと簡単よ。ただ私もこの子も、同じ孤児院出身なだけ。あそこは院生皆が家族だったから、年上な私が姉で、この子が弟なのよ。……例え、教会が新しい所に変わっていたとしても、ね」


 ぽふぽふと男の子の頭を優しく叩き、眼を細める少女。男の子はくすぐったそうに身をよじった。


「なるほどな。……と、そういえば、俺は菜月。そっちは?」


 すっかり自己紹介を忘れていた菜月は、慌てて名乗る。すると少女は少し考えたようなそぶりを見せ、それから何事も無かったかのように口を開いた。


「私はミーフィル。この子は、」


「メイト!」


 自分の名は自分で言いたかったのか、元気よく声を上げる男の子――メイト。その可愛らしい行動に少女――ミーフィルは微笑んでいる。

 が、そんな本物の姉弟のような仲の良さを見せる暖かな二人を眺めながら、菜月はどこか引っかかるものを覚えていた。


(ミーフィル……って、どこかで聞いた事があるような……)


 いつかどこかで、聞いた気がする名前。しかしはっきりとは思い出せず、首を捻るばかりだ。

 と、菜月が難しげな表情をしていたところで、注文した品が届く。

 珈琲コーヒーは菜月、紅茶はミーフィル、リゴンのジュースはメイトだ。この世界にも珈琲とか紅茶ってあったんだなーとメニューを眺めた時に思った菜月だったが、一番驚いたのはデッラックスジャンボパフェが聖金貨一枚というとんでもない値段だった事だ。金貨百枚、日本円でおよそ五百万円である。……一体誰が食べるというのか。

 そう思って店内を見回してみると、デラックスジャンボの名に相応しい巨大パフェに舌鼓を打つ二人の少女が。マジで注文する奴いたのか、というかアレ食い切れるのか、いや待て銀髪のはともかく赤髪のはカラー的に皇族か⁉ と驚愕や疑問は尽きないが、ひとまず視線を逸らす事にした。……見ているだけでお腹一杯だったのと、明らかに少女二人がただ者ではないと理解したので。財力的にも、美貌的にも、あと胃袋的にも。

 ともあれ、珈琲を一口(すす)り、頭を切り替える。


「それで……どうして二人は、あんな事に?」


 まぁ怒鳴り合いを聞いていたのでいくらか事情は察しているが、一応本人達の口から話を聞いておくのが良いだろう。

 菜月の問いかけに、ミーフィルはあの冒険者達の事を思い出したのか顔を不快感に歪めながら、


「……ちょっとこの子がぶつかっちゃったみたいで、慰謝料に金貨よこせとか言うから、止めに入ったのよ」


「僕、ごめんなさいって言ったのに、金貨よこせーって怖かった。でも、お姉ちゃんが助けてくれたから、だいじょーぶだったんだ。お姉ちゃん、すっごくカッコよかったよー!」


「ありがと。……で、口論の末にあのクズが剣を抜いたんだけど、そこで貴方が助けてくれたって感じかな」


「ふぅむ……」


 大体見た時に感じた通りの状態だったようだ。片方だけの意見なので完全に正確とはいかないが、まぁ大体正しいだろう。冒険者の男達に非がある事ははたから見て明らかだったのだから。……少女が煽ったのも駄目だった気がするが、そこは流しておく。

 しかしそういう事情なら、あの冒険者達は冒険者協会に報告しておいた方が良かっただろうか。恐喝は犯罪だろうし……いや、確か冒険者協会のルールに『厄介事は持ち込むな』というものがあったので、取り合ってもらえない気がする。……何というか、今更ながらにあの組織は放任主義すぎやしないかと思うのだが。


「ああ、冒険者協会へ報告しても多分無駄よ」


 菜月の表情を見て考えている事を悟ったのか、忠告するように茶髪の少女が言い放つ。どうしてだ? というか心読めるのかこの⁉ という二重の疑問がぎったところで、恐らくこれも顔に出ていたのだろう、少女が呆れながらに教えてくる。


「分かり易いのよ、貴方。……あと、冒険者協会って基本的に『テメェの事はテメェで解決しろ』っていう思想だから、貴族とか豪商とか、有力な依頼主との問題とかじゃない限り、口を出さないし手も貸さないわよ。勿論、か弱い一般人に絡んだ時も、協会じゃなくて兵士さんの仕事」


「なるほどな。……でもなぁ、衛兵のお世話になるのはなぁ……」


 警察のお世話になるのはちょっと……みたいな謎精神が働いて、何となく協力を仰ぎにくい。あと、エミアリスにもお世話になっているので、そちらに影響が出そうな事はしたくない。

 難しげに顔を歪めながらそう考える菜月に、ミーフィルはどこか慌てるようにして、


「い、良いわよそんなに考えなくて! こんな事にいちいち衛兵を呼んでいたら、面倒臭いったらありゃしないわ。いやこれは決して衛兵にお世話になるのは都合が悪いとかそういう訳じゃ……」


「あー、まぁそうだよなぁ。衛兵にお世話になるのは嫌だよなぁ」


「……え?」


 きょとんとするミーフィル。菜月はどうしたのかと首を捻る。

 すると、ミーフィルは眉をひそめながらたずねてきた。


「……貴方も、衛兵が関わると不味い立場なの?」


「ん? まぁ、そんな感じだな」


「そう……なの。へぇ、そうは見えないわね」


 意外といった調子で見詰めてくるので、ますます首を捻る菜月。


「貴方も、って……お前もなのか?」


「え⁉ えっと、それ聞いちゃう系? ……んまぁ、そういう事なんだけど……」


「あー、そうなんだ。お互い苦労してんだなぁ……」


 しみじみ呟く菜月。

 きっとあれだ。この少女も、先日の事件でお偉い方から重要参考人的立場で事情聴取されているのだろう。しかも殆ど意味のない系のやつで。菜月も菜月で微妙な立場だが、この少女もご愁傷様である。

 実は噛み合っていない会話に気付かず、二人は盛り上がりを見せた。……ちなみにメイトは話が良く分からないので、ずっとリゴンジュースをちびちび飲んでいる。

 と、何故か仲の良い十年来の友人と話しているような気分になっていると、


「うわ……マジか。初対面っぽいのにもう二人の世界を形成とは、あの人やるなぁ」


「プレイボーイってやつかしら。コミュ力凄いわね」


「ううーん、ここのカフェはいつも甘いねぇ。流石、帝都一番のデートスポット」


「そうね。食べているものも滅茶苦茶甘いから余計に甘く感じるわ」


「うん、確かにパフェはめっちゃ甘い。でもカップルの方がもっと甘い。いやいっそ熱い? そのまま爆発?」


「じゃあ、あたしたちも熱く甘ぁくしようかしら! ふふふふふ♪」


「お、お手柔らかにお願いします……くっ、これだから百合っ子は……っ!」


 などと、デラックスジャンボパフェ(超々高級品)をスプーンでつつきながら、赤髪の美少女と銀髪の美少女が話している声が聞こえてきた。……周りから見れば自分達はそういうふうに映るのかとか、あの人達のテーブルに既に空になったパフェのグラスがあるのだがもしや二杯目⁉ とか色々思ったが、とりあえずスルーしておいた。カフェで金貨二百枚(日本円にして約一千万円)も使うとか信じられない。

 思えば女の子と二人で――一応小さな男の子もいるが――カフェで仲良く談笑とか、これ、もはやデートではなかろうか。そう考えると異常に緊張してくるが――自覚して速くなった鼓動を何とか抑え付けながら少女の方に視線を向けてみると、


「あ、あまっ……いや別にこれはででデートな訳じゃないし⁉ え、でもカフェに異性と二人でーとか完全に……って違うし! 別にそうじゃないからーっ!」


 ぶんぶんとセミロングの茶髪を振り乱して叫ぶミーフィル。どことなく頬が赤く見えるが、頭をあれほど激しく振ったから血がのぼったのだろう。あと、振るのに合わせてピコピコ揺れ動くネコミミに妙に目を惹かれた。

 慌てて菜月はネコミミから目を放し、珈琲を啜る。飲み干した時には、すっかり落ち着きを取り戻していた。自分より動転している人を見ると妙に落ち着くというやつである。

 こほん、と一つ咳払いしたと思ったら、ミーフィルはまだ頬を上気させながらこちらをキッと睨み付けて――それが本物の猫っぽくて可愛らしいと思ったが、流石に猫人種(ワーキャット)相手には失礼かと思ったので言わなかった――、念を押すように主張してくる。


「別に! これは! デートじゃないから‼」


「あぁ、はい、そうっすね」


 異様な迫力にされ、思わず口調まで変えて肯定してしまう菜月。鬼気迫る彼女の横でちびちびリゴンジュースを飲むメイトが、肝が据わっているのか無関心なのか良く分からないほど落ち着いていた。むしろそっちに吃驚びっくりである。

 フーッフーッと猫のように可愛らしく威嚇するミーフィルに苦笑しつつ、とりあえずここは店内なのでたしなめる。


「ほら、分かったから、まずちゃんと座ろう。ここカフェだから、静かにしとかないと」


「あ……ぅ、ごめん」


 大きな声を上げたせいで注目を浴びている事にやっと気付いたミーフィルはカアッと顔を赤くし、おとなしく座り直した。それからしゅんとした様子でうつむいてしまう。

 なんだこのめっちゃ反応可愛いなというか非リア民にはどう対応すれば良いのか全く以って分かんねぇよどうすりゃ良いの教えてド〇えもーん! とパニックに陥る脳で何とか次に取るべき行動を弾き出し、正解とも思えないが実践する事にした。――数秒後に激しく後悔する事になるが。


「えーっと……その、なんだ。ごめんな」


「……ううん、貴方のじゃないわ。私が勝手に混乱しちゃっただけだし」


「それでも……うん、とりあえず、顔を上げてくれ。君の可愛い笑顔を見ていたい」


 あ、やっべ、なんか妙な事を口走った気がする――と直後に思ったが、一度出た言葉は引っ込められない。


「ふぇ⁉ ちょ、あ、貴方にゃにを……っ⁉」


 驚いて顔を上げたミーフィルは、林檎よりに頬を染めていた。


「凄い、アレがプレイボーイの技……っ! くぅっ、私には絶対無理……恥ずかしくて死ねる!」


「あれほどすんなり口説き文句が出るとは……あの人多分、今までも無意識に何人も落としてきた天然(たら)しね! 恐ろしい子‼」


 なんか外野が色々言っている気がしたが努めて無視した。羞恥心で軽く死ねるので。

 わー、お姉ちゃんお顔()()ー! というメイトの無邪気な声が更にミーフィルに追い打ちをかけ、哀れミーフィルは机に突っ伏した。……耳まで赤くなっていたが、指摘すると何かが崩壊してミーフィルが爆発しそうだったので口をつぐむ菜月であった。


   ◆ ◆ ◆


 紅茶を五杯一気飲みする事でやっとミーフィルは落ち着けたようだ。まだほんのり赤い頬とぴくぴく反応しているネコミミの魅力が半端ないが、流石に触らせてもらう事はできないだろう。……いや本心では凄くネコミミ撫でたいのだが。


「あ、そういえば……」


 ふと彼女達を助ける前にしていた事を思い出し、せっかくだから彼女達にもペンダントの事を訊こうと思い立った。すぐに情報が得られるとは思えないが、もう一度捜索魔法を試す前に、現地民に心当たりがないか尋ねてみるのも良いと思ったのだ。

 菜月はポケットに入れていたペンダントを取り出すと、テーブルの上に乗せる。すると――。


「っ! それ、は……っ」


「あれ? 心当たりがあるのか? 持ち主を探しているから、教えてくれると有り難いんだが……」


 いきなり当たりを引いて驚いたが、何か手掛かりがあるならと問い掛ける。するとミーフィルは何故か菜月の顔とペンダントを何度も見比べて――やがて何かに気付いたのか、口元を引き攣らせた。「まさかあの時の……」と呟いていたが、何の事かさっぱりである。


「何か知ってるのか?」


「え⁉ あ、っと……その……」


 言い辛いのか、目を逸らしごにょごにょとくちもるミーフィル。何か言ったら不都合になる事でもあるのだろうか――と思ったが、良く考えたらこのペンダントの持ち主は〝終焉教〟の教徒だったはずだ。それは言い出し難い事である。何せ、この街を半壊させた教団の一員なのだから。

 それが家族であれ、友人であれ、関係者であると知られれば不味いと思うのも仕方のない事だろう。菜月は配慮が足りなかったかな、と反省しつつ、言葉を加えた。


「いや、別にこれの持ち主を衛兵に付き出そうとしている訳じゃないんだ。ただ、本来の持ち主に返してやりたいだけだよ」


「……え?」


 眉根を寄せ、上目遣いに菜月を見るミーフィル。菜月の言葉が理解できないのか、表情は晴れないままだ。


「だってこれの持ち主は……」


「知ってる。でも、多分これ、大切なものだろう? 見れば大事にされているのが分かる。……だから、返してやらなきゃって思ったんだ」


「それが……相手が、あの教団のメンバーだとしても?」


「ああ、だとしても、だ」


 強く言い切った菜月を、ミーフィルは暫く見詰めたまま押し黙る。

 その瞳に映るものは葛藤か、困惑か。夜闇色の瞳が水面みなものように揺れ動き、彼女の内にいだく感情の波を表している。

 ややあって、ミーフィルはおずおずと口を開いた。


「……えっと、ね。これ、その……と、友達の物なのよっ。だから、その……」


「――ん、分かった。じゃ、返しておいてくれないか?」


 スッと差し出すと、ミーフィルは受け取るのを躊躇ためらうような姿勢を見せる。だから菜月は念を押すように、自身の気持ちを語った。


「言ったろ? 俺はこれを持ち主に返したいだけだって。その相手が誰であろうと、関係ない」


「…………」


 返ってきたのは沈黙だったが、菜月の言葉に納得――はしなくとも折れたのか、ミーフィルはペンダントを受け取った。彼女は渡されたペンダントを懐かしむように眺め、まるで自分の物のように愛おしく撫でる。

 ひとしきりペンダントを堪能して、彼女は大切なものを抱くように胸元に引き寄せた。

 それから菜月に向けてくれたのは、飛び切りの笑顔だった。――れるほどに可愛らしく、思考が止まるほどに綺麗な、女の子の微笑み。



「ありがと、ナツキ」



 たった一言。

 ただの笑顔。

 それだけで、菜月は時間が止まったかのように錯覚した。


「――――」


 何なんだ今日は、と心の中で愚痴をこぼす。

 ゆうも、ミーフィルも、今日共に過ごした女の子は皆、可愛すぎやしないかと。

 十八年間童貞非リア民を貫いてきた菜月には、耐え難いほどに危険な状況だ。こんな可愛らしい笑顔を向けられると、勘違いしてしまう。……いや優莉の方は勘違いでも何でもなく、真正面から告白されたか。その後、二人仲良く死んだが。


「……あ、あぁ。どういたしまして」


 やけに速い動悸と赤くなりそうな顔を何とか堪えて、絞り出すように言葉を返す。微妙に引き攣っていたかも知れないが、笑顔も浮かべておいた。

 と――そこまでで終わっていれば平和だったのに。



「ぽっと出のサブヒロインとなに浮気しているんですか、先輩?」



 ――ゾッとするほど冷たい声が、菜月の体温を一瞬で奪った。

 ついでに幸福感と高揚感も消し飛んだ菜月は、出現した大魔王の方へギリギリと顔を向ける。「あ、修羅場」とか「大ピンチね」とか外野から聞こえたが、努めて無視して声を絞り出す。


「や、やぁ優莉。もう用事は済んだのか?」


「はい、終わりましたよ。でもまさかあの噴水まで戻ったら『待っていてください』と言ったはずの先輩がらず、時間をかけて必死に探したら、あろう事か他の女とカフェでお茶をしていただなんて」


「え、と……それは申し訳ないというかもしかしてマジギレですか優莉さん?」


「まさか。わたしが先輩に対して怒りを向けるなんて事は決してありません。先輩がそれをお望みだというのなら話は別ですが、わたしは愛情を向ける方が好きなので」


「そ、そっすね。でもホントごめんなさい」


 笑顔が滅茶苦茶怖い。これで怒っていないはずがないが――。


「というかそもそも、わたしが怒りをいだくのは泥棒猫に対してですよ? あら、それが猫人種(ワーキャット)だなんて皮肉がいてますね」


「は?」


 と、ここで『猫』の部分に反応したミーフィルが参戦。もうどぉにでもなぁれ☆ と菜月ははっちゃけておいた。……何も解決しないので心の中でだが。


「ちょっと誰が泥棒猫よ? 私は別にそんなんじゃ……」


「違うんですか? 発情期の猫よろしくな顔で菜月先輩を見詰めていたので、てっきり欲情しているのかと。であればここで剣を抜くのもやぶさかではありませんが」


「だだ誰が発情期の猫よっ⁉ 別に私はナツキがどうとかそういうアレでアレな訳じゃない……はずだし……と、というかあんた何なのよ!」


「わたしですか? わたしは先輩の愛の奴隷であり伴侶で――」


「あぁぁぁああああああただのパーティーメンバーだから‼」


 初対面の人に対してする挨拶ではない言葉が聞こえたので全力で遮り、慌てて優莉の手を掴んで出口へ走り出す。ついでにオーダーシートらしき木板も掴んでレジ(?)で会計を済ませると、脱兎の如く菜月は外へ飛び出した。

 ――と、完全に去ってしまうその前に、菜月は一度店内に顔を入れ、ミーフィルとメイトの方を向くと、


「じゃ、またな!」


 それだけ言って、再び走り去るのだった。


   ◆ ◆ ◆


 途端に静かになる店内。

 残されたミーフィルは、ポカンとするメイトの頭を撫でながら、ぽつりと零すように呟くのだった。


「……さりげなく奢っていくとか、格好良いなぁ」


 その声をみみざとく聞いていた赤髪の少女と銀髪の少女は、二人同時にこう呟いていた。勿論、本人には聞こえないように。


「「……あぁ落ちたわ、この」」



 ミーフィル、チョロイン確定。(←オイ)

 ちなみに菜月は猫派。ネコミミに反応したのは男のさがですが。

 次回も宜しくお願いします。


 ……ところで、超々高級パフェ食べていた赤髪の美少女と銀髪の美少女、奴らは一体誰なんだ……(棒)。

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