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ヤンデレ後輩と異世界ライフを!  作者: 月代麻夜
第二章 平和な時の終焉//第零階層世界編
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第三十四話 意外な再会

 レギオンモンキーに捕まっていた少年ですが、髪の色を間違えていました。正しくは赤茶色です。修正しました、すみません。


「すみませんっ、ごめんなさいっ、そして助けてくれてありがとうございました!」


 菜月の魔法に恐怖を覚えて悲鳴を上げていた赤茶髪の少年だったが、それから数分の後、やっとの事で落ち着くと、深々と頭を下げて謝罪と感謝の言葉を述べた。因みに、少年の体を縛って拘束していた縄は解いてある。レギオンモンキーが縛ったのだろうか、意外と器用らしい。

 前にシャルロッテを助けた時も全力の謝罪が返ってきたが、今回は流石に頭が地面にめり込むレベルの土下座を見せられる事はないようだ。菜月なつきは「無事で良かった」と安心した笑顔で口にしてから顔を上げるように言うと、少年は涙でぐちゃぐちゃの顔を服の袖で拭きながら口を開ける。


「いやぁ、本当にありがとうございました! お陰で何とかレギオンモンキーの餌にならずに済みましたよ!」


「あ、マジで餌として捕まってたんだ……」


 まるで宴の肴のように、レギオンモンキー達が囲む大きな火の近くに縛って転がされていたので食べられるのかと思っていたが、どうやら本当にそうだったらしい。菜月が助ける為に集落の中へ飛び込んだ時が魔物に食べられる直前だったと考えると、とても恐ろしい事だ。正に危機一髪。彼が泣き喚いて助けを求めるのも頷ける。

 それはともかく、一通り少年からの感謝の意を受け取ると、菜月は「それで」と前置きして問いかける。


「どうしてアンタは捕まってたんだ? というかどうしてこの樹海に?」


 ミアレラ樹海に入る人間と言えば、近隣の村の住人か狩人か、もしくは冒険者くらいだろう。

 赤茶髪の少年の背丈は一七八センチある菜月よりも若干高く、筋肉もマッチョというほどではないがそこそこ付いているので、一見すると狩人か冒険者の可能性が高い。更に腰には一振りの長剣が提げられており、鎧の類はレギオンモンキーに食べるのに邪魔だからと捨てられたのか身に付けていなかったが、魔石収納ポーチや予備の短剣を長剣と反対側の腰に付けていた。

 狩人は食用肉を手に入れる為に森へ入る事から基本的に魔物ではなく斃しても肉体が残る獣を狩るので、魔石収納ポーチを持つ事は無い。となれば冒険者だろうと菜月は判断して訊いたのだが、少年は少しくすんだ赤茶色の髪をわしゃわしゃと掻きながら照れ臭そうに話し始める。


「いやぁ、実はですね。僕、冒険者でして。剣舞闘師ソードアリア職業クラスなんですけど、パーティー組む人がいなくて、四日前くらいから独りでこの樹海に来たんですよ。それで途中で美味しそうな果物を見つけたんで、ちょうどお腹もすいてましたし木を登って取ろうとしたんですけど、枝を踏み外して落ちちゃって」


「なるほど、ぼっちなのか。そしてドジ、と」


「う、五月蝿いですっ。良いんですよ、『独奏アリア』なんて単語が職業クラスの名前に使われてるくらいなんですから。……で、頭を打って気絶している間にどうやらレギオンモンキーに見つかってしまったらしく、眼が覚めたらレギオンモンキーの集落だったって訳です。いやぁ、周りみーんなレギオンモンキーで、しかも縛られて動けない僕と火を囲んで踊ってるんですよ? ご飯になった気分でした」


「まぁ実際そうなる直前だったしな。……それで、何で一人でミアレラ樹海に? ここって単独で来るにはかなり危険な場所だぞ?」


 新人の自分の方が適さない場所だという事は棚に上げて問う菜月。しかしレギオンモンキーの集落を一瞬で焦土に変えるほどの威力を持つ魔法を使える魔道士ウィザードが新人だとは流石に思えない赤茶髪の少年は、その事を気に留めず「まぁ、そうなんですけどね」と肯定し、続けて答える。


「目的は修行みたいなものです。この前、僕より年下の新人なのに僕より遥かに強い人が戦う姿を見て、ちょっと憧れちゃって――って、」


 恥ずかしそうに顔を赤くして話していた少年だったが、何かが目に映ってピシリと凍り付くように動きが一瞬で固まった。

 何事かと菜月は少年の視線が向かう場所――自分の右横を見ると、そこには少年の話に興味が無いのか会話を始めた時からずっと菜月の腕にべったり抱きつき頬ずりしているツインテールの少女が居た。

 憂莉ゆうりがどうかしたのだろうかと首を傾げて疑問符を浮かべる菜月。しかし赤茶髪の少年は見る見るうちにその顔を引き攣らせて行き、ようやっと口が動くようになると、


「――な、なんでここにユーリさんがッ!?」


 と、驚愕を顕わに叫ぶのだった。


「え、知り合いか?」


「いえ、知りませんが」


 名を知っていたという事はそうなのだろうかと訊く菜月だったが、当の憂莉はキョトンとした表情を浮かべて首を横に振る。これは本気で知らないか、覚えていない顔だ。

 しかしお前なんか知らないと目の前ではっきり言われた赤茶髪の少年は「いやいやいやっ」と慌てて否定し、興奮しているのか顔を赤らめながらもどこか必死で言葉を並べ始める。


「僕です、僕! テニーですよ! ほら、ユーリさんが剣舞闘師ソードアリアギルドの加入試験でアマネフ洞窟に行った時に、監視役として付いて行ったじゃないですか! 忘れちゃったんですか!?」


「んー……やっぱり覚えてません。人違いでは?」


「そんな訳ないですって! さらさらとした綺麗な紫の髪を持つ二刀流使いの美少女なんて、剣舞闘師ソードアリアに多分一人しかいません! 僕、貴女の美しい戦いを見て修行しようと思ったんですよ!」


「はぁ、そうですか」


「興味がまるで感じられない!? 僕はこんなにも本気なのに!」


 うぎゃーっ! と髪を掻き乱して発狂する赤茶髪の少年――テニー。憂莉にまるで相手にされない彼の姿に菜月は苦笑を浮かべるしかない。

 しかし本当に憂莉は思い出せないようで、首を傾げるだけである。というかこれは完全に、興味が無いから覚えていないのだろう。実にテニーが可愛そうであるが、憂莉は菜月に関係のある者を除いて基本的に覚える気が無いので仕方が無い。


「僕がきちんとギルドに報告しなきゃ、ユーリさん剣舞闘師ソードアリアになれなかったんですよ!? そんな大事な役目を請け負っていた人を忘れちゃったんですか!?」


「はい。全く、これっぽっちも、塵ですら大き過ぎるというほどに興味無いですから」


「僕ってそんなに存在感薄いんですか!? 泣きますよ!?」


「どうぞ。それではわたし達は魔石を回収して帰るので、さようなら」


「ええええええ!! ちょ、ちょっと、本気で泣きますよ!? いえもういっそ泣かせて下さい! ――と、というかっ」


 平常運転でこてんぱんなまでに突き放しにかかり、全く以って興味を持ってくれない憂莉にテニーは眼尻に涙を浮かべながら魂の叫びを放つ。が、そこで何か思い出したように言葉を繋げると、今度は菜月の方に殺気すら籠った鋭い視線を向けて人差し指を突き付け、


「あ、貴方はユーリさんの何なんです!? べったりし過ぎですよ馴れ馴れしいっ!」


「え、別に俺がしたくてしてる訳じゃないんだが!?」


 噛み付くように怒鳴るテニーの顔には嫉妬と憤怒が浮かんでいるが、その二つの感情の原因が何なのか分からないのが菜月の駄目なところである。むしろこの状況で分からない菜月は鈍感が過ぎるような気もするが、憂莉が『銀虐魔王の血脈アルジェント・ブラッド』の力を使って戦う姿に魅せられてしまったテニーと違って菜月は一度もその姿を見た事が無く、更に二人が知り合いだった事を初めて知ったという事もあり、惚れる原因が憂莉の容姿以外見当たらないのだから仕方が無いのかもしれない。それでも分かりそうな気もするが、そこは菜月なので無理であった。


「じゃあ何でユーリさんと密着してるんですか!? 離れて下さいっ! それとも貴方はユーリさんの……その、こ、恋人だとでも言うんですか!?」


「え、ええ!? いや違うけど!?」


「そうですね、わたしは恋人でも良いんですけど、ちょっと違いますよ」


「ちょっとじゃ無くて普通に違うが、言ってやれ憂莉!」


「わたしは菜月先輩の愛の奴隷であり伴侶なんですっ!」


「「えっ」」


 火に油を注いでその上から大量のダイナマイトを落とす憂莉の発言に、同時に絶句する菜月とテニー。

 しかし菜月が顔を引き攣らせながらも「冗談言ってんじゃねぇよ」と笑い飛ばせるのに対し、テニーは顔を一瞬にして真っ青にすると、かちかちと歯を鳴らし体を震わせ始めてしまった。その様子はレギオンモンキーに捕まっていた時と同等、いや、ある意味それ以上の絶望感を懐いているようだ。


「そ、そんな……あ、あ、愛の……奴隷、なんて。は、伴侶? う、嘘だ。嘘だろ。嫌だ。そんな訳が無い。だってユーリさんのあの女神のような美しさは凡人が手にして良いようなものじゃないし。そ、それに、ユーリさんは僕が幸せにするって決まってるんだから。うん、嘘だよ。嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だウソだウソだウソだウソダウソダウソダウソダウソダ――ッ!!」


「え、ちょ、テニー、さん!?」


 何やら呪詛のようなものをぶつぶつ繰り返し呟いていたテニーだったが、彼は突如声を荒げて「嘘だッ!!」と叫ぶと同時に身を翻して走り出した。菜月が慌てて彼の名前を呼ぶも、テニーは振り返る事無く逃げるように暗い森の木々の中へ消えていってしまった。

 残されたのは、テニーが走り去っていった方へ手を伸ばしたまま呆然とする菜月と、彼の空いている腕に抱き付く憂莉だけ。

 上空から眺めれば樹海の中に円形にぽっかりと空いているであろう焦土と化した空間には、レギオンモンキーの魔石とドロップ品が散乱したままだ。その中心で、菜月はぽつりと呟いた。


「何なんだ、アイツは……」


 自分の周りには異常者しかいないのかと、菜月は半眼になりながら無意識のうちに口に出していた。

 因みにその言葉が聞こえていた筈の異常者の一人である憂莉は、しっかり聞き流したようだ。本人が自分を異常者と思っているのかいないのか、判断に困る微笑みを彼女は浮かべている。

 最後に一つ溜息を吐くと、抱き付く憂莉を何とか引き剥がし、菜月は大人しくレギオンモンキーの魔石を回収し始めるのだった。


   ◆ ◆ ◆


 あらかたレギオンモンキーのドロップ品やら魔石やらを回収し終えた菜月と憂莉は、軽く地形破壊を起こしてしまった事を見なかった事にしてミアレラ樹海から去った。二人の持つスキルや魔法では直しようも無いし、そんな時間も無かったので仕方が無い、という事にして。

 テニーを追うかどうかも迷ったが、その必要は無いだろう。四日前からここに居たと本人が話していたのだから、ドジを踏まなければこの樹海で独りで居ても何日かは死なずに生活出来る程度の実力を持ち合わせているという事だろうし。樹海の奥に踏みこまなければ、の話だが。

 金稼ぎの為とは別の目的であった菜月の戦闘訓練は、結局二回しか戦闘が出来なかったが、これ以上樹海を破壊してもいけないという事で終了となった。過剰な威力を抑えて無駄な被害を防ぐ為にも、暫くは魔力の扱いと魔法式の組み立てを早くする事に集中した方が良いだろうという事で、菜月は空いた時間にこれらのレベルアップを図る為の修行を義務付けられたが。

 村の状態は案の定最悪で、何もせずに去るのは些か良心が痛むのだが、だからといって何か手伝える事がある訳でもない。菜月達が出来る事といえば、シャルロッテの救出と共に同じく攫われていた村人達を救出し、この村に無事に送り返す事くらいだろう。ならばその事に全力を注がなければならないと、菜月は改めて決意を固めた。

 ともかく、用事を終えた二人は、早速シャルロッテの居場所を探る為にエミルフィアへ戻る馬車に乗る事にした。幸いにも、襲撃されている間も村の厩舎に置いていた馬車や馬、そしてそれを操る御者のモルテンも無事だった為、すぐに出発する事が出来た。


「もしかすると、行きで魔物に一体も遭遇しなかったのは、ラムル村を襲撃した人達が排除していたからかもしれませんね」


 とは、馬車馬を操りながらのモルテンの言葉である。

 最初の二日間は普通に幸運だったからかもしれないが、彼の言った通り村の周辺まで来て魔物を見なかったのは、村を襲撃する際、また撤退する際に邪魔をされないように、襲撃者達が魔物を排除していたのだろう。それが前兆だったと言われても、気付くのは流石に無理があるが。

 帰りの馬車は急いでいた為、モルテンに頼んで本来三日かかる道を二日で駆け抜けた。乗客を気にせずに馬の速度を上げて貰い、その上で更に風属性の魔法で追い風を起こしたり、土属性の魔法で荒い道を整えたりと、色々細工をして時間短縮を行った。それもそれで菜月の魔法訓練になったのは僥倖だっただろう。魔法を使う菜月と普段よりかなり速いスピードの馬を操るモルテンはものすごく疲れたが、お陰で一日分短縮出来たのだから文句は言えない。流石にモルテンには追加の報酬を幾らか払っておいたが。……と言っても、残金も少ないので少しだけだ。

 因みに行きと違って帰りでは魔物や獣に遭遇した。が、馬車の窓から杖を出した菜月が魔法で蹴散らしたので、殆ど止まる事は無かった。しかもドロップ品や魔石はノンストップで進む馬車から飛び降りた憂莉が拾い、そのまま走って追いついて跳び乗るなどという離れ業があった為、最低限の休憩の時以外本当に止まらなかったのである。

 そして、エミルフィアに着いたのは昼時だった。

 まず最初に東区にある冒険者協会に行ってレギオンモンキーの討伐依頼を達成した事を報告し、報酬として金貨三十枚の大金を受け取る。その次に今回の依頼の旅で手に入れた魔石やらドロップ品やらを換金してもらおうと思い、レギオンモンキーのぼっち一匹と集落の約九十匹分、そして帰りに遭遇した魔物の分も合わせて受付の人に渡した。


「……え。これ、本当にお二人で?」


「はい、そうですが。あれ、何か問題でもあったんですか?」


「いえ、問題って訳では……しかし、この数は……」


 たった二人、それも新人の冒険者がこれだけの魔石とドロップ品――しかもその殆どが平均レコード1450ptの魔物のもの――を数日の狩りで持って帰れば、驚かれるのも当然である。別段高難度のダンジョンにでも潜って来た訳でもないのでそれほど凄い事とは思えなかったのだが、普通の新人冒険者は魔物には挑まず平均レコード500pt辺りの獣、また強くても精々レコード1050pt程度のゴブリンを狙うようなので、どうやら新人が相手にするべきではない魔物を大量に狩ってきた菜月達は異常らしい。まぁ、過去そのような人達が一人もいなかったという訳でもないので、そこまで大事にはならなかったのだが。

 ともかく、量も量なので少々換金に時間はかかったが、きちんと全て金に変える事が出来た。合計は金貨四枚と銀貨四枚、日本円にして約二十二万円ほどである。レギオンモンキーの魔石は大体一つ銅貨三枚なので、半分ほどが魔石の代金だ。ドロップ品は、本来であればもっと値段が付く筈だったのだが、菜月の魔法でボロボロぐちゃぐちゃで駄目になっているものが多かった為にそこまで大金にならなかったのだ。……と言っても、数が多いので十分大金なのだが。

 報酬で金貨三十枚、換金で金貨四枚と銀貨四枚を受け取り、一気に大金を手に入れた訳だが、その金に喜んでいる暇も無い。

 そうして冒険者協会での用事を終えてから、急いで二人は魔道士ウィザードギルドを目指したのだった。



 報酬の金額の方が圧倒的に高いのは、実は緊急度が高くて近隣の村や領主が早く受けて貰いたかったと思っていたからです。

 因みにテニーの髪の色ですが、エミアリスみたいな綺麗な真っ赤ではなく、赤茶色です。燃える情熱の色じゃなくて錆の色なのは本人が一番気にしていたり。


 次回も読んで頂けると有り難いです。

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