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ヤンデレ後輩と異世界ライフを!  作者: 月代麻夜
第一章 始まりの異世界ライフ//第零階層世界編
31/84

転章一   いつか星空の約束を

 今回は短いです。

 永遠に続く美しい星空が、彼の前に広がっていた。

 視界を遮る雲は彼の足より下にある。自由な天を飛翔する生物はおらず、更に三つの太陽はここでは上がらない為、満点の星々をぼうっと眺める彼を邪魔するものは何もない。

 ルビーサファイアトパーズエメラルドダイヤモンド――様々な宝石がちりばめられていると、彼は白亜の壁に寄りかかりながらぼんやりと思っていた。


「――またここに居るのね、×××」


 歌うような澄んだ声が耳朶を打ち、彼は星空から視線を動かす。

 彼が視界に捉えたのは、青空のような真っ青の瞳と、この世のものとは思えないほど美麗で可憐な容姿を持つ少女。背丈は彼より小さく、一六〇センチくらいだろうか。

 長い金髪を風に揺らしながら優しげに微笑む彼女は、自然に彼の横に並び立つと、同じように白亜の壁に寄りかかった。再び星空に目を向けた彼と違い、彼女の視線は彼に向けられたままだったが、彼は気付かぬふりをする。

 やがて、幾ばくかの時が過ぎ、先に口を開いたのは彼の方だった。


「……何の用ですか、×××様」


 視線は向けぬまま、彼はただ一言そう問う。『様』と付けるわりに敬うような態度でないのはいつもの通りの為、少女はその事についてあれこれ言いはしない。むしろ、少し嬉しそうに顔を綻ばせている。

 そして彼女もまた、いつも通りの態度を見せる彼と同じように、いつもと同じ台詞せりふを返す。


「貴方に会いに来ただけよ」


 彼は横眼で彼女の顔を盗み見る。堂々と見るのは何となく恥ずかしく感じたからなのだが、ピタッと眼が合ってしまい、すぐに視線を逸らした。

 ほんのり顔を上気させる彼に、少女は思わず噴き出してしまう。

 すぐ隣に寄りかかっている為にその笑いが聞こえた彼は余計に顔を赤くする。


「……ちょ、なに笑ってるんですかっ」


「ふふっ、ごめんなさい。あまりにも貴方の反応が可愛くて、つい」


「可愛いってなんですか、可愛いって……もしかして、馬鹿にしてます?」


「いいえ、ただ率直な反応を言っただけよ」


「……そうですか。なら、正直に言う言葉は、時に人を傷つけるって事をよく覚えておいてください」


「努力するわ」


 まだ少し赤い顔の熱を感じながら、彼は再び星空に視線を戻した。

 横に並ぶ少女も煌めく星々に眼を向けている。

 少女は無限に広がる星の海に目を細めながら、ふと、呟くように言った。


「……貴方は、本当に人間みたいな反応をするのね」


 そんな事を言われ、彼は少しだけ視線を少女に向けた。

 その言い方だと、まるで彼が人間ではないみたいだが――しかし、自分が人間とは違うものだと、彼が一番知っていた。

 人間の姿形すがたかたちを取っているが、正確には生物ですらない。その肉体には血も流れ、首を切られればその肉体の活動が停止する事に変わりはないのだが、明確な『死』という概念が彼には無いのだ。

 四肢を切断されても、その魂に魔力があるのなら同じ肉体を創り出せる。

 魂を消し飛ばされても、そこに魔力があるのなら同じ魂を創り出せる。

 魔力という力が存在し続ける限り、『彼』という存在は絶対に消えない。それが彼だった。

 別にそれを不思議に思った事がなければ、これからも深く考える事はないだろうと、彼はこの星界で目覚めた時から自分の存在を当たり前の事だと認識していた。


「本当に、人間みたい」


 嬉しそうに、しかしどこか悲しそうに、少女は微笑む。

 彼にはその表情の意味が分からず、首を傾げる事しか出来なかった。


「俺が人間みたい、ですか? ×××様はいつもそう言ってますけど、どの辺がです? だいたい、×××様はほとんど人間と会って話した事無いのに、よくそう思いましたね」


 そう言う彼も人間と接触した事は殆どなかったので、説明されたところで理解出来るとは思っていない。しかし何故彼女がそう思ったのかには興味があったので質問を口にしたのだ。

 すると少女は眼を閉じ、慈しむような柔らかな声色で語り出す。


「そうね。……まず、貴方の反応がとても人間らしいわ。盗み見るように横眼で私の顔を見て、私と視線が合って恥ずかしいと感じて……そういうところよ。あと、――星空を綺麗だと思いながら見ているのも、ここだと貴方ぐらいじゃないかしら。皆、そういう感情がごっそり抜け落ちたみたいに何も感じないみたいだし。綺麗だと感じられる貴方は、やっぱり人間らしいわ」


「……そうですかね。よく、分かりませんけど」


「ええ、そうよ。貴方はとても人間らしい。それが私には嬉しいわ」


 少女が見せる笑顔は本当に嬉しそうで、彼は気恥ずかしそうに頬を掻く。やってからこれが人間らしい動作なのかと思ったが、彼にはあまり特別な事には思えなかった。

 だが少女はふふっと笑みを零して、「ほらね」と言ってくる。


「貴方は人間に似ている。……いいえ、もう殆ど人間かしら」


「そんな訳ないですよ。人間は、頭を吹き飛ばされて再生したりしません」


「貴方はするの?」


「するのを貴女は知ってるでしょう」


「そうだったわね」


 くすりと笑って、少女はそっと頭を彼の肩に乗せた。彼女の甘い香りが鼻孔をくすぐり、彼は温度が上昇して赤くなる頬を流れてくる風で冷やしながら星空を見詰めた。――視線を少女に向けたら駄目だと、実に人間の男らしい事を考えながら。

 また、幾ばくかの時間が流れる。

 優しく、ゆっくりと。

 ずっとそうしていたいと思えるような、幸せな時間が二人の間を過ぎてゆく。

 太陽の無い、月すら浮かばない瞬く無限の星の海に目を沈ませ、二人は互いの体温だけを感じる。

 どこからともなく流れる風が、ひんやりと頬を撫でた。

 身を寄せ合う二人の姿はまさに恋人のようで、――だが、彼らが結ばれるような事はない。

 彼らには、その概念が無い。

『愛』は存在するようで無く、従って『好き』という感情を彼らが持っているのかは彼ら自身も分かっていない。

 ただ彼らは、そうしていたいとどこかで感じていたから、そうしていた。

 ――やがて。


「……ねえ、×××」


 ぽつり、と。

 少女が彼の名を呼んだ。

 彼はやはり視線だけ向けるが、彼女は視線を合わせず、眼を閉じて彼の体温だけ感じるように身を寄せている。左半身に彼女の温もりが伝わって、彼は幸福感ともう一つの何かの感情を感じながら、噛み締めるように呼び返す。


「なんですか、×××様」


 ――しかし、一向に言葉は返ってこない。

 再び、彼らの間に静寂が下りて。

 ふふっと、幸せそうに笑みを零した少女が、それを破って言葉を続けた。


「――またここで、星を見ましょう」


 その言葉に、彼は眼を丸くした。

 ここで、彼以外に星を綺麗だと感じている者はいない。そう言ったのは彼女であり、つまりは彼女自身も綺麗だとは感じていないという事なのだが……しかし、彼女はまた見ようと言った。

 その言葉の想いを感じて、彼は口元を綻ばせる。

 そして――優しい、まるで愛する者へかけるような柔らかな声色で。


「――ええ。ぜひ、貴女と共に、もう一度」


 そう、答えた。



 ゆったり、ぼんやりと書くのは何か書き易くて良いです。……文章が単調になり易いのが悩みどころですが。

 番外編を途切れ途切れに入れると読み難いと思いますが、すみません。二話ずつ入れる予定でして……。次からの番外編では前書きにあらすじ入れようと思います。……忘れてなければ。

 プロットが仕上がったので、次回から第二章に入る予定です。

 次回も読んで頂けると有り難いです。

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