竜人界の異変
俺、アスタ、爺さんの一行はドンドン歩いた。まぁ、爺さんは俺のポケットの中に収まっているのだが。
すると、ある場所を通りがかった。
「ここ、懐かしいな……」
「何がっすか?」
「ここな……」
そう、俺たちがいる場所は俺にとって人生の転換地とも言える場所だった。
ここは、俺が不死になった場所で、アクアが連れ去られた場所でもあり、リーシャとであった場所でもある。
あの時は本当に大変だった。
一時は本気で死にたいと思ったし、その後もアクアを探すのに必死だった。
毎日毎日何かしら悩み事があって……リーシャにも迷惑かけっぱなしだったな……。
で、その話を二人にすると、
「ううう……大変だったんすね……っ、うっ……、リュート様……っ」
『ふぐっ……うっ……わ、儂の孫が……、そんな辛い目に遭ってたんか……。ううう……、なんで不甲斐ない爺ちゃんなんじゃ儂はぁ……』
アスタも爺さんも二人共反応が重すぎるだろ。
泣くなよ……。ガチ泣きじゃねえか。
もう昔の事だし、そんなに気にしてねえよ。
それに、悪いことばかりでも無かったしな。
「もう気にしてねえよ。昔のことだ。それに、今の俺も捨てたもんじゃ無いしな」
『孫ーッ!儂にすがりついてもええんじゃぞぉう!』
「はいはい、暑苦しいな……。そもそも縋り付けねえだろうが」
「リュート様ッ!どうか俺の胸を使って下さいっすぅ‼︎」
「うるせえな、引っ付くな。離れろ」
俺は暑苦しい二人を素っ気ない態度で横に押しやった。
暑いし。気持ち悪いし。
どうせならコレを嫁にやって欲しかった。
何が悲しくて祖父と部下にこんなことしてもらわねばならんのだ。
『何でかわいそうなんじゃ……儂の孫は……。おうおうおう……』
「おい、泣き止め。きめえよ」
「ネルヴァ様……っ、泣き過ぎっすよ……。うっうっ……」
「お前もしつこいな。いい加減泣き止め」
こいつら涙脆いな。
気持ちは嬉しいけどあんまりしつこいとうざいぞ。
と、その時、
ピクッと反応したアスタが不意に背後を手刀で薙いだ。
ザンッ!
そこには滅茶苦茶に切り刻まれた翼竜種の姿が。
「おお、翼竜種っすね。竜人界、近いっすよ……コレは」
手に付いた血を拭き取りながら嬉しそうなアスタ。
お前今無意識にぶっ殺しただろ。無意識にそこまでやるか。
頰にも少量の血液が付着しており、スプラッタ漫画のキャラみたいになってる。
「おい、顔の血、拭けよ」
「え、どこっすか?」
「右頬。目の下あたり」
「え、マジっすか?うわっ……結構付いてる……」
アスタが嫌悪感を丸出しにした表情で頰の血を拭き取る。
『のぉ、翼竜種が群れでこっち来たぞい』
は?
俺が振り向くとそこには翼竜種の大群が。
「うおう、多いな」
俺は少し尻込みしてしまったが、流石にアスタは冷静そのものだった。
「蹴散らしますか?」
「ああ、逃げても追ってくるだろうしな。何匹か消滅させれば逃げるだろ」
「所詮爬虫類ですし、分からないんじゃ無いっすか?」
「だとしたら面倒だな」
ある程度知性がある奴にしか通用しないもんな。
あいつらの脳みそなんて精々豆粒程度だろう。いや、流石にもうちょいあるか。
「まぁ、いいや。ブチのめすぞ」
「はい!」
俺たちは翼竜種の群れに向かって突撃した。
例によって爺さんは俺のポケットの中だ。
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俺たちは翼竜種の死体の山の前に座り込んでいた。
馬鹿みたいな数いた翼竜種だったが、数を減らしていくと逃げ出す個体が出てきて、更にそれが逃走を促進したのか、多くの個体が逃走して行った。
勿論俺たちはそれを放っておく。
別に奴らに怨みとか無いしな。
しかし、築いた死体の山は如何ともしがたい。
些か殺し過ぎたかもしれん。放っておいたらいつまでも追ってくるので、俺たちはおちおち夜も眠れない。
そのため、一応不可抗力ではあるのだが……。何だか目覚めが悪い。
翼竜種は不味くて食えたものでは無い上、寄生虫とかが多いので火葬することにした。
焼いて埋める。死体の問題はこれで万事解決。
「コイツら臭えな」
「まぁ、動物の死臭なんてこんなもんっすよ」
『儂が昔行った、妖精界の腐海の話ししたろうか?そりゃあ臭かったぞ?』
「いや、いいわ。腐海ってだけで違うやつ思い出しそうだから」
著作権に引っかかりそうなやつ思い出しそう。
変な形した飛行物体に変なフォームで乗り込む少女を思い出してしまった。肩には変な狐。
「いやぁ、ここまで来ればもう少しで竜人界っすよ!こんなに翼竜種湧いてますし」
相変わらずアスタは元気だ。
その底なしの体力はどこから来るんだ?まるで子供だな。
かく言う俺も全く疲れていないのだが。これも日々のトレーニングの賜物だな。
飽きっぽい俺が毎日筋トレを続けられたのは偏にこの世界での俺の体験が理由だな。
筋トレでもやっておかないと不安になるんだよなぁ……。
まぁ、筋トレなんかで神に勝てたら世話無いけどな。
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そうこうしている内に早くも竜人界の関所のあたりに到着した。
しかし、そこで俺たちは驚くべきものを見つけてしまった。
驚愕の表情で俺たちは固まった。
「なっ……。ど、どういう事だよ……?」
「コレは……一体何があったって言うんすか……?」
『なんじゃあ?コレは……』
しかし、そこに人は居なかった。人っ子ひとりい居なかった。
人どころか、動物の影すらなかった。
というか、そこには何もなかった。いや、見えなかったと言ったほうが正しい。
シャガルは。いや、シャガルだったその場所は……
真っ黒な何かに塗り潰されたように見えなくなっていた。
黒いドーム状の何かが、シャガルのあった場所を包み隠していた。
俺は目を見開き、呟いた。
「一体……ここで何があっだって言うんだ……?」
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