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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
六章 帰還編
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暇人の遊び

1日空きました。また明日からは毎日更新に戻ります


暇だ。

あー……暇だ。


俺は暇を持て余していた。


最近はずっと危険に身を置いていたからなぁ……。あのヒリヒリした感覚に慣れ過ぎてしまったのだろう……。

アクアの体も快調で、俺は本格的にやることが無いのだ。

そりゃあ、薪割りやら農作業やら筋トレやらやることなど幾らでもあるのだが、俺はトラブルの無い日常に慣れていないのだ。


しかし、皆は俺が大変だったのだろうと気遣ってくれているのか、俺に仕事が回ってこないのが現状だ。

体力が落ちてはことなので毎日筋トレに明け暮れている。

前世では暇があったらすぐに寝ていたというのに、人とは変わるものだ。


という訳で今日も日課の筋トレだ。

ダンベルなんて気の利いたものは無いので腹筋背筋腕立てが基本になる。


その時、


「おにーさーん、あーそーぼー」


後ろからやって来たカレンが俺の背中によじのぼる。


カレンは俺が腕立てをしていたらいつもやって来るのだ。

どうやら同じ年頃の子供が少ないこの村では毎日暇らしい。

まぁ、俺の筋トレが終わるまで結構行儀よく待っていてくれるから良いのだが。

最近は俺の背中のポジションがお気に入りらしく、筋トレ中に背中によじ登ったりするのだ。

なかなか良い運動になる。


「ねー、プリンバスターおしえてよー」

「ブレーンバスターな。あれは危ないから禁止。卍固めを教えてやるよ」

「まんじがため?」


俺は立ち上がって汗を拭いた。

俺の背中から転げ落ちたカレンが服をパンパンしながら問いかける。


「卍固めはな……痛い」

「ほんと⁉︎」


コラコラ、目を輝かせるな。危ない幼女だな。

この子は素直な良い子だが、大人をプロレス技の実験台にしそうで怖いな。

しかし、アギレラによると友達とプロレスごっこは絶対しないらしいのでその点は安心だな。

見ていると、一応カレンも分別はわきまえているらしく、俺やアギレラとしかプロレスごっこはしないことにしているらしい。

多分カレンの腕力ならフェリアなんかはひとたまりも無いだろうな。

フェリアは魔法と暗殺術には長けているが、筋力はそこまでだ。


「まずは俺がアギレラにやってみせるから。それを見て真似するんだぞ?」

「はーい!」


カレンと2人でやったら危ないし、アギレラを生贄に捧げよう。

あいつは身体も丈夫だし、多分大丈夫だ。

しかし……あいつはどうやってこんなガキにコブラツイスト教えたんだ?

実演したのか……?


---


俺はカレンを伴ってアギレラの元へと向かった。

案の定仕事中らしく、農作業に精を出している。


「よっ!アギレラ!」


俺は会釈しながら強化魔法で脚力を強化し、瞬時にアギレラの背後に回る。


「なっ、リュート⁉︎」


右足をアギレラの左足に絡ませながら左足を首に引っ掛ける。

更に、俺の左手をアギレラの右手に絡ませ、抱き抱えるように思いっ切り締め上げる。


「イデデデデデ!おいバカやめろ!痛ぇつってんだろコラ⁉︎」


これが卍固めだ。

この技は相手の肩周り、脇腹、首の辺りに多大な負担をかける技だ。

しかし、この技は相手の片腕がフリーな状態なのだ。

普通この状況から返されることなど絶対に無いのだが、獣人族の男に常識は通用しない。


アギレラは足を大きく動かし、俺の絡めていた右足を外した。

そして、空いている左手で首に極まっている左足を無理矢理引き剥がし、右手を大きく振って俺を地面に叩きつけた。


ダァァンッ!


「ぐふっ!」

「はぁっ……はぁっ……!このバカが……。何をしている……⁉︎」


卍固めから脱出するとは……この化け物め……。


「カレンに卍固め教えてたんだよ。でも、カレンに実演したら危ないからな。お前に犠牲になってもらうことにしたのだ……」

「したのだ……じゃねえよ⁉︎痛えじゃねえか!」

「はいはーいすいませーん、反省してまーす」

「このガキが……!」

「いつまでもガキ扱いしてくれるねぇ……。まぁ、良いけど」


正直ガキ扱いされても何も思わないな。

実際問題、年上キャラが多いのでイマイチ大人になった感じがしないのだ。

まぁ、前世ではアラサーだったからそうでも無いかな……?

俺ももうすぐ16だ。前世含めると43か……。俺も年取ったな……。

もう良い歳したおっさんだ。


「ねーねー、おにーさん?まんじがためやりたくてもてがとどかないよー」


俺が感傷に浸っていると、カレンが俺の服の袖をくいくいと引っ張ってきた。

どうやら、アギレラに技をかけようとしていたのだが、手足のリーチが短いのでうまく技をかけられないらしい。

偏にアギレラの身体が強靭にできているのもそれに拍車をかけている。

もう少し身体が柔らかければ良いのだが、アギレラは関節ではなく筋肉が硬いので上手く技が極まらないらしい。

よくそんな身体でコブラツイスト出来たな。

それじゃあ、リバースインディアンデスロックも難しいだろう。


「困ったな……。もう少し大きくならないとダメって事だな」


カレンは俺の言葉に不満そうに頬を膨らませた。


「やだやだ!なんでも良いからやりたい!」

「えー……。じゃあ、4の字固めでも良いか?」

「なぁに?それ」

「では説明しよう、4の字固めとは!」


俺はカレンにキメ顔で言って、アギレラの腕を取る。


「嫌な予感がするぞ……」

「よーし、まずはアギレラ、仰向けに倒れてくれ」

「こ、こうか……?」


ドサッと仰向けに倒れるアギレラ。


俺はアギレラの股の間に左足を入れ、左足を折り曲げ、俺の左足を支点にアギレラの両足で4の字を作る。

そして、折り曲げた左足を俺の余った右足でホールドし、アギレラの右足を両腕で締め上げる。

これで4の字固めの完成だ。別名、フィギュアフォーレッグロック。

ちなみに、この技は折り曲げた相手の左足と自分の両腕で相手の右足の骨にダメージを与える技なのだ。それはそれは痛い。


「イデデデデデ!タップタップ!」

「おお、すまん」


必死の形相でアギレラがタップしたので俺はさっと手を離す。

やり過ぎたら骨折するからな。いくらアギレラの体が頑丈でもずっとやってたら流石に折れる。


「どーだ、分かったか?」

「うん、わかった!やってみていーい?」

「おう、やってみろやってみろ」


ここで安請け合いしたのがいけなかった。


「じゃあおにーさん、そこにねころがって?」

「え、俺がやんの?」

「だっておとーさんねちゃってるもん」

「は⁉︎」


俺はバッ!と後ろを振り返った。アギレラは白目をむいて倒れていた。

時折黒目に戻って俺の顔を見るやいなやまた白目に戻ったりする。


この野郎……寝たふりしてやがる……。そんなに娘に関節技かけられるのが嫌か……。

しかし、ここで拒否るのもあまり良くない……。


「わかった」


俺は観念して仰向けに寝転がった。


「いくよーおにーさーん!」


ニンマリと笑いながらカレンは嬉々として俺の両足を極める。


そして、約10分後……。


俺は骨折した。

4の字固めは本当に足の骨が折れる技です。絶対に真似してはいけません

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