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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
六章 帰還編
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暇な魔王と旅立つ勇者


翌朝


「ふぁぁ……」


今日はいつもより少し早く目が覚めた。

昨日は疲れていたからかゆっくり寝られたから、今朝は結構体が軽いな。

俺はググッと伸びをして横に目をやる。

アクアが俺に背を向けてぐっすり寝ていた。小さく寝息を立てている。

昨日の夜はかなり寝苦しそうにしていたからそっとしておこう。朝飯の時にでも起こすか。

俺はそっと部屋を出てトントンと階段を降りる。


「あ、おはよ、リュート。昨日はよく眠れた?」


一階のキッチンにはリーシャがエプロン姿で立っていた。その新妻ポジションを俺の嫁に譲ってやってくれよ。

アクアは朝弱いからこの『朝起きたらエプロン姿で飯作ってくれてる』という光景を見せてくれた事がないのだ。

ちなみに「おかえり、ご飯にする?お風呂にする?それとも……わ・た・し?」はやった事ある。

まぁ、思考の余地なく『わ・た・し』を、選んだけど。


「まぁまぁだな。お前は相変わらず早起きだな」

「まあね。今からご飯作るから。待ってな」

「おう、シエルさんは?」

「寝てる。あの人いつも低血圧なんだよねー」


朝弱い奴多いな。

獣人族は大体朝弱いな。警戒心足りてないだろ。

しかし、切羽詰ってるときは何日も徹夜できるというのだから獣人族は恐ろしい。

それって体力に物を言わせてないか?


そんな事を考えているとキッチンからジュワジュワと音が聞こえてくる。


「って……お前何作ってんだ?」

「肉」

「お前朝っぱらから肉焼いてんのかよ……。アクアの飯は?」

「肉」

「お前……、妊婦はもうちょい消化の良いもん食うべきじゃねえのか?」


俺のイメージでは妊婦って野菜とかヨーグルト食ってるぞ。

この世界にヨーグルトあるのか知らねえけども。前世で母親が弟を妊娠している時そんな感じだった気がする。


「それは偏見よ、リュート。妊婦は栄養がいるから肉を食って力をつけるべきなのよ」

「え……それってマジなの?」

「食べ過ぎるのがダメなのよ。太るから。適量食ってて体に悪いもんなんかこの世に存在しないわ!」


なんか熱く語り始めた。面倒臭え。

日本には食品添加物というものがあってだな……?

まぁ、この世界にはないからいいけど。あったとしても少ないだろうし。


「あっそ、んじゃあ任せるわ」


俺は素っ気ない態度でヒラヒラと手を振った。

コイツ、料理に関しては妙に凝ってやがるから信頼して良いだろう。

まぁ、アクアもそんな朝っぱらからバカ食いしねえよな。


そんな風に考えていた時期が……僕にもありました。


---


「おかわり」

「まだ食うのか⁉︎」


少し遅めに起床したアクアは起き抜けにも関わらず肉食って野菜食って肉食って肉食ってた。

もっと野菜食えよ。ってか食い過ぎだろ。


「こら、アクア。食べすぎたら太るよ」

「……それは、困る……」

「ほら野菜食べな」

「……野菜はもういい」

「じゃあこっちの栄養ジュースをどうぞ〜」


野菜食うのを渋るアクアにリーシャが青汁みたいな飲み物を差し出した。

青汁みたいなとは言ったが、青汁みたいなのは色だけで、なんかもわもわとやばい湯気みたいなものが出てる。


「おい、それ毒なんじゃねえだろうな?」


見た目は青汁中身は毒物!みたいな感じがめっちゃ醸し出されている。

コップに口つけたら唇が溶けそう。


「失礼な!コレはねー、めっちゃ栄養があるんだ」

「何入ってんだ?それ」

「栄養豊富だよ?」

「いや、だから何入ってんだ?って」

「体に良いよ?」

「おい、マジでそれ毒だろ」


そんな俺を無視してリーシャが続ける。


「さぁ、野菜を食うか、これを飲むか。2つに1つよ!」


アクアは渋々といった様子で青汁に口をつけた。

何でだよ、よりリスクの少ない野菜の方にしとけよ。


「……う、うっ……!ううう……ん……ぐ……」


おい、呻いてるじゃねえか!

胎児に悪影響及ぼしてんじゃねえだろうな⁉︎


「よーし、飲み込んでー、そうそうー」

「おいバカやめろ。薬か、コレは」

「薬みたいなものね」

「おい、無理に飲まなくても……」

「……ううん……大丈夫……。この子のためにも頑張る……」


アクアは腹をさすりながら気丈に振舞っている。

顔色は悪いが。


やっぱ毒だろこれ。今後は禁止だ。


俺は心の中でそう決意した。


---


「リュートさん、私、竜人界に行きます。メイとルーナの様子を見に行きたいんです」


朝食を済ませてアクアを休ませた後、祐奈が家にやって来てそう言った。

ずっと行動を共にしてきた仲間なんだから心配だろう。

しかしなぁ……


「1人では危ないし……ついて行ってやりたいが……」

「良いんです。奥さん大切にして下さい」

「悪いな。でも1人ってのは……」

「じゃあ私がついて行ってあげるよ!」


そう言って手を挙げたのはリーシャだった。


「どうせ暇だし」

「それを言った途端に台無しだからな?」


俺はアクアがいるからここを離れることは余りしたく無い。


「でも、祐奈より弱い奴がついて行って意味あるのか?」

「ユウナちゃん1人で生きていけるの?三日ぐらいかかるけど……」

「う……」


おい女子高生。それはマズいだろ。1人で生活できないのかよ。


「メイちゃんに聞いたわよ。相当なダメ人間なんですってね」

「いや、でも……三日ぐらい……」

「三日ぐらいって……その考えはダメよ?」

「食べなくても大丈夫じゃないですか?」

「食べない気かよ!」


このダメ人間め!どんだけ周りに頼りきりだったんだお前は!


俺は嘆息して言った。


「ついて行ってやってくれ……」

「任せといて。私も足手まといにはならないから!」


この女は大雑把な性格の割に家事スキルも、戦闘能力も高い。

リーシャなら問題無いだろう。

カイル村はテンカ村よりも大きいのでルシファーがいてくれた方が安心だ。


「私の任務は勇者ではなく魔王様の護衛です。アクア様も合わせてお守りせねば」


そう言って突然背後に現れるルシファー。

怖いわ。


「アドバイスくれるのはいいとして、突然背後に現れるのは心臓に良く無いぞ」

「申し訳ありません。しかし、ここが平和そのものと言っても私が護衛の任を離れる訳にはいきません」

「分かってる。もしもの時は俺よりアクアを頼むぞ?」

「はっ!」


こういうところ融通の利くタイプで良かった。

結婚経験者はちゃんと俺の意思を汲んでくれる。

多分わかるのだろう。ルシファーには大切な人を失う悲しみが。

仕方が無いことだと割り切ることなど到底出来ない。

俺にとってはアクアを失うことなんて想像すらしたく無いことだ。


「ユーナちゃん!用意終わったよ!出発出発!」

「早いですね⁉︎でも、わたしも準備は出来てます!」

「お前らフットワーク軽いな!」


フットワーク軽い女子はすぐに家出するから気をつけろよ?リュックの中に生活必需品だけ詰め込んでどっか行くからな。

しかし、ウチの嫁もフットワーク軽いんだよなぁ……。


「じゃあ行ってくるね、リュート」

「向こうには何日くらいいる気だ?」

「んー、二週間で帰ってくる。行き帰り込みで二週間」

「分かった。それより遅くなるなら連絡をくれ。連絡がなかったら此方から連絡する。それでも出なかったら様子を見に行くから忘れるなよ?」


少し過保護かと思ったが、ローグが何をしてくるか分からない異常、用心に越したことは無い。

何が起こるかまったく予測がつかないのだから。


「分かってる分かってる。わたしはその手の約束は忘れないよ。安心して」

「よし、祐奈の健康は任せた」

「ん、任された」


俺は次は祐奈に向き直って行った。


「さて、忘れもんして無いか?」

「してませんね」

「ちゃんとリーシャの言うこと聞けよ?あと、歯は毎日磨けよ?」

「分かってますよ!」

「ハンカチとチリ紙持ったか?」

「オカンですか!」


祐奈は俺にツッコミを入れた後、リーシャを伴って走り出した。

しかし、1分も経たないうちに戻ってきた。


「どうかしたのか?」

「剣忘れました……」

「何故そんな大事なものを忘れるんだ……」


大丈夫かこの勇者。

ポンコツ過ぎない?

祐奈はメイに世話をしてもらっていた所為で生活力が全く養われていません。基本的に1人では生きていけません。

しかし、生命力は高いのでなかなか死にません。

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