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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
五章 ゲート編
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闇の住人


暗闇の世界に一筋の光が差した。

ローグは暗闇の真ん中にぼんやりと薄く光る場所へと向かった。


そこは現代のアパートの一室のような場所だった。簡素な部屋の中にはベッドと机が一つずつ。そして、部屋の中は滅茶苦茶に散らかっている。

ローグは数少ない足の踏み場を探しながら、そこに存在するベッドのふくらみに向かって声を掛けた。


「エレボス」


反応が無い。


「エレボスってば」


また無反応。

ローグは少し苛立ちながらベッドから布団を引き剥がし、中で寝ている男の耳元で叫んだ。


「エレボス!おはよー‼︎」

「んぁ、ん……ローグか……」


エレボスと呼ばれた男は気怠げな声でゆっくりと身を起こしながら答えた。

ローグが先ほど耳元で叫んだというのにどこ吹く風だ。

エレボスは眠そうに目を半分閉じながらボンヤリと座り込む。

先ほどまで寝ていたのだから当然だが、頭がボサボサだ。しかし、寝不足なのか、目の周りを酷いクマが覆っている。

エレボスは黒いボロボロの外套を布団のそばから引っ張り出しながら立ち上がった。


「ん、あぁ、怠い」

「あはは、久し振り。相変わらず酷いクマだねぇ」


出会い頭に発した「怠い」という発言を華麗にスルーし、ローグは機嫌よく挨拶した。


「ん、まぁ、久し振りだな……茶でも……ん、無いな。すまん」


エレボスはもてなそうと思って飲み物を探したがどこにも無かった。

多分部屋の中のどこかにあるのだろうが、起き抜けにそれを捜索する気力は無い。


「あはは、気にしないで気にしないで。大した用じゃないんだ」


ローグは笑いながらその場に座り込んだ。

エレボスはもてなす物どころか自分が殆ど持ち物の場所を把握していないことを思い出すと諦めたように寝床に戻った。


「君の顔が見たくなってさ。元気?」

「ん……、まぁまぁだ。で、何の用だ?」


エレボスは半眼でローグの顔を見つめた。

ローグが自分の顔を見るためだけにこんな陰気臭いところまで来るわけが無いと思ったからだ。


「あはは、バレバレか。実は君の様子を見に来たっていうのもあるんだけどもう一つ目的があってね」


ローグはあいかわらず人当たりのいい笑顔だ。

しかし、ローグはこう見えて内心全然笑ってないのをエレボスは知っている。


「前に頼んだ二人の事なんだけど。経過はどう?」

「ん、まぁ、楽しくやってるんじゃないか?」


エレボスは面倒臭げに答えた。


「それじゃあ困るよ……」


ローグは少し不機嫌になりながら言った。


「ん、そうだったか……。まぁ、ボチボチだ」

「君が直接殺ってくれれば良いだろう?」


ローグは少しイライラしながら髪の毛をいじっていた。

その後、ローグは踏んづけていた食べ物のカスを不快そうな顔をしてつまみ、放り投げた。


「ん、それは、面倒だな……。お前が、どうしてもというのならば、まぁ、仕方がないが」


エレボスは気怠げな、しかし、しっかりした声で答えた。

ローグはその答えに満足したようにフヨフヨと空中を漂い始めた。


「んん……、アンタ、それ好きだな。気持ち良いのか?」

「何ていうかまぁ、好きなんだ。エレボスもやってみなよ。っていうか、この部屋散らかり過ぎ」

「んー、俺はベッドの方が気持ち良いと思うが。あと、片付けるのが面倒なんだ」


そう言うとエレボスはベッドに寝そべって布団をかぶった。

エレボスは面倒臭がり屋な上、片付けは苦手なのだ。


「ちょ、働いてくれって頼んだばっかしじゃんかー」

「ん、その内な。今は眠い」

「じゃ、頼んだよ?」

「んん、任せておけ」


ローグは少し不満げだったが、布団に戻ったエレボスを一瞥すると、暗い闇の世界から光の差す表の世界へと戻って行った。

ローグがいなくなったことを確認すると、エレボスはもう一度眠るためにゴソゴソと布団の奥へと潜っていった。


「んん……、あ……」


なにやらエレボスの足に硬いものが当たった。

不審に思って探ってみると、布団の奥から飲み物を発見した。

いろんなところに物を置いて忘れてしまう癖をいち早く直さなければ生活がままならなくなってしまう。

取り敢えずこの飲み物は机の上に置いておこう。エレボスはそう思い、それを手に取った。

しかし、よく見たら飲めなさそうな色をしていたので見なかった事にして再度、眠りについた。


次に目が覚めたら、ローグに言われた通り、ちゃんと仕事をしよう。そう、思いながら。

今回の話は前回に混ぜるつもりだったのですが、中途半端な長さになったので分けました

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