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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
五章 ゲート編
70/220

アスタとベル


「も……もう、無理……です……はぁ……、は、もう……走れ、ない……」

「蹴散らせるか……?」


どれくらい走っただろうか。

背後のモンスター群はかなり数を減らしていた。俺たちを追いかけ回しながら共食いするとは器用な奴らだ。

モンスター達は当初の4分の1ほどに数を減らしていた。それでも結構な数ではあるが。ちなみに俺たちは何もしていない。全て共喰いで減っているのだ。


「「よし……、殺ろう」」


やるなら今しか無い。

これ以上逃げるのはスタミナ面の問題で不可能だ。これ以上スタミナを使ってしまうと戦えなくなる。

そして、これほど数が減ったら十分倒せる。

問題はただ一つ。

触りたく無いくらいにキモい事。

これはシンプルだが、大きな問題だ。

だが、俺も男だ。我慢せねば。


「『ブレイブフォース』!」

「『五重強化(ファイブブースト)』!」


俺たちはモンスター達を一瞬で蹴散らした。


---


グチャグチャの肉塊と化したモンスター達を見ながらボソリと祐奈が呟いた。


「お腹空きましたね」


ザザッ!


俺はドン引きした。

このグロテスクな死体を見て腹が減るとはコイツ……出来るッ……‼︎


「あ、いや、違うから!普通に走り回ったからお腹減ったってだけだから!」

「あ、そう……」


俺はジト目で答えた。

すると、祐奈の腹から『きゅるる〜』と音がした。アクアの腹の虫より行儀がいい。

そう言えば俺も少し腹が減ってきた。

しかし、さっきのサソリみたいな食えそうな生き物が周囲にいない。

こんなバカみたいに走り回る前に奴らを蹴散らしておけば良かった。今更後悔しても遅いが。


その時、祐奈の首元に一陣の刃が当てられていた。


「動くな……。女の首が惜しければな……」


一人の男が祐奈を人質にしていた。

俺の背後には女が一人、片手をこちらに突き出している。魔導士か?

こいつら何が目的なんだ?俺たち何も持ってないぞ……。


「アンタ達何者ですか……?あれほどの強さ……まさか、勇者……?」


身元がばれてますぜー、祐奈さーん。

こいつら何なんだ?勇者に恨みでもあるのか?


「ん……?待てよ……。その顔は……」


祐奈の首に刃を当てている男が俺の顔を見ながら驚愕の表情を浮かべた。


「バ、バゼル様⁉︎な、なんでこんな所に⁉︎」


バゼル?それって……俺の親父の名前じゃねえか。


「イヤ……違う……バゼル様に比べればまだ魔力が未熟だし……。でも、めっちゃ似てる……」

「バゼルなら俺の親父だけど」

「えええええええええ⁉︎」


目の前の男は白目をむきながら絶叫した。

俺の背後にいる女は無表情で直立不動だったが。


---


「申し訳ございませんでしたぁ‼︎」


二人は土下座していた。

男はデカイ声で謝罪しながら。女は無言で。

俺は親父と相当そっくりな見た目をしているらしい。

魔力の質ってやつは親から遺伝するらしく、なんだか分からんが取り敢えず俺が魔王だと分かったらしい。

ほんと都合よくできてるな。まさか、ローグが運命弄ってるのか?


「まさか、バゼル様のご子息に刃を向けるなんてっ……!言語道断の極み!こうなったら……潔く切腹しますっ……!」

「待て待て待て待て‼︎」


緑色の髪をした男は懐から小刀を取り出し自分の腹にあてがおうとした。

俺は面食らって急いでそれを止めた。


「取り敢えず、名前教えてくれるか?」

「は、俺はアスタっす。こっちはベル。ゲートに飲み込まれる前はベルとルシファーと3人で魔王軍の軍隊長などをやってたっす」


緑色の髪の男はアスタ、赤髪の女はベルと名乗った。

と言うか、ルシファーと同格なのか?この二人。そんなに強そうには見えないが……。

しかし、仲間がいるのは良かった……。不幸中の幸いだな。

しかし、完全に信用しても良いものか……?

祐奈は完全に警戒心を解いてしまっている。俺だけでも気を張っておくべきだろうか。

でも魔王軍の事を知ってるのなら信用できるかな……。


「ここからどうやって出るか分かるか?」

「分かっていたらとっくの昔に外に出てるっすよ〜」

「だよなぁ……」


長いことここに居るって事は脱出法が全く分からないということに他ならない。

つまり、詰みだ。

ここでの生活が長いのなら衣食住を確保する事はできるのだろう。見たところ二人とも健康状態も良さそうだし、服装もそこそこ清潔だ。川とかもあるんだろうか。

取り敢えず、脱出するまではここで生活することになるだろうし、先輩方に色々教われるっていうのは中々良い巡り合わせだったと言えるだろう。


と、その時。

『ぐぎゅるる〜』と祐奈の腹が音を立てた。さっきより可愛げが無くなっている。


「あ、あはは……お、お腹……空きません?」

「そうだな……」


実は俺も腹は減っていた。

でも、この空気どうするんだろう。フォローすべきなの?それともスルーすべきなの?


「あ!食料なら俺が持ってますよ!食べましょう食べましょう!丁度昼飯の時間ですし!」


アスタが無理に元気良く言った。

昼飯の時間だったのかよ。ゲートの中は基本的に薄暗いから昼夜の感覚が全くと言っていいほどに薄れていく。


「へー、で、何なんだ?飯って。サソリ?」

「いえ、ゲゼルマシュベルっす!」


なんかテラテラと緑色に怪しく光る触手が、タコのマリネみたいな感じでどーんと登場した。

食欲が一気に減衰した。

というかゲゼルマシュベルっていう名前が既に無理。

一体何なんだ?その名前。考えた奴誰だよ。本当無理、マジ無理。

俺と祐奈は割とガチで引いていた。


「ちょっと……コレは……」

「中々いけますよ?」


そう言いながらアスタはマリネ(らしきモノ)を口に入れた。

アスタは割と美味しそうな顔をして、もぎゅもぎゅと咀嚼する。


「うひぁぁぁっ!」


祐奈が悲鳴をあげる。

うん、気持ちは分かる。

ちなみに俺は必死で口を塞いでいたので声が漏れる事はなかったが、こればっかりは食いたくない。生物が食っていいものじゃないと思う(偏見)。

するとベルも何の躊躇も無しにマリネ(らしきモノ)を食べ始めた。

嫌がる祐奈にベルが言った。


「美味」

「うううううぅぅぅぅぅっ……」

「分かった。覚悟を決めよう」


祐奈はまだぐずっていたが、俺は覚悟を決めた。大体、食わなきゃ死ぬんだ。死ぬよりマシだ。

俺はゲゼルマシュベルの触手(イカのゲソに似てる)を一本手にとって匂いを嗅いだ。

凄い食べ物っぽい匂いがする。

俺は劇物のような刺激臭や生ゴミのような匂いを想像していただけに、少し拍子抜けした。

コレは……目を瞑ったら食えるぞ……。

俺はギュッと目を瞑り、一気に口の中に入れた。

しかし、緊張のあまり噛まずに飲み込んでしまった。喉に詰まりかけた上、味がわからなかった。


「リュート様!いい食べっぷりっすよ!」


アスタが囃し立てる。

祐奈も俺を見て意を決したように一本だけ口に入れた。

しかも、俺と違ってよく噛んでいる。


「うう……美味しい……。でもなんかフクザツ……」


ブニュグニュと祐奈の口から音が聞こえてくる。美味かったらしいが、あまりにもあんまりなビジュアルだからなぁ……コレは。


「お口に合ったなら良かったっす!まだまだあるからお腹一杯食って下さいね!」


アスタは元気良く言ったが、正直もうお腹一杯だった。別の意味で。

美味いのだが、お口には合わなさそうだ。

ゲゼルマシュベルって強そうな名前ですよね。でもゲゼルマシュベルはめっちゃ弱いっていう設定してにします。今考えました

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