圧倒的強者
ドゴォォッ‼︎
突然何かが崩れる音が城内に鳴り響いた。
「な、なんだ⁉︎何があったんだ⁉︎」
さっきまで酔ってたやつも一気に酔いを覚まし、戦闘態勢に入る。
すぐに、1人の兵が息を切らして部屋に入ってきた。
「報告します!城内に侵入者です!」
「何ィ⁉︎魔王城に侵入者だと⁉︎そんな馬鹿な事があるハズが……」
髭もじゃのおっさんがすかさず大斧をつかみながら言った。
「ドレイン、それについての話は後です。誰であろうと侵入者は速やかに排除します」
青髪巨乳のお姉さんがすぐに扉へ向かう。
「しかし、アリス様!その侵入者なのですが……」
「誰だというのです?」
「ゆ……勇者です……」
「「何⁉︎勇者⁉︎」」
なんと勇者が魔王城に侵入してきたらしい。
え……勇者って確か魔王クラスの強さなんだよな……?え、早くね?こんな序盤で出てきて良い奴じゃねぇだろ?
俺は軽くパニックになっていた。
相手は勇者だ。どう考えても俺を殺しに来たとしか思えない。
しかも、今の俺じゃあどう考えても勇者に勝てない。
つまり殺される。
『殺される』そう考えたら途端に腰が抜けてしまった。
「エルザ……ギース……」
「大丈夫です。私とギース様が絶対お守りしますから」
「その通りです、リュート様」
それでも俺は不安だった。何か良くないことが起こりそうな気がした。
そうこうしてる間にも下層から地響きが聞こえてくる。勇者は着々と魔王城を破壊しているらしい。
「七大罪総出で迎え撃ちます!エルザ!あなたにはリュート様の護衛をお願いします!ギース!念の為あなたも同行して下さい!リュート様を絶対にお守りするのですよ!」
アリアが迅速に指示を出す。
「分かった、リュート様こちらへ」
「で、でも……」
「私達なら大丈夫です。リュート様、絶対に死んではなりませんよ。貴方は私達の希望なのですから」
「アリス……」
エルザとギースに手を取られ俺は逃げ出した。
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「リュート様、どうかご無事で……」
遠くを見つめながらアリスが独りごちた。
「ふっ……勇者……か……」
「どうしたアリス。お主も腰が引けたか?」
「茶化さないで下さい、ドレイン。私は嬉しいのですよ。直接の仇では有りませんが、この手で勇者を殺せる事が」
そう言ってアリスは薄く笑った。
「シャルバとアスフォルはまだですか?」
「もうじき来るじゃろ」
「へいへい、只今」
軽薄そうな表情を浮かべたヒョロ長い男が大鎌を携えて入ってきた。
「シャルバ」
「まさか、勇者が魔王城に侵入ってくるとはなぁ……」
「気を抜かないで下さいね。確実に奴の息の根を止めますので。」
「簡単に言ってくれるねぇ……」
「ところでアスフォルは遅いですね」
アリスがイライラした様子で髪をいじる。
「奴は最上階に居るから情報の伝達が遅れたのではないか?」
次の瞬間。
ドゴッ‼︎
天井から青い髪の若い男が入ってきた。
無残にも破壊された天井から陽光が降り注ぐ。どうやら最上階から全ての天井を破壊してきたらしい。
「遅くなって申し訳有りません。アスフォル・ベルゼブブ、只今参上致しました」
「お主もっと普通に登場出来んのか?」
「相変わらず効率優先ってかぁ?」
ドレインとシャルバは呆れ顔で突っ込んだ。
「遅いですよ、アスフォル。まぁコレで、今のところは全員揃いましたね。さて、行きましょうか」
アリスが振り返った瞬間、部屋のドアが切り裂かれ、吹き飛んだ。
ドガァッ‼︎
1人の金髪の男がゆっくりと歩いてくる。
その鎧を装備した細身の体は端々から油断ならないオーラの様なものを発している。
「勇者……」
「貴様らが親玉か……?いや、違うな……」
勇者は大剣を携え、ゆっくりと歩いてくる。
隙がない。
いや、構えてないのだから隙だらけともいえるが、にもかかわらず4人は攻撃行動に移れずにいた。
「魔王はどこだ」
「言う訳がないでしょう」
「そうか……なら、死ね」
ゴオッ‼︎
一瞬で間合いを詰めた勇者が横薙ぎに剣を振り抜こうとした。
ガギィンッ‼︎
「うおおおぉぉっ!」
剣を受け止めたドレインが押し返す。
「はあっ!」
「うおぉぉっ!」
アスフォルとドレインが同時に勇者に突っ込む。
「このゴミ共がッ!」
勇者は二人の剣戟を弾き、すかさず距離をとった。
見た目はどう考えてもドレインの方が強そうなのだが、勇者の説明のつかない力は体格さを補って余りある。
「『渦巻水流』‼︎」
アリスの魔法がすぐさま勇者包んだ。
「感電しなぁっ!『落雷』!」
「ぐあぁぁぁ!」
シャルバがアリスと連携し、勇者の全身に強力な電撃が走る。
「く……糞がぁっ!」
だが、まだ、致命打ではない。
勇者の斬撃が電撃をかき消しなごらアリスとアスフォルを吹き飛ばした。
「まだワシがおるぞ!」
「鈍間が!舐めるなッ‼︎」
バキッ‼︎
勇者の剣がドレインの大斧を粉々にした。
ドスッ‼︎
勇者の剣がドレインの腹部を貫いた。
「グォオオォッ‼︎」
ドレインがその場に倒れ伏した。
「このワシがこれしきの傷で……」
「聖剣で腹を貫かれてまだ死なんとは……タフな奴だ……すぐに地獄に送ってやる‼︎」
勇者が剣をゆっくりと振り上げた。
キィンッ!
「言っとくが、4対1だって事を忘れんじゃねぇぜぇ?」
薄笑いを浮かべながらシャルバが勇者に向かって大鎌を振り下ろす。
「『雷鎌』!」
「雑魚がッ‼︎」
光を帯びた勇者の剣がシャルバを吹き飛ばした。
「がはっ!」
ゆっくりと剣を構えながら、勇者は絶望を与えるように言った。
「何か勘違いしているようだな。まさか、俺とお前達が対等だとでも思っていたのか?」
勇者の剣がさらに光り始める。
「これから始まるのは戦闘じゃない。ただの一方的な殺戮なんだよ……」
勇者の周囲に光のオーラのようなものが溢れ出す。
「其の剣は悪を滅さんが為……神の奇跡を我に与え給へ……『ブレイブフォース』!」
次の瞬間。
勇者の剣が容赦なく4人の身体を切り裂いた。
戦闘シーン書くの難しい……