百鬼夜行
昨日からTwitterを始めました。SNSって便利ですね
「まず、ここからどうやって出るんだ?」
俺たちはサソリを食って腹ごしらえをした後、やる事もなく、取り敢えず歩きながら今後の展望を話し合っていた。
「さぁ……」
「だよなぁ……」
俺たちはゲートの事なんて殆ど知らないのだ。脱出法なんて分かるわけが無い。
開始直後に即詰みのゲームみたいだ。攻略法が全くわからん。
「あれ……何だろ……」
その時、祐奈が何かを見つけたらしく、立ち上がった。
「どうした?」
「あそこから光が漏れてる……」
祐奈が指差した場所に目を凝らしてみると、何と空中にヒビが入っており、そこから白い光が射していたのだ。
「もしかして、出口か⁉︎」
「そうかも!」
俺たちは急いでその場所へと向かった。
が、
「ち、小っせえ……」
「そんな……」
あまりにも小さすぎてとてもじゃないが通れる大きさじゃなかった。
指がギリギリ入る位だ。
何だこの期待を裏切られた感。
そうこうしているうちにその亀裂は少しづつ閉じていって、最終的には跡形もなく消え去ってしまった。
するとすぐ近くにピシッと音を立ててまた小さな穴が空いた。しかし、人が通れるような大きさでは無かった。
取り敢えず、穴があることがわかっただけでも良しとしよう。
俺たちが通れるくらいの穴を見つけることが出来れば、ゲートの外側に帰れるって事だしな。
「なんか、期待外れでしたね……」
「まぁ、でかい穴が見つかる事を期待するしか無いな」
自分の力でどうにもならないというのがこんなにももどかしいとは思っていなかった。
こればかりは力ではどうしようもない。
ドラゴ○ボールのゴテ○クスみたいに、力で空間を破壊出来れば話は別なのだが……。
「ドラゴ○ボールのゴテ○クスみたいに空間割れませんかね?」
「同じ事考えてんじゃねえよ」
びっくりするわ。ジェネレーションギャップとか無いのかよ。
「ちょっとやってみます。ハァァァァ‼︎」
「えええ、やってみんの⁉︎」
そう言うと祐奈は全身から神聖力をほとしばらせる。
周囲の地面が捲れ上がり、風が吹き荒れる。本当に天変地異を起こす勢いだ。
だが、空間にヒビが入る気配すら見せない。
「リュートさんも手伝って!はい!ハァァァァ‼︎」
「お、おう……ハァァァァ‼︎」
何だか馬鹿みてえだな。
いい歳して二人揃って何してるんだか。
俺は見た目こそ若いが、かれこれ40年も生きているのだ。祐奈は今年で23歳らしいし。
周囲には誰もいない孤立した場所で一組の男女が「ハァァァァ‼︎」って叫んでる図。
異様な光景だな。
「お、おい、何も起こらんぞ」
「はぁ、はぁ、そ、そのようですね……」
結果はただ単に疲労困憊しただけだった。
骨折り損のくたびれもうけというやつである。
俺たちは疲れ果てて地面に横たわった。
地面は砂というか土というか……説明し辛い物質でできていた。
何だこれ?コンクリでも無いし……ところどころぶよぶよしてるし……かと言って踏みしめたらしっかりしてるし……。
まぁ、考えるだけ無駄か。
すると遠くの方からドドドドド……‼︎という地響きのような音が聞こえてきた。
「何だ?」
「何でしょう……」
俺たちは寝転がったまま、首だけもたげて様子を見た。
すると俺よりも視力の良い祐奈が血相変えて立ち上がった。
「リュートさん!な、なんか来る!」
「何ぃ⁉︎」
俺も立ち上がって目をこらす。
なんと、視線の先には何だか名状しがたい生き物が大挙して押し寄せてきていた。
クトゥルフ神話とかで見るような全身触手まみれの生き物とかもいる。物凄いSAN値下がりそう。
「ちょ……どうします?戦う?」
「いや……」
どう考えても倒し切れる物量じゃ無い。
それに、ちょっと触りたくない。
「逃げるぞっ‼︎」
「了解っ!」
俺たちは一目散に逆方向に向かってダッシュした。
俺たちは魔王と勇者だ。それはそれは速く走れる。
しかし、後ろから迫ってくる奴の見た目がマジでヤバイ。SAN値がゴリゴリ削れていく見た目をしている。
モザイクかかっていても不思議じゃ無いくらいにグロテスクな見た目をしたやつもいる。
祐奈は白目剥いて悲鳴を上げながら走っている。さっき戦う事を選択しようとしていたやつと同一人物とは到底思えない絶叫っぷりだ。
かく言う俺も、もう後ろなんて振り向きたく無い。
しかし、走っても走っても、どこまでも追いかけてくる。文字通り地の果てまで追いかけてくる勢いだ。
本気で命の危険を感じる。精神的に。
「ちょ……はぁ……ゲートの、中の、生き物……はぁ……グロく、無い……?」
「めっちゃグロい……。はぁ……ってか、何で、あんなに……はぁ……大挙して、押し掛けて、来るんだ……?」
正直言って生き物というよりも異形っていう方が正しいだろ。もしくはモンスター。
俺たちは普段ならなんて事無い距離しか走っていないにも関わらずかなり息が上がっていた。恐怖で心拍数が上昇しているのだろう。
身体への負担が普段よりも重い気がする。
「私達が……はぁ……『ハァァァァ‼︎』って、やったから、ですかね……?」
「多分、それ、だ……!」
俺たちの放出したエネルギーに釣られたのだろう。
しかし、この世界の生き物はどうやって生活しているんだ……?
そう思って後ろを振り向いたのがいけなかった。
「数……減ってません……?」
祐奈がそう言ったのだ。
そう言えば減っているような……。
そう思って後方を注視してみるとなんとそこには共食いするモンスター達の姿が。
「きゃあぁぁぁぁ⁉︎」
「うおわあぁぁぁ⁉︎」
俺達は思わず叫び声をあげた。
それほどまでにはグロい光景だった。
テレビのホラー企画であったとしても絶対に見たく無い。即座にチャンネルを回す。
モンスターが一口咀嚼するたびに緑色の斑点がテラテラと光る触手が『ブチャグチュッ!』という音を立てながら千切れ飛んでいくのだ。
そしてモンスターの口からは紫色や青色などの生物の体から出てはいけない色の血液が滴り落ちる。
心臓の弱い奴なら軽く死ぬ。
そしてアレは捕まった時の俺たちの姿でもあるのだ。
「「無理無理無理無理‼︎」」
俺たちは必死で逃げた。逃げ続けた。
俺たちの後ろをひたすら追いかけてくるモンスター達の姿はまるで百鬼夜行のようだった。
この二人は何でこんなに呑気なんでしょう。私にもよく分かりません