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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
四章 竜人界編
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VS勇者


「何で……君が……?」


俺は目の前の出来事が信じられなかった。

何故あの子がこの世界に居るんだ……?

しかも、目の前の少女からは魔力ではなく神聖力を感じる……。

何故だ……?

しかし、神聖力を持つ人間なんてこの世界にはたった一人しか存在しない。

この少女は……勇者だ。

俺はそれが直感で分かっていたのかもしれない。


「リュート!大丈夫か⁉︎」


後ろからジルとリーシャとアクアが走ってきた。騒ぎを聞きつけて駆けつけてきたのだろう。


「ああ、大丈夫だ……今の所な……」


俺は前回戦った勇者の事を思い出していた。


『俺の名はアレックス・ブラック……生まれはアメリカだ……』


まさか……勇者は全員地球出身者なのか⁉︎

まだ二人しか勇者と遭遇していない以上確証は無いが……。

取り敢えず、この子から情報を聞き出さなければ……。


「死ね!魔王!」

「くっ!」


ドゴオオッ!


少女の剣が轟音と共に俺の足元の地面をえぐる。


「くっ!」


ジルが応戦しようと剣を構えた。


「待て!俺がやる。あの子は一応……知り合いみたいなもんなんだ。手を出さないでくれ……」

「む、分かった……だが、やられそうになったら流石に自己判断で介入するぞ。いいな?」

「ああ、恩にきる」


それだけ言うとジルは引き下がってくれた。物分かりのいい奴で助かるぜ。


「はああっ!」

「くっそ!」


そうしている内にも少女は俺に向かって無慈悲に剣を振り下ろしてくる。

恐ろしいまでの威力だ。


「待ってくれ!話を聞いてくれ!」

「うるさい魔王!私はあんたを倒す!」


これは、冷静にお話できる雰囲気じゃねえな……。

そりゃそうか……俺はあの時とは、見た目も声も違うんだ。同一人物であるという証拠が無い。

しかし、この世界の人間じゃ無いとしたら、何故俺を殺そうとする?

何かメリットがあると考えたほうがいいな。俺を殺すとこの子に何かしらのメリットがあるんだ……。

しかし、元々日本人のこの少女が殺人を正当化できるほどの理由があるのか……?

いや、俺は魔王だ。人間じゃ無い。それなら良心の呵責も無いのか……?

それに、まだ人違いであるという、限りなく細い線が一応存在する。


だが、それも話をしなければ始まらない。


俺は勇者と戦った経験がある。

『ソウルイーター』を使えば勇者は無力化出来る!


「はぁっ!」


少女は裂帛の気合いと共に俺に突っ込んでくる。流石のスピードだ、とてもじゃないが、強化魔法無しで対応できるスピードじゃない。


「喰らい尽くせ、『ソウルイーター』!」


『ソウルイーター』はあらゆる力を喰らう。それは神聖力も例外では無い。

俺は強化魔法を使った身体能力で少女の剣を掴み、力を奪い取った。


「っ⁉︎」


少女は驚愕の表情を顔に浮かべた。

が、次の瞬間、すぐに表情を引き締め、ボロボロになった剣を手放して俺の腹部に鋭い一撃をぶち込んだ。


「ぐあっ!な、殴って……?」


俺は少女に殴り飛ばされ、向かいの露店に突っ込んだ。

店主がいなくて助かったぜ……。

しかし、なぜだ……得物を破壊したら戦闘能力を無力化出来ると言うわけでは無いらしいな。

それにしてもなんて重い一撃だ。あの子……相当に強い……。


「け、剣が……。アンタ、もう絶対許さないからね……」


少女はボロボロになった剣を横目に見ながら、呟いた。


「話が通じそうな空気じゃ無いな……」


俺は腹を抑えながら立ち上がった。

後ろをチラリと伺ったが、ジル達は微動だにせずに傍観を決め込んでくれている。

大丈夫だ……この問題は俺が解決しなければならないんだ……。


「剣が無くてもそこまで強いとは……正直、恐れ入った……」

「私は3年前まで剣なんて握ったこと無かったからね……。こっちの方が得意なのよ……」

「成る程……」


ドッ!


少女は驚くべきスピードで俺に突っ込んでくる。


「『三重強化(トリプルブースト)』!」


俺は身体強化を使い応戦する。

この子にはあまり危害を加えたく無い……。だが、無傷で無力化するにはこの子は強過ぎる……。さて、どうしたものか……。

俺は少女の攻撃をいなしながら考えた。たが、良い案が全く思い浮かばない。


「はぁあぁ!」

「うぐおっ!」


また一撃貰ってしまった……。流石に手を抜いてちゃ勝てないか……?


その時、少女は地面から火かき棒を拾い上げた。すぐ近くにある鍛冶屋の物だろう。俺たちの戦闘でここまで飛んできたのか?


「『ブレイブフォース』!」

「何っ⁉︎」


少女は金色に輝く火かき棒を手に、俺に向かって突っ込んできた。

まさか、あの『ブレイブフォース』ってやつ、得物だったら何でも良いのか⁉︎

何てチート性能だよ……。


「くっ!『ソウルイーター』!」


俺は間一髪のところで火かき棒の攻撃をかわし、神聖力を奪い取る。

しかし、その瞬間に少女は火かき棒から手を離し、地面から瓦礫を拾い上げた。

おいおい、まさかとは思うが……。


「『ブレイブフォース』!」


少女はそう叫びながら瓦礫を俺に投げつけた。

例に漏れず、勇者の神聖力を纏っている。


「本当に何でもありかよっ!」


俺の反射神経が追いつかず、岩は俺の耳の横あたりをかすめて彼方へと飛んでいった。

ふと目をやると目の前から少女が消えていた。


「まさかっ……!」


俺は急いで周囲の神聖力を探った。


「遅いよ」

「リュート!上だ!」


上っ⁉︎


ドゴオオッ!


「ぐおおおおっ!」


上空からの少女の一撃が俺を襲った。

ジルの忠告のおかげでなんとか間一髪でガード出来たが……。

俺の腕は爛れて使い物にならなくなってしまった……しかも、再生が遅い。

勇者の神聖力は俺の再生能力を遅らせることが出来るらしい。

しかも、ご丁寧に何処かから拾って来たのか、神聖力を纏った鉄パイプを握り締めている。

これは非常にマズイ事態だ……。

何で俺は昔命を懸けて助けた女の子に今殺されかけてるんだ?

全く、訳がわからないよ……。


「『浮遊魔法(フロート)』」


少女が浮遊魔法で周囲の瓦礫を空中に浮かせた。勇者って本当に何でもありだな……。

しかし、現在の状況はかなりヤバイ。

俺の予想が正しければ、これはマジで殺されるぞ……。

だが、さっきから身体が思うように動かない。一体、何故だ……?


「まずいっ!」


ジルが竜化してやってくるのが見えたが、遅い……。


「身体が上手いこと動かないでしょ?魔族は神聖力を吸い過ぎたら身体の機能を一時的に損なうのよ。覚悟しなさい……『ブレイブフォース』!」


周囲の大量の瓦礫が光り輝きながら俺へと迫ってきた。

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