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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
四章 竜人界編
52/220

三年後の勇者


---勇者side---


三年経って、祐奈は竜人界に入っていた。

現在の位置は妖精界と竜人界の界境近くの町、ゼガリオ。


祐奈は21歳になっていた。

といっても成長期は終わっていたので、外見は殆ど変わっていない。

元々勇者なので成長出来ないほどに高水準な戦闘能力を持っている上、20歳を超えると落ち着くかと思っていた性格も変わっていないので、殆どただ単に歳をとっただけである。


ルーナも同じく殆ど変わっていない。

21歳になってエルフとしては成人したのだが、歳をとる速度が人間の半分なエルフなのでそこまで大きく成長していない。見た目はまだ10歳児のままだ。微妙に背が伸びた程度だ。


対して大きく変わったのがメイである。

メイは誕生日が割と最近だったので、16歳になっていた。

メイは身長も結構伸び、胸がかなり大きくなっていた。メイは3年間で戦闘面も研鑽を積み、祐奈には及ばないが、高い戦闘能力を身につけていた。

獣人族は比較的早くに成熟する上に、長寿な種族なので、外見はこのままで歳をとると思われる。


その日は先程狩った翼竜種(ワイバーン)を焼き鳥のようにして食べていた。

しかし、翼竜種(ワイバーン)は爬虫類に近い生き物なので端的に言うと祐奈の口には合わなかった。

流石にこの三年間でこの世界の食べ物の味には慣れたが、好き嫌いが変わるわけも無い。


「まっずい」

「そうかなぁ?」

「肉は嫌なんだけどなー」


3人は思い思いに感想を述べた。

ルーナは相変わらず菜食主義者(ベジタリアン)なので手をつけていないが。

メイは特に好き嫌いが殆どない。というか無理矢理無くしたというのが正しい。

旅をする以上、好き嫌いなんて言ってられないからである。

というか食料の手に入りにくい状況なら「それは食べ物なのか?」というものですら食べる。

良くも悪くも真面目なのだ。

それに対して不真面目なのが祐奈である。

元の世界では好き嫌いは少ない方だったが、この世界の食べ物は日本人の口に合わないものが多いのだ。それは仕方がない。

祐奈は食わず嫌いをすることは無かったが、メイと違って三年間で一つも嫌いなものを克服していない。

き位なものを無理やり食べると気分が悪くなるので戦闘面に支障が出るとか何とか適当なことを言ってメイを誤魔化しているのだ。

毎日戦闘の鍛錬をしているメイとルーナを横で見ながら甘いものを食べるような勇者なのだ。


祐奈は元々高い戦闘能力を有する勇者なので鍛錬を積む必要はあまり無いのだが。

それでもこの三年間で場数を踏んだ3人はメキメキと実力をつけて行ったのだった。


翼竜種(ワイバーン)に飽きた祐奈は森の中から豚型の魔獣を見つけてきて炎魔法でサッと焼いて食べ始めた。

ルーナの為にフルーツも見つけてきて、ルーナは今それを食べている。

メイは残飯処理班として翼竜種(ワイバーン)を齧っている。


「メイも豚食べない?」

翼竜種(ワイバーン)が残っちゃうからいいよ」

「そっか、ごめんね?」

「ううん、気にしないで、お姉ちゃん」

「メイちゃんもこれ食べない?美味しいよ?」


そう言ってルーナがメイにフルーツを差し出す。


「うん、後で食べるから置いといてくれる?」


メイは責任感が強く、生き物の命を大切にする女の子なのだ。「殺したら食う」という野生動物の様なポリシーを持っている。

翼竜種(ワイバーン)は保存があまりきかないので今食べきるしかないのだ。

結局メイは翼竜種(ワイバーン)を完食した。

祐奈一人で豚を食べきるのは流石に無理だったので豚肉は保存食にする事にした。

しかし、豚もそこまで保存がきくものではない。早く食べなければ。

3人は立ち上がり、更に先を目指し歩き始めた。目指すは魔界の魔王城だ。


少し歩いたところで盗賊に出くわした。

正確には盗賊と、盗賊に襲われている商人に出くわした。


「盗賊なんて久しぶりに見たねー」

「そうだね、お姉ちゃん」

「ルーナが一撃で捻り潰してあげるよ!」

「無邪気に恐ろしいな、ルーナは……」


盗賊なんて恐れるに足らず。

こちらの戦力は、常軌を逸した戦闘能力を誇る勇者、女性とはいえ成熟した獣人種、そして大人のエルフだ。その辺の盗賊に負ける道理はない。


「へへへ、上玉じゃねえか……楽しませてもらおうぜえ……」


下卑た笑を浮かべながら盗賊は祐奈たちへとじりじりと近づく。

既に数分後に祐奈達にあんなことやこんなことをしている妄想を膨らませているらしい。取らぬ狸の皮算用というやつである。


「『電弾(ブリッツボール)』!」


突然、何の前触れもなくルーナは途轍も無い大きさの電撃の弾丸で盗賊を一撃の元に吹き飛ばした。

あまりの速度で飛んで行ったため、消し飛んだのかと錯覚する程である。


「ふふん、ぬるいね」

「あまりにムゴい」

「ていうか、さっきの魔法、初級魔法にしては大きかったね」


メイは冷静に言った。

先程ルーナが放った魔法は6級雷属性魔法の『電弾(ブリッツボール)』だ。

普通はあれ程の規模の魔法では無いはずなのだが。


「何でそんな大きさなの?」


祐奈がそう聞くと、ルーナが得意げに答える。


「魔法の規模は込める魔力によって変わるからね。術の難しさって言うのは威力の大きさじゃなくて、術式の組み難さの事をいうんだよ」

「つまりどういうこと?」

「つまり、魔力をたくさん持っている人の初級魔法は魔力をあんまり持ってない人の上級魔法より強いってこと!」

「それって才能がモノを言うってことでok?」

「その通り。才能が努力を捻りつぶす世知辛い世界なんだよ!魔法って!」


祐奈は勇者としてある程度の魔法は使えるが、流石に魔法特化している様子のルーナには及ばない様だ。

才能が全てって……微妙な気分にさせてくれる言葉だな。

そんな事を考えながら、祐奈は苦笑いをしていた。


「魔導士なんて一気に近づいて八つ裂きに出来るし」


魔法を殆ど使えないメイが僻んだように言った。


「あはは、メイも怖いこと言わないの」


三年間の旅で思考が物騒になっている二人の従者に元日本人としては戦慄を隠しえない。


勇者パーティは美少女3人の集まりだったのでよく馬鹿な男に狙われたりしたものだった。普通の人に比べると次元の違う強さの祐奈が居るので危険はないとはいえ、やはり神経過敏にもなろうものだ。


勇者が魔王と出会う日は近い。

少し短めです

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