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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
四章 竜人界編
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二人の誕生日


結局あのあとも屋敷の中を探し回ったが、アクアは見つからなかった。

俺は少し落ち込みながら家でリーシャの帰りを待っていた。


「ただいま〜」


リーシャが帰ってきた。

両手一杯に食材やら雑貨やらを抱えている。


「おいおい、どんだけ買ってきたんだよ。片方持ってやるから貸せよ」

「ごめんごめん」


そう言いながらリーシャは俺に雑貨を手渡してきた。


「今からご飯作るから、それはそこら辺に置いといてくれる?」


そう言ってリーシャはキッチンの方へ向かった。

何だか俺の好きな肉類が多い気がする。どうかしたのだろうか。


「でもどうしたんだ?こんな豪華な食材買ってきて……」


そう言ったらリーシャは俺を振り返りながら頬を膨らませた。


「もう、忘れてるし。今日はリュートの14歳の誕生日でしょ?」

「あ、そうか……」


忘れてた。今日は色々あったからなぁ……。

そういえばアクアは自分の誕生日が分からないと言っていたから俺と同じにしたんだっけか……。じゃあ、あいつも今日が誕生日だな……。


「そうだ、リュート?」


そんな事を考えていたらエプロン姿のリーシャが俺を呼んだ。


「なんだよ?」

「はい、コレ。誕生日プレゼント」


そう言ってリーシャは俺にペンダントを渡した。緑色の魔石が埋め込まれている。

昔、エルザに貰ったやつと似ているな。アレは指輪だったけど。


「な、お、お前、コレいくらしたんだよ?高くついただろ」

「もう、素直にありがとうって言えないの?」

「あ、いや、その……あ、ありがとう……」


俺は照れくさくなりながらもリーシャに礼を言った。

誕生日プレゼントなんて久し振りに貰った気がする。まぁ、リーシャには去年も一昨年も貰ったんだが。


ちなみにリーシャの誕生日は俺より前なのでちょっと前にお祝いした。

今年は迷った末に魔石のついた腕輪を買ったのだ。割と高い買い物だったのだが、リーシャは気に入ってくれたらしく毎日つけてくれているので、俺も割と嬉しかった。

そういえばアクアと一緒にいた時に俺はあいつにプレゼントなんてあげただろうか……。


「ほらほら、お行儀よくして待ってて。直ぐできるから」


リーシャがまるで母親の様な感じで料理を始める。

俺は食材を焼くくらいしかしないが、リーシャは割と料理が上手いのだ。

彼女はエルフだが、小さい頃から魔界に住んでいた影響で肉を食う事に抵抗が無い。

だが、リーシャの母親は菜食主義者(ベジタリアン)だったらしい。


その日の料理は俺の好きな肉料理尽くしだった。

この世界には牛豚鳥はちゃんといる(名前は違うが)ので俺の故郷の料理も作れるのだ。

前に鍋とか作った事がある。リーシャにはそこそこ好評だった。

寄生虫が怖いので焼かずに調理したことは無い。


全部食べ終わった後に俺が食後のデザートにサソリのハサミを持ってきた。俺はこれが結構好物なのだ。

しかし、リーシャは全力で拒否してきた。

何でだ?美味いのに……。見た目が嫌なのか?

俺は小さい頃から魔界の『見た目15禁の割に美味い食い物』を食べてきたので、見た目にはこだわらない性分なのだ。

リーシャの分も必要だと思って2本取っておいたのだが、結局俺が一人で2本とも食ってしまった。

やはり美味い。

俺の隣で、リーシャは青い顔をしながらリンゴみたいな果物を齧っていた。


---


「誕生日おめでとーう!」


アクアが奴隷宿舎に帰ると中では友人の奴隷たちがアクアを祝いながら出迎えてくれた。


「ほら、皆で買ったんだよ?つけてみな」


女部屋の部屋長の、見た目30歳くらいの獣人族の奴隷が青いガラスの装飾が施されたイヤリングを差し出してきた。

どう見ても安物だったが、アクアは堪らなく嬉しかった。

この時ばかりは感情の起伏に乏しいアクアも微笑みながらお礼を言った。


「あ、ありがとう……」


アクアは急いでそのイヤリングをつけてみた。


「うんうん、やっぱりアクアちゃんには青が映えるね〜」


イヤリングはアクアの青い髪と相まって、とても安物には見えないほどに綺麗だった。


アクアは実際、とても美人に育っていた。

何かを静かに見つめるときの物憂げな表情、常に冷静沈着な性格。更に、アクアは結構巨乳だった。

その為、アクアは多くの男性奴隷に好かれていた。

しかし、女性奴隷に嫌われるわけでもなかった。

男に媚びない上、他人を気遣うこともできる性格。更に、ジルに口答えできる唯一の奴隷でもあった。

それらすべての要因が合わさり、アクアは屋敷内では割と人気者だったりするのだ。


その日は皆で食料庫から盗んできた豪華な食材で乾杯した。もちろんバレるようなヘマはしていない。

奴隷は基本的に主人に逆らえないが、このルールにはちょっとした抜け穴があるのだ。

この3年間の間にこの屋敷の奴隷になった者は食料庫から食材を盗んではいけないと言われていないのだ。

奴隷は主人の不利益になることは出来ないのだが、『盗み』を主人の不利益になると思わなければ実行は可能だということだ。

勿論、ジルが奴隷の契約内容を忘れているのはアクアのことで頭が一杯な所為なのだが。

アクアはまだ気付いていないが、ジルがアクアのことを気にかけているということは女奴隷全員にばれているのだ。

ジルが何かとアクアに甘いのも分かっているので、何かあるとすぐに、嬉々としてアクアを呼んだりするのだ。

そのときうろたえているジルをみて裏でケタケタ笑ったりする。割と奴隷と主人との関係は良好であった。


アクアはまだ14歳なので飲酒は出来ないのだが、無礼講ということでその日は他の奴隷に散々飲まされた。

酒に酔ったらアクアは人が変わったように甘えたがりになるのでアクアに酒を飲ませる時は男子禁制である。

間違いが起こってしまってはいけないので、そこのところは年上の奴隷たちが配慮しているのだ。

その日は調子に乗ってアクアより年下の奴隷たちも酒盛りをしてしまい次の日の仕事が全く手につかず、ジルから罰則を言い渡された。


---


俺は次の日目を覚ましたらリーシャの胸に顔を埋めていた。


昨日は二人で酒盛りをした後雑魚寝したんだった……。

俺はリーシャにバレない内にその場から撤退する事にしたのだが、「う〜ん……」とか言ってリーシャがモゾモゾと動くのだ。

これは非常にまずい。バレたら殺される上に、柔らかい胸の感触を楽しんでいる余裕が全くない。

百害あって一利なしというやつだ。


以前にも似た様なことがあったのだが、その時はリーシャにしこたま殴られた。体が大きくなるのはメリットばかりではないということだな。

流石にあの時と同じ目にあうのは出来れば避けたいものだ。


俺はゆっくりとリーシャの顔の横に手をつき、体を起こした。


「はぁ……朝っぱらから気苦労が絶えない生活だなぁ、オイ」


そう思ってリーシャのそばから手をどけようとしたら、突然リーシャがなんの前触れもなく両目をパチッと開けた。


目と目が合う。


現在の体勢は俺がリーシャを両手で床ドンしている状態である。

ちなみに、ここで言う床ドンとは床を叩いて「ババァ‼︎飯は⁉︎」って言うことではなく、壁ドンの床バージョンだと思って欲しい。


というか、この姿勢は前にもやったことあるな……。


ひくひくと表情を痙攣させるリーシャに戦慄しながら俺は弁明を開始する。


「待て、リーシャ。俺はまだ何もしていない」

「まだ……?」


墓穴掘った。やばい殺される。死なないけど。


「いや、違う。何もする気は無かったんだ。ちょ、話を聞いてくれ!」

「こんのケダモノがぁぁぁぁ‼︎」

「おがぁぁ!」


俺の顔に紅葉の跡がついた。

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