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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
三章 獣人界編
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名付け親


俺たちがカイル村に滞在してから結構な時間が過ぎた。家が完成してから半年程だ。

俺は10歳になっていた。


カイル村は居心地が良かった。飯は美味いし、みんな優しいし、空気はキレイだし。

アギレラには戦闘の稽古をつけてもらっている。

そして最近の大きなニュースはフェリアの腹が大きくなってきたことだ。現在妊娠3ヶ月程度だ。

アギレラは張り切って俺との稽古の合間に子供用の遊具なんかを作ったりしていた。

俺とアクアにとっては歳の離れた弟みたいな感じだな。


ある日俺はアギレラと組手をしていた。

俺たちはその日の稽古のメニューをこなし、汗を拭いていた。


「そう言えばお前達、旅は良いのか?」

「え?」

「人間界に行くんだろう?」

「あ」


忘れてた。

この村の居心地が良すぎたのだ。そう言えば人間界目指してたなぁ。

そもそもなんで旅してるんだっけ、忘れた。

でもなんか行かなきゃいけない気がする。


「お前には何かやるべき事があるんだろう?」


アギレラの真剣な眼差しを受けて俺は答えた。


「……うん、毎日が楽しくて魔王城のこと忘れるとこだった」


そうだ、忘れちゃいけない。俺は国と城を再興するんだ。

もう2度と勇者に家族を滅ぼされないようにな……。


「俺、行くよ。人間界」

「そうか……。俺は一緒に行ってやれん。すまないな」

「良いよ気を遣わなくて。子供が出来るんだから仕方無いよ」

「実を言うと、心配だ。お前はまだ若い。何かあったらと思うと……な」


アギレラは心配そうに目を伏せた。


「大丈夫だって!またここに帰ってくるよ、アクアとフレイムとでさ。もしかしたら仲間が増えてるかも」

「フハハハ!そうだな、心配など杞憂だろうな」


俺たちは笑い合いながら家に入っていった。


---


「という訳で、明日にでもここを発ちます」

「そりゃまた急ねぇ、どうしてなの?」


シエルが心配そうに聞いて来る。


「俺たちは元々人間界に行くためにここまでアギレラ達に同行してもらったんです。目的を果たさないと」

「そ、じゃあ気をつけていくのよ?」

「はい」


俺は一通りの事情をシエルに話した。既にアクアとフレイムには話している。

俺たちは翌日に旅立つことにした。


翌日


本当のところ、アギレラとフェリアの子供を見てから行きたかったが、まだ産まれるまで半年以上もあるので流石に待っていられない。


「リュート、この子に名を付けてやってくれるか?」


出発間際、アギレラがフェリアの腹をポンポンしながら俺にそう言ってきた。


「え、俺が?」

「そうだ、俺もフェリアもお前に出会ってから全てが変わった。この子が生まれるのはお前のお陰だ。お前に名付け親になって欲しい」


名付け親って……そんな、俺は……。


『お前は自分のことを卑下しすぎだ。誇って良いのだ。お前がいなければ事実、我はフェリアを殺していたぞ』


そうだ、あの時刺客を焼き殺そうとしていたフレイムに生け捕りにしろって言ったんだっけ……。


「俺なんかで……良いんなら……。その、喜んで……」

「性別がわからんから男と女で両方考えろよ?」

「わ、わかった」


俺は悩んだ。

前世では彼女もできたことなかったし、一人っ子だったし、子供と触れ合う機会が全くなかった。ましてや子供の名前を考えるなんて……。

キラキラネームは絶対ダメだ。というか論外だ。

俺が名付け親なんだし、日本的な名前にしたいな。でも日本名は違和感あるだろうし、やはりアギレラとフェリアから字をとるべきかな……?

そうだ、確か外国でも名付けられる日本名があった筈。アレなら違和感も無いだろう。

俺は名前を決めた。


「じゃ、じゃあ、男の子ならレン、女の子ならカレン……でどうかな」


少し安直だっただろうか?

俺はおずおずとアギレラとフェリアの顔を見た。


「レンとカレンか……良い名前だ。ありがとう、リュート」

「ありがとう、リュート。私達はこの子を立派に育てる。お前も元気でな」


アクアはフェリアの腹を撫で回しながら赤ん坊に声をかけている。


「レンくん、カレンちゃん、元気でね……また来るからね……?」

『それでは、お前達も達者でな……こちらの事は我にまかせておけ』

「任せたぞ、フレイム。リュートは少し危なっかしいところがあるからな」


アギレラがフレイムに釘を刺している。失礼な、俺はそんなに危なっかしいかね?


『うむ、了解した』

「さ、リュート。当分の食料とか、着替えとか入れといてあげたわ。元気でね?」

「ありがとう、シエルさん」


食料や衣類はシエルが事前に準備していてくれたのだ。


「それではな」

「気をつけていくんだぞ?」


心配性な二人は最後まで俺たちが心配らしい。


「それじゃ、行ってきます!」

「行ってきまーす」

『では、さらだば』

「噛んだな」

「噛んだね」

『ええい、黙れ!』


俺たちはそんな感じでカイル村を後にした。


---


俺とアクアとフレイムはカイル村を出発し、サナリア近郊の森を抜けた。

次の目的地である亜人界北西の町、エクレリアを目指す。

エクレリアから界境を越えて竜人界へと向かうのだ。


そう言えば、俺とアクアとフレイムで旅をするのは初めてだな。

すぐにジェイドと出会って三人で旅をして、フレイム、フェリア、アギレラと出会った。

そしてその後、ジェイド、アギレラ、フェリアと別れた。

俺はアギレラから貰った馬に乗り、アクアはフレイムに乗る。これがいつもの風景だ。

荷物は俺は自分で持っているのだが、アクアの分はフレイムの翼の中間にドサッと置かれている。

「自分で持て」と言っても面倒臭がって持たないので俺もあまり文句は言わない。


「まず着いたら飯でも食うか?」

「賛成……」


俺たちは呑気にそんな話をしていた。背後の刺客に気付かずに。

今回は少し短めです

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