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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
二章 魔界編
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終わってた戦い


「いや、なんで終わってんの……?」

『お主らが長時間楽しそうに談笑しているからだ』

「ごめんなさい」

「お前達は楽にしていてくれ、取引は俺たちがやろう」


アギレラとフレイムが領主を守っていたであろう兵や奴隷達をフルボッコにして、領主を縛り付けて話し合っている。完全に俺たち3人は蚊帳の外だ。


「どうしよう……怒っているのだろうか……?私達が喋ってばかりいたから……」

「怖いよ……リュート、何とかして……」

「いや、怒ってないんじゃないか?」


フレイムはこんな事作業くらいにしか感じてないだろうし、アギレラもそんな事で怒るタイプには見えないし。


アギレラが縛り付けた領主にずいっと近づく。


「ひ、ひぃいっ!ぼ、僕を誰だと思っているんだ⁉︎僕はアストレア領主、ベルナ・ベルグスだそ!」


領主は完全に負け犬ムードを漂わせている。敗北を悟ってワザとあんな態度を取っているのではないだろうか?


「お前がここの領主だという事くらい知っている。なにせお前は俺たちの飼い主だったのだからな……」

「ひぃいっ!」


怖いよ、アギレラ……。アレは怒ってるな、完全に怒ってる。

フレイムも後ろから火炎放射の準備が出来てるらしく、鼻とか口とかから炎が漏れている。


「ここの奴隷達を全員解放しろ。要求を飲まなければ……わかるな?」


右手をぐーぱーさせながら、ドスの効いた声でアギレラが凄む。領主は口をパクパクさせながら何回も頷いた。


結局俺は殆ど何もしてないのに一件落着してしまった。なんだか不完全燃焼である。

その後、何人もの奴隷達が俺にお礼を言いに来た。俺は何もしていないというのに。正直居心地が悪かったので、さっさと一人でジェイドが居るであろう宿に行く事にした。


俺は一人で歩きながら溜息をついていた。

脳内反省会だ。実際、フレイムが居なければ俺はアギレラに殺されていてもおかしくなかった。

俺は悔しくて仕方がなかった。

自分では強くなったと思っていたし、自分の力を過信してもいた。だが、今回はアギレラに完膚なきまでに負けた。


「クソッ!」

「リュート……?」

「おわあぁぁぁ‼︎」


感傷に浸っていたので、背後からアクアが接近している事に全く気がつかなかった。死ぬ程びっくりした。

「どうかしたの?」

アクアは澄まし顔で聞いてくる。


「べ、別に何でもない」

「……嘘」

「うぐ……どうでも良いだろう、そんなの」

「……どうでも良く……無いよ?」


そう言ってアクアは俺の顔を覗き込んできた。

魔族の子供は成長が早い。初めて会ってから半年ほどしか経っていないのに何だかアクアは成長して見えた。


「別に、今回の俺はちょっとだけ良くなかったから反省してたんだ」

「リュートがそう言うなら、そんな事無いよ……何て、言えないけど……リュートは、強いよ?」

「俺は、家族を絶対に守れるくらいに強くならなきゃいけないんだ。なのに俺は自分の身すら守れなかった。俺はそんなんじゃダメなんだよ!」


俺はあの時決めたんだ。絶対に家族を失わないように強くなると。もうあんな思いをするのは2度とごめんだ。


「俺はもっと、強くなりたい……」

「リュート……」


アクアは俺を優しく抱きしめた。

俺が落ち込んでいたら大体アクアはこうやって俺を励まそうとする。

アクアは話すのが苦手だからかも知れない。自分の気持ちを言葉で上手く伝えるのが難しいからいつもこうするのかも知れない。

いつもは妹みたいな奴なのに俺が落ち込んでいる時だけ姉のような安心感がある。俺に兄弟なんていた事無いけど。

俺は久しぶりにアクアに甘えてしまった。


「ごめん、もう少し、こうしてて良いか?」

「…………うん……」


「おーい、兄ちゃん、嬢ちゃん、何してんだ?」


「うおおおぉぉぉおおっ‼︎」

「………………ッ⁉︎」


俺達は急いでくっ付けていた体を離した。

宿の窓からジェイドが顔を出していたのだ。まさか、見られていたのか⁉︎ヤバイ、凄え恥ずかしい!


「なんだ、終わったのか……早かったな。二人だけか?」


ジェイドは外に出てきて俺たちを出迎えた。見られてはいないらしい。セーフだ。


「う、うん、フレイムとフェリアは後で来るんじゃないかな……」


俺は頬の端を引きつらせながら無理に笑顔を作って答えた。


「そうか、まぁ疲れたろ。中でゆっくり休め」

「う、うん、ありがとう、ジェイドさん」

「………………あ、ありがと」


俺とアクアは心臓をバクバクさせながら部屋へと入っていった。


---


それから数時間後、フレイムがフェリアとアギレラを連れて宿の前までのっしのっしと歩いてきた。町中から悲鳴が上がっている。


「何してんだよ⁉︎フレイム!」

「………フーちゃん、お外で待ってて」

『む……す、すまぬ……』


フレイムはアギレラとフェリアを降ろして街の外に飛んでいった。アクアには相変わらず頭が上がらないらしい。


「アギレラも来たのか」

「ああ、少しだけ厄介になる」

「良いじゃねえか、賑やかになってよ」

「アギレラはそういうタイプじゃないと思うけど……」


部屋割りはアギレラとジェイドと俺、アクアとフェリアという感じだ。

アクアはいつものように俺とジェイドの3人で寝たかったらしいが、フェリアが強硬に反対した。仕方ないね。


俺たちはその日は疲れが溜まっていたのか泥のように眠りについた。

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