刺客の正体
1日1回と言ったな……あれは嘘だ
さてと、今日も元気に襲撃対策だ。
どうせまたくるんだろ?あの野郎、絶対目に物見せてやるぜ。
そんな思いで俺は気を引き締めていた。
昨日はよく眠れたのかアクアもしっかり起きているし、フレイムも辺りに気を配っている。今回は万全の態勢だ。
その時、フレイムが全身の棘を逆立てた。
『む……来るぞ……』
「よっしゃ、行くぞ」
「今回は私も頑張る……」
「頼んだぜ?」
戦闘能力が皆無なジェイドを除いた3人は臨戦態勢をとった。
ジェイドさんは戦闘以外は万能だから良いの!
「あれ……?来ないな……」
『……ッ!上だ!』
上を見上げるとドラゴンみたいなやつが大量に飛んでいた。
「うええっ!⁉︎ドラゴン⁉︎」
『アレは翼竜種だ。古龍種である我と一緒にするな』
「違うのか」
「んなこたどうでもいいだろうが!アレ何とか出来んのか?」
『当然だ。フン……下等種族めが……粋がるなよ……』
そう言いながらフレイムは一切の躊躇なく翼竜種を焼き払った。
焼け焦げた死体が落ちてくるならまだ良い方で、空中で骨ごと消し飛んだりする奴すらいる。古龍種すげえな。
「ねぇ……あっちからも来るよ……」
アクアが指差す方向からは昨日と同じくブラッドウルフがやって来た。
全員正気をなくしたように目を血走らせて走ってくる。
「ヒッ……」
ホラーの苦手なアクアが悲鳴を上げ始めた。気持ちはわかる。あんなん見たら誰だって逃げたくなるよな。俺だって逃げたい。
でも逃げるわけにはいかないのだ。仕方が無い地上は俺が担当しよう。
「アクア!上を頼めるか?俺が狼をやる!」
「う、うん……」
「強化魔法‼︎」
俺は身体を強化して狼の群れに突っ込んだ。狼の牙くらいなら難なく防げる。問題は昨日俺の首を切ろうとしたアイツだな……。
「撥水砲弾……!」
アクアが空中の翼竜種めがけて水魔法の砲弾を無数に打ち出す。
撃ち抜かれた数匹の翼竜種が血飛沫を上げながら地上に落下してくる。
アレは確か3級水魔法か……アイツ水魔法だけで言えば滅茶苦茶強く無いか?てか、水魔法万能すぎない?治療も出来るし攻撃も出来るし……。
「見つけた……豪炎弾!」
俺は狼の送られてくる転送魔法陣を発見し破壊した。
その時、
ガキィン!
「残念だったな……来ると思ってたぞ」
リュートの背後からダガーを装備した背の低い男が襲って来た。
「くそ……!」
「今回は逃がさ無いぞ!」
リュートは強化された脚力ですかさず退路を塞ぎ、一閃。
相手も負けじとダガーで切りかかってくる。速い。流石のスピードだ、一回強化したくらいじゃあ速さが足りないな……。
「二重強化!」
だったら二回強化すればいい。
残念ながら二回強化した俺は速いぞ。
「はあっ!」
「くあっ……!」
俺は高速で相手の腹部と頭部に手刀を叩き込んだ。しかし、間一髪のところで相手のダガーがリュートの手刀を防いだ。
しかし、何てスピードだ……!
しかし、威力を殺しきれなかったのか、ハラリとフード付きの服が破れて脱げた。
「んなっ⁉︎」
何と、刺客は男だとばかり思っていたが女だったのだ。
綺麗なエメラルドグリーンの髪。頭の横からは長い耳が覗いている。エルフの女性なんてリュートは初めて見た。
しかし、別に上半身下着姿のエルフの女性に驚いたわけでは無い。
リュートは全体的に体がゴツゴツしてるから刺客を男だと思っていたのだ。
女性の身体がなぜゴツゴツしているのか。答えは簡単だ、全身に爆弾が貼り付けてあったのだ。
「ば、爆弾……!」
それはリュートのよく知る現代のプラスチック爆弾に形が酷似していた。
しかもそれを体に幾つもくっ付けているのだ。
何で、あんなものを……付けてんだっ!
「オイ、フレイム!早く来てくれ爆弾だ!」
『爆弾⁉︎爆撃魔法の事か!悪いが空中の魔法陣が中々見つからん!もう少し1人で持ち堪えろ!』
「む、無茶苦茶いうなよ……爆死したいのか⁉︎」
「兄ちゃん、規模は分かるか⁉︎」
「分かんないけど、俺は死ぬかも」
爆弾って……地球では火薬で爆発するけど、コッチではどうなんだ?魔法で爆発するんならお手上げだ。
「大丈夫……私が、やれる……!」
アクアがこちらにやって来た。水魔法で爆弾は何とかできるのか?
「『撃水弾』……!」
デカイ水の砲弾をエルフに向かって容赦なく打ち出した。
水の砲弾は高速でエルフに向かって飛んでいき、バキバキと木々を壊しながらエルフを吹き飛ばした。
「お前……容赦無えな……」
「それ程でも……ある」
「褒めてねえよ」
鼻から息をフンス!吐き出しながら得意げな顔でこちらを見てくる。何だよ褒めないよ?
というか今の衝撃で爆弾が炸裂したらどうするんだ?
「爆撃魔法は術式を組まないと爆発しないから大丈夫……だと、思う……」
「曖昧だなオイ」
『あのエルフが意識を失ったようだな……魔法陣が消えたぞ……』
フレイムも翼竜種の残党を狩り終わったらしくこちらにやって来た。
「取り敢えずあのエルフを拾いに行こう。全く……どっかの誰かが派手に吹っ飛ばしてくれたお陰で面倒臭い作業が増えだぞ」
「え……誰?」
「お前だよ」
『しかし、何故エルフが我らを襲うのだ……?』
「取り敢えず治療だけして、目的を聞き出すのが良いだろうよ……」
俺たちはエルフを拾って介抱する事にした。
エルフ登場!最初はヒロインをエルフにする予定だったのですが……どうしてこうなった