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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十一章 魔界編 其の二
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命令拒否


---リュートside---



その時、敵の軍の上空あたりに黒い雲が立ち込めた。


「何だ……?アレ……?」

「分かりません……、しかし魔王様。何故か胸騒ぎが……」


ルシファーは俺の隣で空を見上げていた。

雷を含んだ巨大な雷雲にも見えなくもない。


「我が王よ!敵軍を押さえ込みました!」

「いっちょ上がりっすよ!リュート様!」

「ナヘマー、アスタ、ご苦労だった。それよりアレなんだが……」


と、その時、敵軍全体に異変が起こった。


なんと、敵軍へとその雷雲から落雷が起こっているのだ。


「な……!誰がやってるんだアレ……!」

「こちら側は何もしておりません!別の第三者かと思われますが……!」

「待て……。あれ、こっちに来るぞ!一直線に!」


既に敵軍と接触していた旧政権派軍も被害を受け始めている。


「くそッ!撤退しろ!撤退の命令を出せ!あんなもんモロに食らった皆死んでしまうぞッ!」


俺は幾分か焦りながら撤退の指示を出す。

既に雷は目前へと迫っている。


「全軍撤退!撤退せよ!」


合流したアリス、ベル、マキナがこちらへ向かいながら兵へと指示を飛ばしていた。


「アリス!無事だったか!」

「リュート様こそ、ご無事で何よりです!しかし、アレは……」


アリスの視線の先にいるのは巨大な雷魔法による雷雲だ。


「分からん……。敵も味方も無差別って事は……何らかの第三者の攻撃だと思うんだが……」

「まさか……」

「何だアリス、心当たりがあるのか?」

「ええ、一つだけ……」


走りながらアリスは心当たりとやらを話した。


---



調和者(バランサー)?」

「はい、確かにその男はそう名乗っていました。圧倒的な戦闘能力を持ち、目的は……『混乱』にあると……」

「見事に今回の内乱で魔界は混乱してるからな……。ソイツの思った通りに事が運んでるじゃねぇかよ……」


アリスの話に出てきた男、調和者(バランサー)

調和という言葉を冠するというのに混乱が目的とは……矛盾した野郎だ。

しかし、新政権派の兵士を瞬く間に制圧し、『七大罪(セブンス・シン)』であるアリスに自分の実力では勝てないとさえ言わしめるとは……。


「じゃあアレが調和者(バランサー)だって事か?」

「その可能性は……低いのではないかと思います。奴はあの様な強硬策に出る様な男には見えませんでした。しかし、全くの無関係とは考えづらいですから……」

「成る程な……、ま、どのみちあの雷雲を発生させてる張本人とは面と向かって話さねえとな。旧政権派は黙らせたんだ。後はあの雷雲をぶっ潰すだけだ」


俺は顔を上げ、雷雲を見据えた。

コレで今回の一件が片付いてくれればいいのだが、そう簡単に行くだろうか。


「リュート様!行くってんなら俺も付いてくっすよ!」

「魔王様、ここは私が」

「我が王よ、私こそがこの任に相応しい」

「そうだな……。別にお前ら全員付いてきていいぞ」

「「「え」」」


俺の言葉にルシファー、ナヘマー、アスタは同時に小さく声を発した。

何だよ、そんなに俺のセリフが珍しかったか?


「あー、でもアリスとベルはこのままここに残って兵の面倒を見ててくれ」

「「はっ」」


二つ返事で了承するとベルとアリスはその場から兵を引き連れて走り去った。

側では暇そうにマキナがフヨフヨと浮遊している。


「マキナ、お前も来るか?」

『行く。マスター、私がマスターを守る』

「よし、付いて来るやつに言っておくが、何よりも自分の命を優先しろ。俺よりもだ。良いな?」


俺の言葉に対してこの場の誰も返事をしなかった。

まぁこうなる事は予想していたが。


『拒否する』

「お言葉を返す様ですが魔王様、貴方様の御命はこの場の誰よりも尊く、掛け替えのないものにございます。その命令にだけは従う事はできません」


ルシファーとマキナならこういうと思っていた。

なので、俺は無慈悲な言葉をつきつけようじゃないか。


「じゃあ留守番な」

『拒否する』

「なっ……!そ、そんな……!」


ルシファーの顔が凄い。世界の終わりみたいな顔してる。

対してマキナは無表情でノータイム拒否。しかしこれは無視。

そしてこの会話の流れを聞いていたアスタは急いで声を張り上げた。


「わ、分かったっす!リュート様が死にそうな時も無視して俺は逃げるっすから!」

「嘘つく奴は嫌いだぞ」

「うぐっ!」


「うぐっ!」って言っちゃったよ。

アスタは表裏のない奴だ。信頼出来る良い性格なのだ。

しかし、俺に嘘をつく時のみ致命的に嘘が下手なのである。

まず、目が物凄く泳ぐ。汗も物凄い出る。更にバツが悪そうに手を背後で弄ったりする。コレでバレない方がおかしい。


次に進みでるのはナヘマーだ。


「何の問題がありましょうか、我が王よ。貴方の命と我が命、両方守れば良いだけの事!」

「だから自分のことだけ心配してろって言ってんだよ。無茶言ってんのは分かってる。でもな、俺の為に戦ってくれるだけで十分だ。俺の代わりに死ぬとかそんな事はやめてくれ」


俺が伝えたいのはこう言う事だ。

コイツらは平気で俺の為に命を差し出すだろう。

俺の為に戦ってくれるのは良い。そうしなければ俺だってこの世界で生きていけないのだから。

だが、俺の代わりに死ぬ、なんてことがあったら俺は耐えられないだろう。ずっと引きずってしまう。

コレは俺のエゴだが、折角一番偉い立場なのだから権力を傘にエゴを存分に通させてもらうとしよう。


「約束してくれ。自分の命を最優先に動け。死にそうになったら逃げても良い。俺は咎めない。だから、死なないでくれ。頼む」

「魔王様……」

「リュート様……」

「王よ……」

『マスター……』


この間。


嫌な予感がするんだが。


「申し訳ございません、魔王様。やはり従う事は出来ません」

「やっぱ無理っす!」

「非礼をお詫び致します、我が王よ。ですが、従いかねます」

『だが拒否する』


まさかの全員『だが、断る』。

嘘だろオイ。俺のさっきまでの演説何だったの?感動して俺の命令に頷くところだよそこは。

「無理っす!」って……アスタに至ってはいっそ清々しいわ。

それと、マキナ。お前元ネタ知ってるんじゃあないだろうな?


「じゃあ留守番だぞ、良いのか」

「いいや、付いていくっす!」

『それも拒否する』

「はぁ?」


俺は一瞬惚けた表情になったことだろう。

俺は思いもしなかったのだ、コイツ達が俺の命令に全く従わなくなることなど、想定すらしていなかったのだ。


俺は失念していた。


そもそも俺の命令に従わないのなら、『勝手に付いてくる』という選択肢が残されているのだから。


「では、行くぞルシファー。一番槍はこの私だ」

「フン、今回ばかりは貴様に功を譲るわけにはいかんぞ、ナヘマー」

「待つっすよ!俺だって負けねぇっすから!」

『先に行く、置いて行くぞ』


気がつけばマキナは俺たちを置いてさっさと飛び立ってしまった。


「くっ!先を越された!」

「ルシファー!貴様には負けんぞ!」

「だぁぁあ!待つっすよ!」

「あ、おい、ちょ、お前ら!……って、行っちまいやがった……」


先を争うようにして3人もその場から消え去るかのような速度で雷雲へと向かってしまった。


俺は一人で何もない場所で佇む。


「はぁ……、アイツ達……!」


プチン、と俺の頭の中にある糸が切れた音がした。


「良いじゃねぇか上等だ。もし死んだら絶対許さんが……生きて城に帰ったとしても許さんぞ……!取り敢えず後で全員ビンタだな」


俺はその場の大地を思い切り蹴った。



---ルシファーside---


「ひ、ひぃぃっ!」


その時、アスタが悲鳴をあげた。


「む、どうした?アスタ」

「い、いや……今なんか背筋にゾッと寒気が……」

「疲れてるのではないか?アスタ……ッ⁉︎」


言いながらナヘマーが瞬時に背後を振り向いた。

形容しがたい何かが背筋を凍りつかせる。

しかし、背後に敵などいないはず。

今背後にいるのは……、


「「「あ」」」


3人は同時に声をあげた。

背後から飛んでくる寒気の元凶が何か得心した3人はその場で顔を見合わせ表情を青くした。

10日ぶりの投稿となってしまいました。遅くなって申し訳ございません。

言い訳は一々書くのが面倒なのでしません。

次回は早めに更新したいと思っております。

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