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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十一章 魔界編 其の二
202/220

派閥抗争


少しだけ時は遡り、ルシファーと別れた直後。


本気を出し、漆黒の翼を広げたルシファーを尻目に俺は走った。

アクア達の監禁されている場所は既にリサーチ済みだ。


「アクアッ!ジンッ!」


そして、俺は勢いよく扉を開けた。

そこには最愛の妻と息子の姿があった。


「リュート……!」


アクアがジンを抱き上げ、こちらへ駆け寄って来る。


「アクア、細かいことは後だ。ここから脱出するぞ!」

「な、何が起こってるの……?」

「今からルシファーがこの辺を全部凍らせるんだよ!早く!」

「う、うん……!」


俺は急いでアクアの手を取り、ジンを抱き抱えた。

高いところは苦手だが、この状況だ。甘えたことは言っていられない。

意を決して窓枠の鉄格子を破壊し、足をかけて空中へと身を投げ出した。


するとその瞬間、背後でバキンッ!という音と共に先程まで俺たちの居た場所もろとも全てが凍りついた。

さらに冷気はこちらへと少しずつ接近して来る。


「不味い不味い!早く落ちろっ!」

「リュ、リュート……!」

「アクア、大丈夫だ。捕まってろよ!」

「う、うん……!ジン……大丈夫。パパとママがついてるから……」


そう言ってアクアが俺ことジンを抱きしめた。

俺はすぐさま着地の体制に入る。

周囲から『魂喰(ソウルイーター)』で魔力を増幅し、両足を『雷撃強化(サンダーブースト)』でいっきにドーピングする。

強化を全て下半身集中させ、アクア達には衝撃がいかないように防護魔法を展開する。


「舌噛むから歯ぁ食いしばれよ!うおおおおおおおおおおおお!!!」


ドゴォッ!


轟音が鳴り響き、巨大なクレーターが完成した。

全身が軋む。


「ぐぅ……いって……え……。あ、アクア……、ジン……怪我は無いか……?」

「う、うん……。ジンも大丈夫そう……。それよりリュートは……?」

「滅茶苦茶痛いけどなんとか無事だ……。一応直前にナヘマーとアスタにも連絡入れといたんだが……無事に逃げてるだろうな……?」


周囲を見渡すも誰も居ない。

ルシファーが本気の凍結魔法を使うことを知って居たのは俺たちだけだ。

この建物の内部にいた新政権派の奴らは一網打尽だろう。


「リュート様ー!」

「我が魔王よ!ご無事ですか!」


そうこうしてると無事な様子のナヘマーとアスタがこちらへ駆けて来た。


「無事だったか……」

「な、なんとか……。リュート様が事前に連絡してくれたおかげっすよ」

「連絡がなかったら今頃我々はあの場で氷の棺に閉じ込められていたでしょう」

「悪い。強敵だったんだ」


ふと、ナヘマーが俺から視線を外し、アクアとジンを見据える。


「お妃様、お怪我はなさっておりませんでしょうか?王子もご無事な様子で何より」

「ありがとう……。それで、貴方……誰?」

「はっ!申し送れまして申し訳ございません!我が名はナヘマー!我が魔王であるリュート・エステリオ様の剣を自称するものでございます!以後お見知り置きを!」

「……私はアクア。……よろしく、ナヘマー」

「勿体なきお言葉!」


アクアの控えめな態度に恐縮したのかナヘマーはそのまま地面に膝をつけ、恭しく首を垂れた。


「ルシファー!いるか!」

「はっ、ここに」


俺の声に呼応するようにルシファーが現れる。

突然背後に瞬間移動するかのように出現するのにも慣れたものだ。

そして今回のルシファーは意識を失ったメフィストフェレスを肩に担いでいる。


「倒したんだな」

「はい。しかし、やむを得なかったとはいえ……大変申し訳ございませんでした」

「いや、あれは俺の命令だ。お前が謝る必要はない」


周囲には特に何もない。

しかし、近くに鬱蒼と生い茂る森林がザワザワと揺れていた。

此処には俺だけでなく配下最高戦力であるルシファーに幹部であるナヘマーとアスタがいる。

戦力をこちらに割き過ぎているのだ。


「まずいな……。何だか嫌な予感がする……。魔王城に一旦帰還する!」

「はっ!」

「アクア、少し急ぐが……走れるな?」

「う、うん……」

「ジンは俺が抱くから。行くぞ!」


俺の号令と共に魔王城へと帰還するのだった。


---アリスside---


リュート達と別れてから数時間が経過していた。

まだ新政権派軍に動きは見られない。


「リュート様は……ご無事でしょうか……」


アリスは独り言ちた。

こうして離れているとリュートの事が心配でたまらなくなる。これが親心というやつなのか、それとも忠誠を誓っているからことの事なのか、アリスには判別がつかなかった。


「アリス。リュート様なら問題無い。寧ろ心配するのは私たち」


確かに、ベルの言う通りだ。心配なのは寧ろアリス達の方だった。

普段から戦闘の要であるルシファーとアスタが居ないのだ。

アクアを敵側に取られてしまっては旧政権派は終わりだ。だが、それでも戦力をもう片側に渡し過ぎた感は否めない。


『敵影を捕捉。どうする?』


任務中はアリスの指示に従えとリュートから言付かっているマキナはアリスへと報告した。

マキナの索敵能力は極めて高性能なものだ。

此処からはまだ遠く離れている筈の敵影を既に発見している。


「近づいて来なければ交戦のしようもありませんからね……。ゼクスは居ますか?」

『居る。アザゼルとファルファレルロ……と、思われる魔族も居る』

「メフィストフェレスは……?」

『居ない。多分……、マスターのところ』


マキナの言葉でハッとした表情になったアリス。

主へと危険が差し迫って居る。

だが、自分にはどうすることもできない。今自分に出来ることはこの場で戦線を維持、もしくは進める事。


アリスは少し前へと進み出て旧政権派の軍へと通告した。


「敵影を捕捉しました!我々が王より授かった使命は新政権派の奴等を一人残らず存分に叩きのめす事!我が物顔で魔界の王座へつこうとして居る簒奪者を許してはいけません!戦いなさい!我が王のために!」

『うおおおおおおおおおおおおぉお!!!』


アリスの短い演説に気分が高揚したのか兵達の士気が上がる。


「アリス、見て。来た」


ベルの指差す方向からは土埃が舞い上がり、雄叫びを上げながら新政権派軍が此方へ大挙して向かってくる。

アリスはその光景を見て冷静に指示を飛ばした。


「敵の接近を確認しました!今こそ、その力を我が王へと示す時です!全軍、突撃しなさい!」

『うおおおおおおおおおおおおおお!!!』


正真正銘、人と人が殺しあう戦争が今此処に始まったのだった。

かなり短くなってしまいました。

次回からはまた通常のペースに戻ります。

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