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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十一章 魔界編 其の二
198/220

破壊のナヘマー


「この城……、今は誰も居ないのか?」

「はい……。管理人が数人居るのですが、その役目の大部分は私が担っておりましたので」

「それでか……」


ほぼ無人に近い。

だから静かだったのか……。


「しかし、俗に『旧政権派』と呼ばれるもの達は別の場所を拠点としています。そのもの達は今でも新政権派との戦いに身を投じてくれています。勿論、リュート様。あなたを旗頭として迎える準備はできています」

「そうか……」


しかし、俺はそこまで喜べなかった。

今更ひょっこり戻ってきて突然旗頭になるだなんてムシのいい話だ。

寧ろ俺がいない間魔界の面倒を見ていたゼクスが魔王となるのは自然な流れなのだ。


本当に俺なんかが魔王になっていいのだろうか……?


いや、こんなことを考えていたら歩く足が鈍る。

今はアクアを助けることに集中しなければならない。

どちらにしろ、アクアを連れ去られてしまった以上ゼクス陣営とは全面戦争だ。

そもそも愛する妻を何処の誰とも知らん奴に取られるなんぞ断固お断りだ。魔王の座は譲れない。


「取り敢えずはナヘマーだな……。『音信魔法』で呼べるか?」

「はい、呼んでみます」


アリスが俺の言葉に頷き、音信魔法を飛ばす。


『なんだ、アリスか。どうした?』


男の声が聞こえてきた。

この声の主がナヘマーだろう。

ルシファーに似て硬い感じの声だ。


「どうした、ではありません!城で待って居てくださいと言ったでしょう!」


アリスは言いつけを守らなかったナヘマーに対して咎める口調で言う。

確か城の守りを固めるとかなんとか言ってたな……。この城無人だけど。


『私を縛ることが出来るのは我が神のみ。何人たりとも私のことを……』

「ええい黙りなさい!早く帰ってくるのですよ!リュート様がお待ちです!」

『何……?神の子がお帰り召されたと言うのか⁉︎すぐに戻る!神の子をお待たせしてはならない!』

「ええ、一刻も早くですよ!良いですね!」

『無論だ、貴様に言われるまでも無い。時間が勿体無いので切らせてもらう。後で会おう』


プツッ、と音信が切られた。

どうやらすぐに戻ってくるらしい。


「さっき言ってた『神』ってのは何のことだ?」

「バゼル様の事ですよ。ナヘマーは変わり者なのです。バゼル様の事をまるで宗教の神のようにお慕いしているのです。勿論それはバゼル様の実子である貴方様にも同様に向けられる感情でしょう」

「めんどくせー……」


何故親父の部下はこうも両極端なのだ。

部下の種類が裏切り者と忠誠心の異常に高いやつの二択なんだが?


「時期に戻ってくるでしょう。まずはアスタ達の治療に専念しましょう」

「だな。アスタの奴も丁度寝てるしな」


俺たちは怪我人3人を寝室に連れて行った。

寝室というか客間だけど。


アスタとマキナはぐっすりと眠っている。マキナは少し修理が進んでギリギリ人型に戻っていた。

マキナは確か眠っているんじゃなくて節約(スリープ)モードとかいうやつだったか?まぁどちらでもいいか。

ウリエルはと言えば寝転がって物思いにふけっているようだ。


「何考えてんだ?ウリエルは」

「別に。地上のやつに一方的に負けたのが気に食わなかっただけだっつーの」

「あんまり気にしても仕方が無いだろ?」

「そうじゃねえよ。俺は仲間になった以上本気で戦うつもりだった。なのにこのザマだ……。なんつーかさ……、萎えちまったよ」

「おいおい……」


ため息をついて寝返りを打ち、ウリエルは俺に背を向けてしまった。


「今度はアザゼル達も復活してるだろうしお前にも頑張ってもらわなきゃダメなんだぞ、オイ」

「わかってるっての。俺だって命は惜しいし」


ウリエルは顔を伏せたままでぶっきら棒に言った。

もう会話はここまでだと言わんばかりに布団をかぶってしまった。


「…………。じゃ、また後でな」


ウリエルは返事をしなかった。


---


「魔王様!敵襲です!」

「数は……?」

「30程度でしょうか……。ベルと私で何とか対応いたします」


どうやらまた戦わねばならないらしい。

今は戦力が万全の状態じゃ無い。だからこそ敵は攻撃してきているのだろう。

城に攻めて来るにしても城に人がいないのだから攻め落とすのは簡単だと判断したのもあるだろう。


「俺も行く……。奴等を一匹たりとも中に入れるな」

「はっ!仰せのままに!」


俺は立ち上がり、動けるベル、アリス、ルシファーを伴って戦場へと向かう。


外を見ると城門へと押し寄せる軍勢が見えた。

ルシファーの言った通り30程度だろう。だが、一方向からだけで30程だ。

別方向からもきているのだろう。そもそも見えやすい位置から攻撃を仕掛けて来るのは陽動である可能性が高い。


「蹴散らせ!ベル!」

「了解……しました。『獄炎波砲(ヘルフレイムカノン)』!」


悲鳴をあげながら吹き飛ぶ敵の姿が目に飛び込んできた。

避けられないほどの広範囲魔法だ。当然だろう。


「魔王様!6時の方角より敵襲です!」

「チッ……!キリがねぇな……!」

「む……、リュート様……。アレをご覧に……」

「あん?」


アリスの指差す方向を見やると更に別の方角からわんさか敵がやってきた。


しかし、その背後に巨大な土埃が起こっていた。


「何なんだアレ」


そしてその土埃は竜巻のように巨大になりながらこちらに迫って来る奴等を全員吹き飛ばした。


「まさか……、ナヘマー……⁉︎」

「あ、アレがか……?」


その時、音信魔法によりアリスへと通信が入って来る。


『アリス、神の子はいらっしゃるか?』

「あ、はい。今私の隣に……」

『神の子よ!すぐに馳せ参じますのでご容赦を!ついてはまず城の周囲を飛び回るハエどもを蹴散らしてまいりますので暫しお待ちを!』

「あ、あぁ……。期待してるぜ……?」

『勿体なきお言葉!では後程!』


プツッ。


何だか嵐のような男だった。

どことなくルシファーと似てるというか……ルシファーとアスタを足して2で割って暑くしたって感じの面倒臭さがある。


「見てください、リュート様。アレがナヘマーの実力です……」


アリスの指す方向ではナヘマーが大暴れしていた。

奴の実力の程が推し量れるかと言われれば答えは否だ。

全て一撃で蹴散らしているのだ。

しかも広範囲の魔法を使用しているのではない。使用しているのは近距離、もしくは中距離で使用するタイプの魔法だ。

俺やアスタと同じタイプだ。


なのに全て一撃なのである。


「ナヘマーの持つ『破壊剣(バスタード)』という魔法の効果です。斬った対象を破壊するというシンプル極まりない魔法です。しかし、シンプルである、すなわち強力です……」


触れれば終わり。

それが『破壊剣(バスタード)』の効果。


「ナヘマーの剣はナヘマー自身の魔力によって生成されたものです。ですので折れることはなく、決して劣化しない……」

「恐ろしい武器だな……。触れれば終わり、劣化しない。幾らでも生成できるのか……?」

「はい。奴の魔力の続く限り無尽蔵に。その代わり一度に一本ずつしか出せません」

「ま、その程度のデメリットはあって然るべきだよな……」


それを加味しても強力な能力だ。


数分経って完全に城外の騒動の鎮圧が終わったナヘマーは俺の前へとやってきた。


「神の子よ……。いや、我が新たなる神よ!ご尊顔を拝することが出来、恐悦至極!この我が身、神のモノでありますれば、好きなように使い捨てるなり何なりして下さると幸甚に御座います」

「まず一個提案があるんだが……」

「はっ!何なりとご命令を!」


そう言ってナヘマーはまるで地面にひたいを擦り付けんばかりに頭を下げた。

既に五体投地に近い。


「その、『神』ってのやめね?何だか胸糞悪いし……」

「失礼いたしました!しかし……『神』に変わる尊称が見つからないのもまた事実……」

「いや、普通にリュートでいいよ。魔王でも良いし。神はやめて」

「それでは魔王様……と、お呼びさせていただきます!」


そう言ってナヘマーは五体投地した。


俺の感想はと言えば一つだな。


めんどくさっ。


---


「と、言う訳でだ。戦力の増強とは言ったものの今の所増えた奴はナヘマー1人だけななんだが……」

「ご安心召されよ、我が魔王よ。私が100人分以上の働きをしてご覧に入れましょう」

「あー、うん。意気込みは分かったけども。アリス、実際問題どうだ?」


俺の問いかけにアリスは少し難しい顔をして答えた。


「一応旧政権派の兵達が居ますので現状はまだ不利ではありません。我々の大きな問題であった旗頭の不在も解決されましたし……。仕掛けどきかと」


と、言ったもののアスタ達怪我人組がまだ万全ではない。

そろそろ治療も終わりにさしかかってきたはずなのだが……。


『マスター、治療が終わった。2人はもう少ししたら目が醒める。私はもう少しだけかかるけど……移動中には完了する。つまり、準備おっけー』


マキナが俺の近くへ瞬間移動してやって来た。

ウリエルとアスタの治療が終わったらしい。

マキナは少し外装が剥がれて機械部分が丸出しになっている部分があるのだが、概ね活動に支障はないらしい。

自動修復機能と自己回復機能を併せ持つなんてやはり万能な機械だ。流石は神様。


「敵の拠点は分かっているな?」

「はい。旧政権派の兵達も共に向かいます」


アリスが俺の隣で静かに答える。

その後ろではやる気十分なナヘマーが目をカッと見開いて立って居た。


「私が我が魔王の道を切り開こう。なぜなら私は我が魔王の剣にして盾、さらには弓でもあり槍でもあるのだ」


お前職業兼任し過ぎだろ。剣だけでいいよ。


「ナヘマーは相変わらずだな……。私が魔王様をお守りするのでお前は周辺の敵の殲滅に当たってくれ」


ルシファーがやれやれと腕を振りながら指示を飛ばす。

しかし、ナヘマーは簡単に人の言うことを聞くような男ではないのだ。

俺の言葉には素直に従うのだがな。


「断る。私が我が魔王をお守りするのだ。貴様の出る幕はない。すっこんでいろ」

「何だと……?ナヘマー、魔王様の側近は私だ。貴様こそ我が物顔でしゃしゃり出てくるんじゃない」


勿論ルシファーも言われっぱなしで黙っているような男ではない。

こと、俺が関連するとすぐに頭に血がのぼる。


「はいはい、そこまで。喧嘩はしないでください。魔王様の御前ですよ」

「し、失礼いたしましたッ!我が魔王よ!」

「お見苦しいところをお見せし、申し訳ありません。魔王様」


分かったからナヘマー。五体投地せんでいい。


少し忙しくなるので次回の投稿は2月2日になる予定です。

その後はまた2日に一度投稿に戻る予定ですのでご容赦を。

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