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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十一章 魔界編 其の二
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奪われたモノ


「メフィストフェレス……!」

「アザゼルまで敗北するとは……。末恐ろしいな……リュート様は……。ゼクス様があれ程までに危惧するのも頷ける」


メフィストフェレスはそう言いつつ、意識を失って動かないアザゼルとファルファレルロとネヴィロスを見据える。


「さて、俺の任務はお前達を抹殺する事だったのだが……。これでは形無しだな……。ここは一旦引かせていただく」

「させるか!」

「だが!」


俺がさせまいと詰め寄ったところでメフィストフェレスは左手を俺の前に出して制止した。


「一つだけ、やっておかねばならない事がある……」

「何を……」

「それでは、リュート様」


そう言ってメフィストフェレスは俺の目の前から消えた。

アレは、転移魔法なのだろうか。それにしてはゲートと色や形が嫌に酷似していた。


「魔王様ッ!奴はまだ近くに居ます!アクア様が危ないッ!」

「そ、そうか……!しまった!アクア!」


ルシファーの声で俺は思考を現実に引き戻す。

何をしているんだ俺はッ!

奴等の目的がアクアであることは事前に知って居たハズなのに……!


「アクアァァァァアッ!」

「アクア様ッ!」

「フム、気付いたか……。だが、遅い」


俺たちがアクアがアスタを治療して居た場所まで戻ると既にメフィストフェレスが意識を失ったアクアを小脇に抱えていた。


「てめぇ!アクアを離しやがれぇッ!」

「さらばだ、リュート様。またいずれお会いしよう」


俺は猛然と突撃し、アクア奪還を図るが、メフィストフェレスは俺の拳が届く前にゲートの向こう側へと姿を消した。


「ちく……しょぉぉぉっ!」

「くっ……!私としたことが……ッ!一瞬、勝利に酔い油断してしまった……!」


更に捕まえていたはずのネヴィロスや意識を失って寝転がっていたアザゼルとファルファレルロまでもが姿を消していた。

どうやらメフィストフェレスが転移魔法によって連れて帰ってしまったらしい。


「クソッ……!クソッ、クソッ、クソッ!クソォォオォォォッ!」


俺の虚しい叫びが木霊した。


---


「アザゼルが最高戦力だと勝手に勘違いをしていた私の落ち度です……魔王様。申し開きもございません……」

「いや、俺も油断していたんだ……。すまん。それより、アリス達は無事なのか?アイツ……皆殺しがどうとか言ってやがったからな……!」


過ぎたことをくよくよしていても仕方がない。アリス達の安否が気になる。

アクア奪還には配下達の力が必要だ。


「うぇぇぇ〜、まま〜!ぱぱ〜!ふぇぇ〜ん!」

「こ、この声……!」


小さな女の子の声だ。

俺は躓きながらも急いで声のした場所へ向かった。

アクアと一緒に連れ去られたと勝手に思い込んでいたのだが……!


「エマか⁉︎」

「ぱ、ぱぱ……!ぱぱぁ〜〜!」


俺が抱き上げるとエマは俺の首に齧り付くようにしがみついてきた。

顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。


「ジンはどこだ……?エマ、ジンは?」

「ジン……、ままといっしょだった……」

「ジンはアクアと連れてかれたか……!」


くそッ!

いや、だが、ジンの居場所が分かっているだけマシだと考えよう。

それに、エマは今俺の腕の中にいる。


「エマ、大丈夫だ。パパがついてるからな。だから泣くな。な?」

「うん……。わかった……」

「魔王様、アリス達は無事です。どうやらマキナが善戦したようで……」

「そうか……」


俺は深呼吸しながらアリス達の元へと向かう。

大怪我をしているアスタを担いで、かなりのパーツを破壊されてしまっているマキナを拾い上げる。


周囲を見渡すと巨大な破壊跡が残っている。

マキナが全力で魔力を使用したのだろう。

しかし、これほどの超火力を以ってしてもメフィストフェレスを倒すことは叶わなかったという事なのだ。


アリスの元へ向かうと、アリスは怪我はしていたが大したことはなかった。

ベルも怪我をしていたが重症では無い。

二人の命が無事で俺も一安心だ。

俺はアリスに当時の状況をいくつか質問しておく。


「アリスとマキナはメフィストフェレスと戦ったんだよな?」

「はい、圧倒的な強さでした……。しかし、マキナも……」

「あぁ、癪な話だがマキナを作り出したのはあのローグだ。簡単に負けるような造られ方をしているはずがない」


マキナはローグによって俺を殺すために設計された機械だ。

俺、つまりは魔族や古龍種(ドラゴン)を殺すことに特化した性能をしているのだ。

更に、ローグの事だ。ある程度はミドにも対応出来るように神にすら攻撃力を持っているはずだ。


「メフィストフェレスは相当な強さのようです……。あの一瞬で短距離を移動する魔法……厄介な事この上ない……」

「ウリエルとアスタとマキナは当分動けません……。リュート様……どうなさいましょう……」


ルシファーとアリスは思案顔だ。

俺としてもどうしたらいいのかなんて分からん。


だが、目的はハッキリしている。


敵がアクアをさらった目的は分からんが、俺たちはアクアを奪還しなければならない。

ジンも一緒なのだろう。二人とも俺の大切な家族だ。絶対に生きて取り戻す!


「まずは敵の根城へ向かう。一旦魔王城を経由し、戦力の増強を図る。いいな?」

「はっ!」

「承知致しました、リュート様」

「了解した」


指示を出したところでさっさと城へ向かう用意をする。

ここから魔王城へはそこそこ近いはずだ。


「だが……何故奴らがアクアをさらったのか……。それが分からん……。ルシファー、分かるか?」

「いえ……。申し訳ありません……」

「そうか……。アリスは……どうだ?」

「そのことについて一つお話が……」


アリスがかしこまって俯く。


「何だよ……?」

「私とアクアの『血筋』について……です」

「血筋……?お前達のか?」

「はい。話すタイミングがつかめず遅くなってしまったことをここに謝罪いたします」


そう言ってアリスは跪いて首を垂れる。

胸の前で両手を組んで静かに頭を下げた。


「……私の父の姓は『エステリオ』。その名は、ネルヴァ・エステリオ。リュート様。貴方様の祖父にございます」

「は?」


思ったより冷たい声が出た。

俺の声に反応してポケットの中のドクロがカタッと震えた気がした。


待て待て、ネルヴァ・エステリオ?

へぇ、偶然だなぁ。俺のジイさんと同じ名前じゃねぇか。

んでもって俺の祖父ときたもんだ。うん、俺のジイさんの事だな?


よし、


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!クソジジイィィィィィィ!!!」

『ぎゃっふぅおおおぅうぁ!』


メキャ。

嫌な音を響かせながらドクロが地面にめり込んだ。


それを見たアリスが困惑した声を出す。


「あ、あの、リュート様……?」

「あぁ、アリス。待ってろ、このクズを今すぐ処刑するから」

「あ、あの……何をなさって……」

「ええい、ちょっと待ってろ!」

「は、はい……」


俺は無理矢理にアリスを黙らせ、粛清作業へと入っていった。


---

※この会話は二人にしか聞こえていません。


おいコラジジイ。


『な、なんじゃろな……?』


アリスがお前の娘だなんて初耳だぞ。親父の姉か?それとも妹か?どっちだ?


『た、多分バゼルの妹に当たるじゃろうな。しかしだな……』


どうせ異母兄妹だとか言うんだろうが!

この下半身おばけめ!

てめぇ、これ以上俺の知らないところに俺の親戚がいるとか止めろよ、マジで。


『いや、その心配は全てバゼルが断ち切ったはずじゃ。もうおらんじゃろ』


いるじゃねぇか目の前に!!

お前、異母兄妹とはいえ親父とアリスが兄妹だって事は……俺とアクアは従兄妹(いとこ)同士じゃねぇか!


『しょ、正直すまんかった。き、気づかんかったんじゃよ……』


あぁ……、もういいや……。

今更言ったって遅いのはわかってるんだよな……。

ま、まぁ従兄妹ならまだ問題無いだろう。

近親相姦には当たらないハズだ。

確か従兄妹ならギリギリ法律的にも許されるし。


んで、もう居ないんだろうな?信じるぞ?


『う、うむ。じゃからもう地面に叩きつけて簀巻きにするのは勘弁してくれんかのぅ?』


それとこれとは別だ。

---


「よし、終わった」


俺はジジイを地面に投げつけた後包帯で再度簀巻きにした。


『んむー!んむむむんむむー!(出せー!ここから出さんかー!)』

「黙れ」


知ったことでは無いな。


「アリス、続きを話してくれ。アクアがさらわれた理由は分かってるんだろ?」

「はい。お話しします……」


アリスはゆっくりとだが、全てを語った。


---


俺は静かに頷いて口火を切った。


「成る程な、それでか」

「はい。申し訳ありません……」

「あ、いや、悪いのは全部ジジイだしな。あのクソジジイが事態をややこしくしてやがるんだよ……。まぁいいや、アクアの無事は約束された。後は最悪の事態が起こる前にアクアを取り戻せば俺たちの勝ちだ」


目的は決まった。

まずは魔王城で戦力を集め、そして敵の本拠地を叩く。

そしてアクアとジンを奪還する。

これで奴らのすべての目論見を水泡に帰する事が出来る。


「マキナ、直りそうか?」

『ごめんなさい、マスター。時間がかかる。でも、戦闘前までには機体コンディションが万全になるように急ピッチで修理しておく……』


マキナは自身を修理するための『修理機(リペアー)』とアスタとウリエルを治療するための『回復機(リカバー)』を同時に運用している。

まだ万全では無いマキナには大きな負担になってしまうかもしれないが、腹に開いた大穴を治療できるほどの治療魔法を使えるやつはマキナとアクアだけなのだ。

アクアがいない今、マキナにやってもらうしか無い。

そして、マキナの身体には治療魔法が効果をなさない。自分で直すしか無いのだ。


「リュート様……、すいませんっす……。俺、足手まといっすよね……」

「アスタ、まだ怪我が完治してないんだ。当然だろう。だが、治ったらちゃんと働いてもらうからな」

「は、はいっす!勿論っすよ!いでで……」

「アスタ、安静にしていて。今は足手まといでも仕方がない。怪我が治らなければリュート様のお役に立てない」

「あう……、そ、そうっすね。じゃあ、ゆっくり休むっす!ぐぅ……」

「寝やがったぞこいつ」


ベルが宥めたら一瞬で寝やがった。

この切り替えの早さ見習いたい。

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