奴隷と勇者
今回は勇者回
---勇者side---
勇者 佐藤祐奈は溜息をついていた。
現在祐奈は檻の中にて、1人の少女と身を寄せ合っているのだ。
側にはトレイが一つ、無造作に転がっていた。
「どうしてこうなった……」
事は数日前に遡る。
数日前
王都を出発した祐奈は考えた。
先ず魔王は魔界にいるのだから魔界に行くべきだ。
そう思った祐奈は魔界に行くために人間界の端っこまで移動することにした。
しかし、徒歩では時間がかかり過ぎるし、祐奈は馬に乗れないので、馬車に乗せてもらうことにした。
(馬車はなんてタクシーみたいなもんでしょ)
とか思っていた祐奈は出来るだけ安く馬車に乗りたかった。
お金はあるけど現在自分にはお金を稼ぐ手段が無い。節約するに越した事は無いだろう。
そう思ってどう考えても安過ぎる馬車を選んでしまったのだ。
祐奈が馬車に乗った瞬間変な男が何人も乗ってきて祐奈を縛り付けた。
(え……⁉︎何⁉︎もしかして……騙された⁉︎)
今更気付いても遅かった。顔に布を押し付けられた祐奈はゆっくりと意識を手放した。
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それから数時間がたった。
「お姉ちゃん……大丈夫……?お姉ちゃん……」
すぐそばから声がして祐奈は意識を取り戻した。
「はっ……う、うん大丈夫……だと思う。」
「良かった〜。全然目が覚めないから病気なのかと思っちゃったよ」
少女が安堵の表情で祐奈を見ている。
少女の見た目は10歳位だ。赤毛で頭に猫耳が生えてる。
祐奈は猫耳美少女と2人で檻の中にいた。
後で処女膜を確認してみたが、まだ犯されてはいないらしい。
(良かった……)
寝てる間に犯されては抵抗出来ないが、今なら余裕で抵抗できる。
勇者は剣なんてなくてもその辺の盗賊レベルなら素手で殴り殺せるくらいには強いのだ。
「私は祐奈、君は?」
「私はメイ、よろしくね、お姉ちゃん!」
猫耳を揺らしながらメイは嬉しそうに答えた。
「その猫耳って……」
「これ?私は猫の獣人族なの……亜人族の女の子はよく襲われて売られちゃうんだって……」
「亜人族って……確かエルフとかドワーフとか獣人とかだよね……?」
「そうだよ?」
(亜人族は強い種族だと大臣に教わったんだけどなー、女の子や子供は違うのかなぁ……?)
取り敢えず、必要な情報を聞こうと話題を変えた。
「あの、ここが何処かわかる?」
「ごめんなさいお姉ちゃん……私にもよくわからなくて……」
悲しそうに謝ってくるのでかなり申し訳ない気分になった。可愛い。
「いやいや、良いの良いの!気にしないで!そういえば、さっき売られるとか言ってたけど……」
「うん、私達は奴隷なの……もうすぐ誰かに売られちゃうんだよ」
「ど、奴隷⁉︎」
元日本人の祐奈には馴染みの無い言葉だった。だが、ここはファンタジー異世界だ。奴隷制度だってあるのだろう。
「奴隷ってあの、こき使われるやつ?」
祐奈は奴隷と言われてもそれがイマイチ頭の中に浮かんでなかった。
自分が奴隷になったなんて、現実味が無いのだろう。祐奈訳がわからなかった。
(なんで勇者が奴隷になんの⁉︎)
「私達は女の子だから夜のお世話とかさせられるんじゃないかな……お姉ちゃんは美人だし」
(夜の世話⁉︎ちょ……それだけはごめんだよ……!)
この子はまだ10歳位なのに自分の運命を受け入れているのだ。
正直、祐奈1人だけだったら、直ぐにでも鎖を引きちぎって大騒ぎを起こして逃げられるが……。
(どうしたもんかね……)
そう考えているうちに夜は更けていった。
晩御飯はパンが一つとスープが少しだった。
一応1人に一つずつあったが、あんまり食欲がなかった祐奈はメイにパンをあげた。
メイはお母さんと2人で暮らしていた所を襲われて奴隷にされたらしい。
そのお母さんはメイを守ろうとして殺されたらしい。
メイはそう泣きながら話してくれた。
祐奈はいたたまれない気持ちになってメイを抱きしめた。
メイは祐奈の胸に縋り付いて泣いた。
その後、メイは泣き疲れたのか寝てしまった。
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ここで冒頭に戻る。
今、メイは祐奈の腕の中で就寝中だ。
さぁ、脱出計画を立てよう。
まぁ計画なんてたてる必要も無いが。
逃げるのなんて簡単だ。でも荷物とか剣とかも取られているのだ、そう簡単にはいかないだろう。
(剣さえあればこんな所吹き飛ばしてやるのに……)
あの剣はハゲ大臣に貰った大切な物だ、絶対に取り返す。
あとお金とかも盗られてしまったのだ、あれが無いと生活出来ない。
(馬鹿にして……私は勇者だぞ……絶対に許してやんないんだから……)
祐奈はそう決意し、メイを撫でた。
翌日。
朝起きたらもうメイは起きていた。
昨日は夜更かししてしまったから仕方ない。
「おはよう、お姉ちゃん!」
祐奈は眠たい目を擦りながら挨拶を返した。
「うん、おはよう、メイ」
メイは少し元気になっていた。やはり悩み事や愚痴は人に話すべきだ。
そういえばお腹すいたな……。
「朝ご飯は?」
「朝ご飯はないよ?」
「え?」
「無いよ?」
「そ、ソウデスカ」
2食連続でご飯を抜いた事なんて生まれてこのかた一度もない祐奈は腹が減って死にそうだった。
暇だったので祐奈は一日中俺の外を観察していた。
すると幾つか分かったことがある。
まずは、この牢獄(ここがどういう建物かわからないので便宜上そう呼ぶ)、人が少ない。
事務所みたいな所に常に数人、見回りが1時間に一回。
1時間も時間があれば、自分の錠とメイの錠を外し、檻を破って事務所に突入するのなんて簡単だ。
剣が何処にあるか分からないが、檻の鉄パイプを使えば何とかなるだろう。
『ブレイブフォース』は得物さえあれば発動可能なのだ。
よし、決行しよう。
「メイ、脱獄するよ」
「え、何言ってるの?そんなの出来っこないよ!」
「大丈夫、お姉ちゃんに任せて……アイツが事務所に戻ったら始めるよ」
「わ、分かった……でも……本当に大丈夫なの……?」
メイは不安そうだった。
(大丈夫、お姉ちゃんが助けてあげる)
そして、見回りが事務所に戻っていった。
その瞬間、祐奈は自分の手錠を破壊した。
「よし!」
「え⁉︎」
メイは驚愕の表情だった。
当然だろう、見た目は華奢な女の子が鉄製の鉄製を素手で破壊したのだから。
「よいしょ!」
さらに、メイの手錠も破壊。
「す、凄い……」
「まだまだ行くよ〜」
そう言って祐奈は檻に手を伸ばす。
「ぐぐぐぐ……」
祐奈が両腕に渾身の力を込める。
鉄製の檻はグニャリと形を変えて、人1人が通れるくらいの隙間ができた。
「よし、完璧!」
仕上げに鉄パイプを引き抜き、それをヒュンヒュンと振り回した。
「ちょっと軽いけど、合格かな。いくよ!メイ!」
「う、うん」
メイは目を白黒させていた。
祐奈はメイと2人で廊下をダッシュした。
(目指すは事務所!)
2人は事務所に突入した。
中の男達の顔に驚愕の色が浮かぶ。
「なっ⁉︎てめえら!どうやって出てきたんだ⁉︎」
「このっ……クズ野郎!」
祐奈は思いっきり鉄パイプを男の頭に振り下ろした。
「あがっ⁉︎」
男は情けない声を上げながら地面に倒れ伏す。
「このアマぁ……大人しくしてろ!」
数人の男が祐奈に襲いかかってくる。しかし、この程度の人間、勇者である祐奈の敵ではない。
祐奈の持つ鉄パイプが徐々に光を帯び始める。
「あんたら全員!檻の中で死ぬまで後悔しな!『ブレイブフォース』!」
次の瞬間、事務所は木っ端微塵に吹き飛んだ。
多分、投稿ペースが落ちます。というか昨日までが異常だった。