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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十一章 魔界編 其の二
188/220

加護の魔法


「さて、では魔王城へと移動しましょう」


ルシファーが俺とアリスの会話を打ち切って言った。

そうだな。そろそろ向かうべきだ。

世話話なら城でも出来るからな。


『話は終わった?』

「なんだ、静かだったな。マキナ」

『暇だったから休眠状態(スリープモード)になって魔力を貯めていた。出来るときに節約しておく』


なんか良妻みたいなこと言いだした。

そうだったな。コイツは神様だが、魔力で駆動する機械の神様だからな。必要なときに魔力が無くなっては困る。

今は魔力供給のできる祐奈がいないから、尚更だな。


「今から移動だ。変わらずに護衛を頼む」

了解(アクセプト)、マスター』


そう言ってマキナは静かに首肯した。


さて、音頭をとるのはアリスだ。

やはりこの中でも相当な古株らしい。


「気をつけるべきは敵の刺客ですね。我々の……というより、リュート様のお命を狙って来るでしょうから」

「大丈夫っすよ!俺が絶対守るっすから!」


アスタはいつも調子がいいな。

お調子者って感じだ。このテンションにはよく助けられている。


「アスタ。慢心してはいけない。常に周囲に気を配る必要がある。例えば、今私たちが囲まれてることに気がついてないのはアスタだけ」


ベルの言葉に反応して、アスタの頭の上辺りに『⁉︎』ってマークが出てきたように見えた。

使い方間違えとる。


「き、気付いてたっすよ!」

「嘘。アスタは油断していた。皆んな気付いてた。アスタは間抜け」


ベルによるグサリ。

ごめんなさい。俺も気がつかなかったです。アスタ、仲間だな。


「全く……アスタ。ここは今や敵地といっても過言でもない場所だ。気を抜くんじゃない。すぐに命を無くすぞ」


ルシファーによる2グサリ。

ごめんなさい。許して下さい。


「アスタ。すぐに油断する癖は治ってないようですね。しかし、その様子ではまだ未熟と言わざるを得ません」


アリスによる3グサリ。

スリーアウトチェンジ。


俺の配下は悪気があるんじゃない。

アスタが油断してたのも事実だ。それに命がかかってるんだしな。だからアスタは責められて居る。

でも、俺もついでに攻撃食らってるんですけど……。


「リュート……。私も気がつかなかった……」

「そうか……。アクア。俺たちも気をつけような」

「うん……。でもリュートは気付いてて凄い……ね」

「あ、あぁ……、うん」


俺は罪悪感に苛まれながら嘘をついてしまった。

アクアにだけは本当のこと言えばよかったな。


「みんな、なにいってるのー?」

「……ぼくきづいてた」


嘘つけ息子よ。

3歳児にそんな索敵技術があってたまるか。


「うぅぅぅ、そ、そんなに言わなくてもいいじゃないっすかぁ!今から頑張るっすよ!」

「では……戦闘と参りましょう」


そういって全員で向き直る。

ベル達が言うには俺たちは今や敵に囲まれて居るらしい。

小屋の外にはたくさんの刺客がいるのだろう。


さて……、どうしたものか。


「『獄炎爆熱陣(ヘルフレイムフィールド)』」


いきなりベルが魔法をぶっ放した。

手加減なしの全力全開範囲魔法だ。

ベルの得意魔法は炎魔法の中でも広範囲を一気に巻き込む超攻撃型魔法が得意なのだ。

小回りが効かない分、とても威力が高い。


獄炎爆熱陣(ヘルフレイムフィールド)』は小屋の壁を爆砕し、周囲を一気に焼き払う。

更にその炎は燃え続ける。


「いきなり飛ばしますね……ベル」

「これくらいはしなければならない」


そう言ってベルは更に追加で魔法を詠唱した。


「『獄炎流星群(ヘルフレイムスターダスト)』」


詠唱が終わると同時に空から大量の隕石が落下してきた。

それは黒い炎に包まれた流星。紛れもなくベルのものだ。


そしてそれは着弾と同時に大地を焦がし、敵を燃やし尽くした。


「「「ぎぃぃぃやゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!」」」


まるで人がゴミのようだった。


まず一撃目の『獄炎爆熱陣』で小屋を破壊しつつ周囲を炎で包み込み、逃げ場をなくす。

そして、『獄炎流星群』によって一気に殲滅する。

シンプルでありながら強力だ。


アリスはベルの魔法に目を見張って言った。


「やはりベルの広範囲殲滅型魔法の力は相変わらずピカイチですね。それに、10年前に見た時よりも強くなっているようです」

「私も練習していたから」


そう言って鼻を高くするベル。瞬殺だったもんな。流石だと思うぜ。

しかし、アリスは褒めるだけでは終わらなかった。


「しかし……、もう少し力が出るのでは?もしやとは思いましたが……貴方達、まだリュート様に『加護』を頂いていないのですか?」


『加護』?なんだそれ。


しかし、俺の反応をよそにアスタとベルは硬直していた。


「あ……、あ……」

「アスタ……」


二人で顔を見合わせて顔色を青くしている。

何なのだろうか。


「お前達……まだ……⁉︎……くっ、やはりか……。あの時言っておくべきだったのだ……どうりでウリエルに一方的に負けるハズだ……!」


ルシファーは歯噛みして吐き捨てるように言った。

珍しく機嫌が悪い。

というか加護って何?


「な、なぁ……、加護って何のことだ?」

「はい、加護とは……、主人と契約することで普段以上の力を発揮することのできる魔族のみの使える魔法です」

「魔族にしか使えないのか。何でだ?」

「加護の魔法とはバゼル様の作り出したした魔法なのです。ですから、魔族にしか使えない魔法を編み出したのです。他種族に使われてはデメリットしかありませんから」


あ、そっか。

当時は人族と仲が悪かったから流出してもいいように作ったのか。

まぁ今も仲悪いけど。


「え、じゃあ契約したら強くなるって事?」

「はい。主人との魔力経路をつなぐ事で通常時よりも高い戦闘能力を発揮することができます。その分魔力の消費が激しくなりますし、疲労も通常の比ではありませんが」

「げ……、マジかよ……凄えな」


それで、ベルとアスタも俺と契約するってことなのか。

通常時から強化魔法を行使したような状態になれるという事だ。


「加護の契約が完璧にした出来ていれば、8年前に勇者に遅れをとることもなかったのですが……。当時は契約していたリュート様が幼く……」

「つまり、俺が小さくて弱かったから加護の魔法でもそんなに強くならなかったって事か?」

「はい。その通りです」


加護の魔法ってのは契約者が強ければ強いほど強力に作用するらしい。


まぁ仕方がないよな……。

鍛えてはいたが当時はまだ一般的な8歳児と同じような教育を受けていたのだから。


俺は天才じゃない。


確かに、生まれた家柄は良かった。それに、生まれつき別世界の知識があったし、龍の血を手に入れ、不死身の体になった。

だが、俺自身は普通の魔族だ。

8歳の頃から毎日戦いに明け暮れていたから強くはなった。だが、別に俺は天才というわけではない。環境が俺を強くしたのだ。

確かに、俺は8歳の頃から魔法を無詠唱で撃てた。だが、別に無詠唱で魔法を撃つぐらい簡単だ。大人なら誰だってやれる。

例えるなら中学校の計算を小学生の頃から出来た、という感じだろうか。


だから、8歳児の俺と契約したって強くなれるはずもないのだ。


「で、親父は……勇者との決戦で死んじまったんだよな?」

「はい。当時の契約者や第三夫人セラフト様、第四夫人サシャ様と共に……。エレン様は当時は出産間近でしたので……」

「留守番してたのか……。で、アリス達は母さんの護衛って感じか?」


アリスの話ぶりからして母さんも戦えたのだろう。

アクアもそうだ。一応戦線から遠のいてもらってはいるが、アクアだって中々腕は立つのだ。


「その通りです。そして、バゼル様は勇者と相打ちとなり、セラフト様は死亡し、サシャ様は行方が分からず……。更に当時の契約者はルシファーを含め、多くのものが離散しました……」


それで、その後魔王城に残ってた部下は勇者一人に惨殺され、俺も殺されかけた、って事か。


「その、当時の契約者なんだが……名前は分かるか?」

「勿論でございます。『七大罪(セブンスシン)』の中からは三名。ベルゼブブとベルフェゴールとこの私です」

「アリスも親父の契約者だったのか?」

「はい。エレン様が身篭った際にバゼル様の命により契約を打ち切りましたが」


成る程。俺を守れと言われたわけか。


「そして、知っているとは思いますがルシファーとアスタロト」

「え、ベルは?」

「ベルは違います。三将の中でベルのみが契約をしておりませんでした」


ベルだけなんで契約していないのだろうか。


「何でなんだ?」

「私には預かり知らぬところでごさいます」


昔に何かあったのだろうか?俺の生まれる前のことなので推測しかできない。

まぁいいか。


「そして、ここからはリュート様も知らぬ人物である可能性が高いですが……。アドラメレク、リリス、ナヘマーの3人」

「ソイツ達は死んだのか?」

「いえ、あれほどの者達です……。死体が見つかっているのならばまだしも、二人は生きているでしょう」

「二人?一人は死んでるのか?」

「いえ、ナヘマーは既に見つけているのです。私の協力者として動いてくれています」


成る程。強い仲間がいるのは心強いな。

それに、旧政権派は向かい風だと思っていたのだが、戦力的にはそうでも無いようだ。

そして、俺という旗頭も今はいる。今からでも盛り返せるはずだ。


「そして、最後の一人。最大の裏切り者。バアルです……!」

「バアル……。って、確か……ゼクスとかいう野郎か!」


俺は少しイラついて言った。

あの野郎……、裏切り者だったのか!


「いいえ、当時バゼル様と契約していたバアルはビリス・バアルという男。ゼクス・バアルはその息子です。何があったのかは知りませんがゼクスはエステリオ家を裏切り、今の新政権派のリーダーとなったのです」

「そのビリスって奴はどうしたんだ?」

「死にました。魔王家に対する不信が爆発し、暴動が起こり、それを鎮圧した時に死亡しました」


暴動を鎮圧して死亡……。

その暴動の原因は魔王家に対する不信。


じゃあその不振の原因は?


分かってる。俺だ。


バラバラになった魔王城。

そこには王がいないのだ。国民の不信も募ろうものだ。

俺のせいだというわけだ。俺のせいでビリスは死に、俺を恨んだゼクスは自分で国を良くしようと動いた。

そういう訳か。


「魔王様。貴方のせいではありません。当時の貴方はまだ責任能力の有無を問われるべき年齢ではありませんでした」

「ルシファー。そうやって割り切れるもんじゃないんだよ」


それだけは言い訳してはならない。

俺は精神年齢だけは高いのだ。責任能力ならある。

だが、その責任を全うしなかったのだ。


「とにかく、内乱で勝利するには散らばった仲間たちを集める必要があるな……。アドラメレクとリリスを捜そう」

「はっ、仰せのままに……!」

「御意」


ルシファーとアリスが頷く。

こう言ったもののアリスだって二人をずっと探しているのだろう。

だが、見つからないのだ。期待値は低いと言って良いだろう。


「んで、俺はこれからどうしたら良いんだよ?」


そう言ったのはウリエルだ。

一応さっきまで正気をなくしていたし、明確に仲間とは言えないのでお縄についてもらっているのだ。

先ほどまでの血走った瞳は鳴りを潜め、前に見たようなヤンキー野郎に戻っている。


「取り敢えず、お前に一個言っておくことがある」

「あん?なんだよ」

「お前、俺たちに借りがあるよな?いきなり突っかかって来て生かしてやってるんだから」

「あー、まぁそうだな。借りと言えば借りだ」


やさぐれた調子でウリエルは言う。

まるで生活指導を受けているときのヤンキーだ。「はやく終わんねーかなー」って顔してやがる。


「って訳でだ。俺たちに協力しろ」

「あ?」

「おいおい、これは頼んでるんじゃねーぞ。協力しろ(・・)って言ってんだ」


少しドスの効いた声で凄む。

もちろん俺の後ろには恐ろしい男達がいるのだ。

ルシファーなんかは俺の言うこと聞かないと分かると遠慮なく殺しにかかるだろう。

ルシファーは友達にも容赦しないやつだ。


「あ……あー、分かった。これで良いのかよ?」

「よし。裏切ったらルシファーがお前を地の果てまで追いかけるからな」

「チッ、分かったよ。俺だってルシファーに追いかけられ続けるのは勘弁だ」


よし、結構大きい戦力を仲間に出来た。

コイツは今一時的に仲間になっているだけだが絶対に裏切らないだろう。

こういう輩は自分のメリットとデメリットをちゃんと見極めている。

ウリエルにとっては、俺と共に戦うことで生まれるデメリットよりも俺と共に戦わないことで生まれるデメリットの方が大きいのだ。


「さて、誰かが追加でここにくる前に移動するか。馬車は壊れちまったし……。少し歩いて次の街で乗り物を調達するか」

「そっすね!じゃあ行きましょう!」


俺たちは一行にアリスとウリエルを加えて歩を進めるのだった。

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