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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十一章 魔界編 其の二
187/220

一夫多妻


---リュートside---


「ルシファー、合流地点ってのはどの辺だ?」

「もう少しです!」


取り敢えず馬車を走らせる。

既に半壊してしまっているのだが、馬が無事なのでセーフとする。

乗り心地は最悪だ。ガタガタと揺れている。そもそもタイヤにゴムが付いて居ないのだから当然といえば当然だ。


「ううー、きもちわるいよー」

「えま、……がまん」


ぼちぼち三歳になろうかという双子の子供達もしんどそうだ。

当たり前か。こんな小さな子供には少し過酷すぎる。

一応魔族なので他種族の普通の子に比べると丈夫な体をしている。

正確にいえば最も体が丈夫な種族は竜人族だが、二番は魔族だ。

ちなみに妖精族と人族はかなり身体が弱い。いや、弱くはないのだが、竜人族や魔族の基準で考えると弱い。

その点、妖精王のおっさんは一体どうなっているんだ?エルフとオーガのハーフなんじゃないだろうか。

ちなみにオーガは魔族である。


「お母さんと会える……。楽しみ……」

「そうだな。ジンとエマの顔を見せてやんねぇとな」


そう言えば俺もアクアもアリスと会うのは8年ぶり……か?

アクアにとってアリスは実の親なのだ。気分も高揚しようものだ。


「ジン、エマ。おばあちゃんに逢えるぞー」

「おばーちゃん?」

「おばあちゃん……?」


2人揃って不思議そうな顔だ。

おばあちゃんが何かわからないのかもしれん。


「おばあちゃんってのはママのママだ。分かるか?」

「ままのまま?」

「ままのままってなぁに……?どういうこと……?」

「やべぇ、俺にはこれ以上は無理だ」


ママのママが何か?と聞かれてしまってはどう説明したらいいのかわからん。

なんしかおばあちゃんなのだ。ママにママがいるって事に実感が湧かないのだろうか?

まぁこの子達にとっては初めてのおばあちゃんなのだ。分からないのも無理はない。


「祖母も家族ですよ、ジン様、エマ様」

「るしふぁーはかぞく?」

「いいえ、私はリュート様の配下でございます」

「じゃあかぞくは?」


エマはルシファーに家族がいないのか?と聞いているらしい。

喋るようになったら質問が増えたな。子供ってのはそういうもんだ。


「家族はいません」

「えまはかぞくじゃないのー?」

「家族だよ。ルシファーもアスタもベルもみんな家族だ」

「ほんとー⁉︎」


俺はルシファーに変わってエマの頭を撫でながら言った。

嬉しそうだ。目をキラキラさせている。非常に可愛い。マイドウターイズエンジェル。勿論マイサンだってエンジェルさ。いや、俺の下半身のことじゃなくて。


やはりエマはこういう答えが欲しかったのだろう。

ルシファーは融通が利かないからな。絶対に「自分も家族だ」とは言わないだろう。


「魔王様……」

「くぅ〜!俺もリュート様の家族っすか!嬉しいっす!」

「悪くない」


三人とも俺の事本当好きだな。

めっちゃ嬉しそう。ルシファーに至ってはなんか涙目だし。


「……リュート。あそこ……かな」


アクアの指差す先には小さな湖があった。

その辺りを合流地点としているらしい。全てルシファーのセッティングだ。


「ルシファー、どの辺りだ?」

「東側です。すぐ側に小さな小屋がありますので……」

「良し、真っ直ぐ向かうぞ」


俺たちは気持ちを切り替えて待ち合わせ場所へと向かうのだった。


---


「見つけました!魔王様!アリスです!」

「良し。どうやら無事みたいだな……嫌な予感が的中しなくて助かった……」


後で聞いたことによると当たっていたと言えば当たっていたのだがこの時の俺には知る由もない。


「アリス!」


俺は意外なほど大声を張り上げてアリスに呼びかけた。

気持ちが先走る。


「お母さん……!」


アクアも久しぶりに出会う生き別れの母に対してずっと気持ちが高揚していたらしい。


「リュート様……。アクア……。本当に久し振りですね」


アリスは変わっていなかった。

いや、正確に言えば見た目は変わっていた。片足は無くなっていたし、身体中に痛々しい傷跡がいくつも残っている。

しかし、アリスは変わっていなかった。

昔と変わらず、俺たちを包み込むように抱きしめた。


「アリス……。すまない……。ずっと……ずっと……魔界に行ってやれなくて……」

「良いのです。良いのですよ。リュート様。貴方が生きていた……唯それだけで、良いのですから」


アリスはそう行って俺とアクアの背に回した腕にギュッと力を込めた。

俺は両親の記憶が薄い。父親に至っては記憶に無い。だが、母親とはこんな感じなのだろう。

前世の母親の事はもう40年以上前の話になるが割と覚えていたりする。


「お母さん……、お母さん……!生きてて……良かった……!」

「アクア……苦労をかけましたね……。それにしても、結婚して子供も生まれているなんて……」


あれ、もしかしてヤバイか?

俺はアリスに何も許可を取らずにアクアを嫁にもらってしまっているのだ。あまつさえ子供もいる。

もしかして配下としては何も無いが母親として文句があるのだろうか?


しかし、それは杞憂だった。


「アクア……、これからもリュート様の妻として励むのですよ」

「……うん。頑張る」


アリスの言葉に俺はホッと胸を撫で下ろす。


「夜の方も問題はありませんか?エステリオ一族の男性は総じて性欲が旺盛ですから……」


思わず叫んだ。

否定はしないが言い方ってもんがあるだろうよ。


「何言っちゃってんの⁉︎アンタその子の母親なのに!」

「大丈夫。……のハズ……」

「大丈夫だから!大丈夫だからやめろ真面目に答えんな!!親子でそんな会話すんな!せめて俺のおらんところでやれ!」


確かに最近は忙しくてご無沙汰だとはいえ、ヤるときはきっちりヤってるさ。

俺だってこの若い体を持て余し気味なのだ。出来るときは長い事アクアを付き合わせてしまっている。

ちなみに前世では童貞だったので、専ら自家発電でした。それに仕事が忙しすぎて自家発電すら中々出来なかった。

ガッデム!ブラック企業!


「子供も大きくなってきたから……。ひと段落したらまた欲しい」

「え、そうだったのか、アクア」


初めて知ったが、アクアはまだ子供が欲しかったらしい。

あまりに忙し過ぎて子育てしている暇がないので当分お預けかと思っていたが、嫁の要望とあれば仕方がない。

魔界の内乱の一件が集結したら子作りに励まねば。俺だって子供欲しいし。


「子供が増えるのは良い事です。世継ぎは大いに越した事はありませんから。幸いにして既に長男であるジン様がいらっしゃるのでそこまで焦る必要はありませんが」


アリスの言葉に一応頷いておく。

やはり世継ぎがどうとか考えなきゃいけないんだな。

奔放な生活を送ってきたので王様としてやらねばならないことを殆どやっていない。

やったことといえば子作りぐらいだ。いや、流石にもうちょっと他にも色々やってるけども。

人間界以外は全部の国に行ったしな。ちゃんとそこの王様達とも仲良くしたし。まぁ獣人界とはまだ同盟を結べていないのだが。


「ところでリュート様。今はアクアしかいないようですが……。他の妻は今どこに?」

「他の妻……?って、いねぇよ!アクアだけだよ!アホか!」


一瞬何言ってんのか分かんなくて考えただろうが!義理の母親にこんなこと言われると思わなかったぞ。

配下は全員一夫多妻推進派かよ。お前らみんなしておんなじことばっかり言いやがって!


ハーレムには確かに憧れはあるが、それを現実でやるかと言われれば答えは否だ。

2人目の妻を迎えた時のアクアの顔を想像したらとてもじゃないがそんな気分にはなれない。いや、案外ケロッとしてそうだが……。

いや、まぁそれは置いておこう。というか、そもそも俺には子供が2人もいるんだぞ。そんな節操なしな真似が出来るか!


「何と……!妻が1人……ですか?」

「珍しいのか?」

「はい。具体的に言うと……バゼル様は4人囲ってました」

「4人も囲ってたのかよ!俺の想像してた親父像がガラガラと音を立てて崩れていくんだが⁉︎」


強くてかっこいい俺の最終目標的な魔王だと思ってたのに……。とんだカス野郎じゃねえか。


「いえ、4人でも少ないぐらいですよ。先々代魔王様に至っては10人ほど囲ってましたし。有名な話では先代竜王は25人囲ってたそうですよ?」

「ジジイィィィィィィ!!!」


俺は咆哮した。

ここで驚愕の事実が判明。俺の爺さんは下半身おばけでした。


---

※注:二人にしか聞こえていない会話です


テメェは全ての女性と非リアの敵だ!くたばりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

元非リアとして!俺はお前を断罪する!

というか囲い過ぎだろ!100歩譲って親父はもういいよ!ジジイ!テメェはアホか!


『ヒィィィ!久々の出番がコレってあんまりじゃ孫ォ‼︎』


ウルっセェェェぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

大体25人って何だ25人って!アホか!いや、そこまでいくと逆に尊敬するわ!


『い、いや……。ワシは10人しか囲っとらんし……』


『しか』ってなんだ!反省してねぇのか!


『ワ、ワシは平等に全ての妻に愛を注いだのじゃ!反省はしておらん!』


死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

---


取り敢えずジジイの入ってる髑髏を地面に叩きつけておいた。

バキャ!という小気味の良い音が鳴る。大丈夫だ。粉々に成る程はやってないから。


「妻が一人って変なのか?やっぱり」

「はい。変です」


この女、言い切りやがった。

まぁ25人も囲ってる奴が居るのだから変にも見えるだろう。

だが、俺は意思を曲げるつもりはないぞ。絶対にな。


俺は髑髏を拾い上げて包帯で簀巻きにしておく。

また口を聞けないの刑に処してやろう。


「ところでジン様とエマ様は……」

「あのさ、別にアリスはジンとエマのこと呼び捨てでいいんじゃないか?」

「「ダメです」」


俺の提案に対してルシファーとアリスが同時に答えた。

ダメなのか。


「主君の子は主君も同義。呼び捨てなど以ての外です。アクア様はアリスの実の娘ですので構いませんが、ジン様とエマ様はいけません」

「そ、そんなもんなのか……」


なんだか配下二人の剣幕に押されてしまった。

しかし……少し不思議なんだが、親父は四人も妻がいたのに何で子供が俺だけなんだろうか。

少し気になるところなのだが……。親父だって魔族なんだからいい歳してただろうに。


「なぁ、母さんは何人目の嫁なんだ?」

「確か……二番目です」

「二番目なのか」


なのに俺が長男なのか。


「はい。しかし、一人目の妻であるアナ様とエレン様はほぼ同時に妻となりましたので……」

「あ、そーなのか」


成る程、俺の母さんは二番目の嫁で、俺は何故か長男。しかし、ほぼ同時に嫁になるとは……文化が違うなぁ……。


多分俺が長男な理由は俺の母さんの方が早く子供を宿したとかそんな感じなのだろう。

と、思っていたのだが、事態は結構重たかった。


「アナ様はお子様を授かるとすぐに容体が急変し、やがて……お腹の中のお子様と共に亡くなられました」

「そ、そうだったのか……」


想像以上に重たい話に俺は絶句した。

もし俺がジンとエマとアクアを同時に亡くしたら……、そう思うと気が狂いそうだ。


「更に、第三夫人であるセラフト様は勇者との決戦時、死亡が確認されました。そして、第四夫人であるサシャ様はその後行方不明でございます」

「で、第二夫人である母さんは俺を生むと同時に死亡……か……」


キツイ……。

嫁が四人とも死ぬとかキツすぎる……。

しかも親父はその場で一緒に死んで居るのだ。


「その為、リュート様には御兄弟は一人もおられません。ですから、貴方だけが我らの希望なのです」

「………………」


俺は何も言えなかった。

俺には腹違いではあるが、兄がいたのだ。しかし、その兄は生まれてくる前に死んでしまった。

その後、弟や妹ができたかもしれない。だが、それもみんな死んでしまった。


「ですから、子孫繁栄は貴方様の急務でもあります。勿論お妃様が多いに越した事はありませんよ」

「いや、一夫多妻を推進してくんじゃねーよ」


真面目な話だったから俺も真面目な態度だったのに。

子作りはするけど一夫多妻はしねぇよ。

リュートくんが一途に見えるけど特に気になる異性がアクア以外にいないというだけです。要するに一途やん

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