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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十一章 魔界編 其の二
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狂った天使


「お待たせ致しました、魔王様」


ヒュンッ!と空気を裂く音を立てながらルシファーが帰って来た。

まるで瞬間移動のように現れたが、流石にこのメンツだ。俺たちは慣れている。

初めてみるはずのマキナも全く動じていない。自分も瞬間移動できるので珍しくも無いのだろう。


「ルシファー、報告を聞こうか」

「はい、現在何故か新政権派は動いておりません。罠かも知れませんが、今が好機かと」

「魔王城へ向かうのか?協力者は信用できるのか?」

「はい、今から魔王城へ向かいます。協力者の件ですが、信用に値します」


ルシファーは理由も言わずにそう言い切った。


「ルシファー、何故そいつが信用できるんだ?理由はあるのか?」

「それは伏せて欲しいとの事です。自分が直接話す、と……」


信用出来んやつと直接会えるわけがないだろう。

ルシファーも自分が無理を言っていることを理解している様子だ。

だからこそここは白黒はっきりさせておく必要がある。

俺1人ならば問題ないが、今はアクアや子供達までいるのだ。細心の注意を払って臨むべきだ。


「話にならんな。知っているのなら答えろ。これは命令だ。その協力者とやらは誰だ?名前は?」


ルシファーは目を伏せ、渋々といった態で言った。


「協力者の名はアリス・アスモデウス。元『七大罪(セブンス・シン)の1人です」

「ア、アリスだって……⁉︎」


俺は愕然とした。

アリスって確か……死んだはずだぞ⁉︎

俺は死体を確認した!確かにあの時アリスは死んでいたはず……、いや、死んでいなかったのか?

心臓が動いていなかったとしてまだ生きている可能性はあった。

だが……、あの時アリスは一部体が欠損し、大量の血液を流していた。とても助かったとは思えない。


「生きていた……のか……?」

「はい」

「そ、そりゃ……、俺をさぞかし恨んだだろうな……」


俺は自嘲気味に行った。

俺は知らなかったとはいえ、生きていたアリスを放って魔界を出たのだ。


「いえ、彼女は……、貴方の生存を聞いて涙ながらに協力を申し出てくれました。彼女は、未だに貴方に忠誠を誓っています」


ルシファーの静かな言葉に俺は両の目を見開いた。


「貴方は……、いえ、私達は……、この魔界をバゼル様の時代の様な平和な魔界に戻さねばならないのです。どうか、前を向いて下さい。我が主よ」


俺はルシファーのその厳かな声に背筋を伸ばした。


「貴方が前向かねば、我等は前へと進めません。どうか……」

「ああ、そうだな……」


俺はここで腐っていてはダメなんだ。

感情では俺は只の裏切り者だと自分自身を蔑む。

しかし、俺の立場がそれを許さない。俺はこの魔界を守る義務がある。


だって俺は……魔王の息子だから。


「俺が責任持って新政権派を叩き潰す……。ルシファー、行くぞ、魔王城へ!」

「ハッ!どこまでもお供致します!」


ルシファーはその場に膝をつき、首を垂れ、叫ぶように言った。


「俺もっすよ、リュート様!」

「私も、リュート様を守り続ける」

『マスター、貴方の御心のままに』


アスタ、ベル、マキナもルシファーに続いた。

そして、アクアが2人の子供を抱いたまま、俺のそばに寄り添って言った。


「リュート、私も精一杯支えるから……。頑張ろ……?」

「パパ〜」

「……パパ、がんばって」


単語だけではなくなかなか良く喋るようになった双子の頭を撫でながら俺は少し笑った。

この子達の為にも、俺を支えてくれる嫁の為にも、そして俺の為に全てを投げ出してくれる配下のためにも、俺は戦わなければならない。


「ああ、ありがとう」


俺は短く礼を言って顔を上げた。

視線の先には所々に破壊痕のある2代目魔王城の姿が。


「行くぞ!お前達!俺について来い!」


「「「『はっ!』」」」


配下4人の揃った声がその場に木霊した。



---ゼクスside---



ゼクスは部屋にてアザゼルの報告を待っていた。


「奴等の現在地は?」

「アクロスを出発致しました」

「そうか……」

「如何致しましょう?」


アザゼルはその表情を固くしながら問い掛けた。

全ては主であるゼクスの一存で決まる。


「そうだな……、奴等はまだ我等に居場所が割れていることに気がついていないだろう。今が好機と見た。殺れ」

「はっ」

「だが、勿論奴は生かしておけよ?他は皆殺しで構わんがな……クックックッ……」


そう不敵に笑うゼクスはアザゼルの目にも不気味に映るのだった。


「しかし、ルシファーは?奴の戦闘能力は侮れる物ではありません。対策は確実に必要です」

「ヤツを孤立させることができればどうだ?」

「それは……、可能ですが……。しかし、そのような策が?」


アザゼルの不思議そうな言葉に満足気に頷いたゼクスは笑いながら立ち上がった。


「あるだろう、先日捕まえた例のアレだ。アレを上手く使えばルシファーを足止めぐらいできるだろう。皆殺しにした後ターゲットをさらってくる程度造作もないだろう?」


先日捕まえた例のアレ。


確かに、アレならば足止め程度ならば可能だろう。

ゼクス様のみが知る『秘伝の強化薬』を使用すればもしやルシファーを倒せるかも知れない。


「承知致しました……」


アザゼルは小さく返事をし、部屋を後にした。

義理堅い性格のアザゼルは恩義のあるゼクスに報いたいと考えている。

しかし、自分が主と仰ぐ男はそれ以上の不気味さを醸し出していた。


あの男は危険だ、と。

アザゼルの経験が危険信号を発していた。


しかし、


「裏切りなど……許されん。私は決めたのだ……。許されよ、元我が主よ……」


そう、裏切りは許されない。


それはゼクスに殺されるから、などと言うちゃちな理由などではない。

只、彼の精神がそれを許さないのだ。


過去の彼の身の上の出来事故に。


「私は……、既に歩みを止めることすら許されぬ身。ははっ……」


そう、アザゼルは自嘲気味に笑った。



---リュートside---



俺たちはアクロスからイルシェという街へと近づいていた。

魔王城のある街、エステリオまではもう少しだ。


しかし、その時、俺たちの周囲には不穏な空気が立ち込めていた。


「ルシファー、気が付いたか」

「はい、どうやら囲まれている様子」

『マスター、如何する?薙ぎ払う?それとも串刺し?』

「いや、お前はアスタとちょっと止まってろ。暴れるのは後だ」


この2人は暴れるとうるさいからな。

規模で言えばベルに及ばないのだが、アスタは目を離すと正気を飛ばしてしまっていることがある。

それに、マキナは言うまでもなく破壊の規模が普通じゃない。

この2人が本気で暴れれば少し距離はあるとは言え、ここからでもイルシェの街並みを破壊してしまうだろう。


「ルシファー、敵の強さは大したことない。だが……」

「はい、むしろこの程度の戦力で我々に勝負を仕掛けてきたことが不審です……」

「それに、俺たちの居場所は普通にバレてるみたいだって事も分かったな」


居場所が分かっているにも関わらずあからさまに弱い奴が俺たちを襲いにやってきた。

俺の実力を過小評価しているにしても、ルシファーを過小評価しているとは思えない。


「只の捨て石か……、それとも何か別の要因があって選ばれたのか?」

「何とも言えません。しかし……、敵は排除するのみです」


そう言ってルシファーはザッと馬車から降り、敵のいるであろう方向を睨みつけた。


「いつまでコソコソして居るつもりだ?さっさと出てくるがいい。片付けてやる……」

「おいおい、1人で勝手に行くなよ……。マキナ、アスタ、ベル、もう良いぞ。アクアはそこで子供達を守っていてくれ」


ルシファーが出たので俺も一緒に出て行く。

馬車も壊されると厄介だ。アクアも戦えるのだ。馬車と子供達はアクアに任せて良いだろう。

それに、足手纏いになられ過ぎるのも考えものだ。俺としては問題ないのだがな。


「了解っす!」

了解(アクセプト)、マスター』

「了解した、リュート様」

「……分かった。頑張って……」


4人が口々に答え、戦闘態勢に入る。


なんだかんだ言ってアクアはまともな戦闘は久し振りだろう。

しかし、獣人界での出来事を加味すると腕は鈍るどころか寧ろ上がっているはずだ。


しかし、その時、異変は起こった。


「な……、何故、貴様がそこにいる……⁉︎」


ルシファーが1人の男に向かって驚愕の声を上げたのだ。


俺はルシファーの昔の知り合いでも居るのだろうか?と思ったのだが、それは思い違いだった。


それは、俺自身も知る男だったのだ。


「る、し、ふぁー……?る、しふぁー。た、お……す……」


正気を失った瞳をした大天使 ウリエルの姿がそこにはあったのだ。


「ウリエル。奴を、ルシファーを殺せ!」


1人の男がウリエルに向かって指示を出す。

すると、ウリエルはまるで壊れた機械のようにゆっくりと前へと踏み出した。


「こ、ろ……す……。るしふぁー、ころす……」


ウリエルはブツブツとうわ言のように殺意を漲らせる。


あれは、本当にウリエルなのか?あの快活な性格の金髪ヤンキー野郎とは似ても似つかない。

あの虚ろな目、どこ見て居るのかわからない。どこにも焦点があっていないようにも見える。

そして、げっそりと痩けた頬。

何故、あのような状態で新政権派に捕まってるんだ?

幾ら何でも天使を倒すほどの戦力を保持して居るとなると、さらに強く警戒しておく必要があるな……。


「申し訳ありません、魔王様。私は、奴を止めねばならない……!」


憤りを隠せない様子のルシファーは周囲の空気を物理的に凍りつかせながら言った。

俺としてもあの様子のおかしいウリエルを相手に出来るのルシファーだけだと思う。


「頼む。他のやつは俺たちに任せておけ。だが気を付けろ、奴等の手にウリエルが落ちてるって事はウリエルが負けた可能性があるって事だ。万が一がある。十分に気を付けろ」

「はっ!」

ウリエルが思わぬところで再登場

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