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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十一章 魔界編 其の二
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生き残り


俺たちは部屋の中で各々好きな格好でくつろいでいる。

アクアはよく言えば物怖じしない、悪く言えば図々しいので慣れていない家でもいつも通りの様子だ。俺よりくつろいでる。もっと言うとベルよりくつろいでる。

ベルは勝手知ったると言った様子でどっかりと定位置であろう椅子に座っている。一応家主だしな。

後、アスタは買い出しだ。

何故って?まだ俺たちは昼飯を食っていないのだ。


「しかし……、少し人が少ないな……」


俺は小さな声で独りごちる。

ここは旅の中継地点。人の往来はもっとあって然るべきなのだ。

前回来た時に人通りが少なかった理由は近くの山にフレイムが現れたからだ。

ならば今回は?


「何が原因なんだ……?」


俺は少し首をひねりながら街を見渡す。

人々の顔色も優れない様子だ。何か懸念があるのだろうか。


「……リュート、少ないの?……人」


ボンヤリするのに飽きたのかアクアが俺に声をかけてきた。

子供達も移動で疲れたのかアクアの腕の中で眠っている。


俺は窓枠に手を置きながら答える。


「少ないと思う。そうか……お前は余り人の多い所で生活してこなかったもんな」


一応ジルの奴隷であった三年間はシャガルの街に滞在していたが、奴隷であった間は屋敷に軟禁状態だったそうだ。それでは街の内情を知ることもないだろう。精々窓から外を眺める程度だ。

元々アクアは余り周囲の物へ関心を向けるタイプじゃない。これでは街の様子など覚えていないだろう。

俺と一緒に旅してる時も何かと的外れなことを言っていたし、世間知らずは成長せども全くもって治っていない。


「アクアはもうちょっと世間知らずな所を治さねぇとな」

「……リュートが言うなら……、頑張る」

「まぁ無理しなくても良いけどな」


アクアはありのままでいいのかもしれない。

下手に聡くなるよりも少しアホな所がある方が可愛いかも。しかし、アホ過ぎるのも考えものだ。

まぁ、要するに俺的にはどちらでも構わないのだ。どっちにしろ可愛いからな。


と、その時、ドアを開ける音とともに元気の良い声が聞こえてきた。

アスタだろう。


「リュート様〜、ただいまっすー」

「おぅ、おかえり」


やはりアスタだった。

買い出しから帰って来たのでいそいそと飯の準備をする。

長距離の移動だったので腹が減っているのだ。

もうお昼時はとっくに過ぎているが、早く飯にしよう。


「腹減ったっすよ〜」

「俺もー」

「私も」


口々に俺たちが言うとため息をつきながらアクアが立ち上がった。


「じゃあ作るけど……」


ゴソゴソと袋の中身を物色する。

アスタのやつなんのつもりで買って来たのか全くわからん。

何故に調味料ばっかりこんなにも豊富なのだ?

肉はどうした。肉を食わねば元気が出んぞ。


「適当に炒めるかな……。ベル、火」

「了解」


アクアがベルと連れ立って台所へと向かう。

コンロなんて便利な物は存在しないので火は魔法でつけるのだ。

アクアなら1人でも出来るのだが楽をしたいらしい。アクアらしいな。


俺は暇なので眠っている子供達を眺める。


「ルシファーのやつ、遅いな」

「何をしてるんでしょうかね……」

「なんか昔の知り合いに会いに行くらしいが……。魔王城の方向へ向かったよな……?」

「そっすね。でも城に用があるなら俺たちと一緒に行けばいいのに……」


アスタが言いながら関節をバキバキとならす。

ルシファーのことだから心配はしていないが……。一体何をしているのだろう。


「問題は新政権派の動きっすね。奴等が魔王城に攻め込むのも時間の問題って話っすよ」

「そりゃ旧政権派には頭がいないんだから叩くんなら早いに越したことはないよな。それとも、俺は完全に死んだことになってんのか?だったらじっくり構えるのも手だが……」

「なんとも言えないっすけど……。そう考えられてる可能性は高いっすね」


俺が生きている事を知っているなら俺を殺しにくるはずだ。

だが、来ない。まだ泳がせているのだろうか?その可能性は低いと思う。

ならば俺の生存は新政権派にはバレていない可能性は高い。


「バレて……無いよな……?」

「そればっかりは俺にもわっかん無いっすねー。案外泳がされてるかも知んないっす」

「一概に言え無いんだよなぁ……。泳がされてるにしても別に泳がされて不都合ないだろ?」

「そっすねー」


泳がされているのならば堂々と魔王城へと帰還するだけだ。

敵の動向が分からないので便宜的にアスタの家を拠点としているだけでさっさと城に戻るに越したことはないのだ。


「あー、難しい話ししてたら腹減って来たっすよー」

「そんな難しい話だったか……?」


アスタはヘソのあたりを手で押さえながらぐいーっと伸びをした。


「……2人とも、ご飯出来たよ。適当だけど」

「美味そうっすーっ!」

「早いな」


さっさと食卓に着く。献立はアスタが適当に買って来た食材を適当に炒めた肉野菜炒めだ。白米が無いのが惜しい。

ちなみに、子供達の飯はアクアが別口で用意したそうだ。

まぁ今は2人ともぐっすりと眠ってるので起きてからでいいだろう。


「頂きます」

「頂きまっす!」


俺とアスタがガツガツと肉野菜炒めを食う。

アスタが適当に買って来た食材を適当に調理したらしい。

アスタがアホほど買って来た調味料も割と使われている。

美味いか?と聞かれれば間違いなく美味い。


「むぐむぐ……、我ながらいい出来」


アクアが自分の料理を自画自賛する。

適当に作ったと言い張っているが主婦なんて大概目分量だもんな。

かく言う俺も前世では一人暮らしだったので自炊するときは目分量だった。

いかんせん一人暮らしだったので自炊を余りしなかったが。


「アクア様は料理がかなり上手い。私も慣れるべきだろうか……」

「ははは、ベルはビックリするほど無器用だからダメっすよ〜」


お前は空気を読め。

女性が料理をしようかと考えてるところに変な茶々を入れるんじゃない。


「ふん、余計なお世話だ。いつか完璧にこなせるようになってみせる」

「ベルに出来るのは精々火力の調整ぐらいっすよ」

「言わせておけば……。燃やすぞ、アスタ」

「げぇ、そりゃ勘弁っすよ」


少し機嫌を悪くしたベルがアスタを睨みつける。

アスタは戯けて肩をすくめながらも飯を食う手を止め無い。


「ま、作ることがあれば爆弾処理は任せてくれっすよ」


ニヤッと人好きのする笑顔を見せるアスタ。

それを見たベルは少し俯いて頬を紅潮させる。

なんだかラブコメの波動を感じるんだが。これは気のせいでは無いだろう。



---ルシファーside---



ルシファーはある場所で昔の知り合いと落ち合う約束をしていた。

主の身を守るよりもある意味では優先する必要のある事柄だ。


「到着した……」


ルシファーがある女性に声をかける。

その女性は右足が欠損しており、全身に痛々しい傷跡のある女性だった。

その美しい青い髪と瞳は陽光をキラキラと反射して輝いている。

しかし、本人の表情は疲れ切った様な冴え無い表情であった。


女性はまるで長年待ち続けた待ち人と再会したかの様に面をあげる。


「ルシ……ファー……。あなた、帰って来て……」

「久し振りだな。早速だが、生き残りであるお前に知らせが一つ二つある」

「リュート様は……、無事なの……⁉︎」

「無事だ」


ルシファーの短い返答に女性は安堵した様に息を吐く。


「そう……、あの方は……元気なのね……無事なのね……」

「あぁ。魔王様は運が非常に良かった。仲間にも恵まれていた。もうお前達が耐え忍ぶ必要もないのだ。我らが主が今ここ、魔界に舞い戻ったのだ。今こそ……反撃の時だ!」


ルシファーは力強く手を握り、言う。


そして、ゆっくりと右手を伸ばし、続けた。


「手を……貸してくれるな……?」


女性はその手をゆっくりと取って、静かに肯定した。


「えぇ、あの方のためにすでに一度捨てた命。ならば今一度、彼の方のために使いましょう」


「そう言ってくれると思っていたぞ……。アリス」


ルシファー除く『七大罪(セブンス・シン)』、最後の生き残り、アリス・アスモデウスは静かに微笑んだ。

昨日更新のツイートするの忘れてた。今日は忘れぬ

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