水浴び戦争
更新ペースが早いのは単に暇だからです。断じて無職ではありません。
気絶した盗賊を縛りつけた俺は現在アクアを裸に剥いて水魔法で洗濯中だ。
剥いたとは言い方が悪いかもしれないけど無理矢理剥いたんじゃないぞ。
「湯加減はどうだ?」
「冷たい……死ぬ……温かくして」
「俺は温度調整出来ないから我慢な」
「何で湯加減聞いたの……?」
俺はアクアを無視して洗った。
アクアはまだ小さいし羞恥心とか無いのかな……。
目のやり場に困るというか何というか……目の毒だ。
いや、別に俺はロリコンじゃ無いけどね。
でも俺の外見はまだ8歳なのだ。見た目が同い年くらいの裸の女の子が直ぐ近くにいたら意識せざるを得ない……と思う。
「ホラ綺麗になった」
綺麗に泥とか果汁を流し終わったので、アクアにタオルを投げてやった。
「うう……冷たい……寒い……リュート、拭いて……」
アクアはカタカタ震えている。本当に寒いの苦手なんだな……。
「仕方無いな……ホラあっち向け」
俺はアクアに後ろを向かせて頭を拭いてやった。
アクアの長くて青い髪はサラサラでとても良い手触りだった。ずっと触っていたいくらいだ。
「何だぁ?兄ちゃん。ちゃんと兄貴やってんじゃねえか。同い年くらいなのに兄ちゃんはしっかりしてんなぁ」
ジェイドが馬車の横からひょっこり顔を出した。
俺がアクアを洗っている間、ジェイドは盗賊が滅茶苦茶にした荷物を整理していたのだ。
「ごめん、ジェイドさん。直ぐ手伝うよ」
「あぁ、良い良い。ゆっくりやってくんな」
全く、ジェイドは良い人だな。
折角だからもうちょいアクアの髪を堪能しようかと思ったが、アクアは飽きてしまったらしい。
自分で体を拭き始めた。
「服は……?」
「あ?服?……あー、ちょっと待ってろ」
俺は急いで馬車に服を取りに行った。
でも、アクアの服が見つからない。
「ジェイドさん、アクアの服どこにしまったか知らない?」
「んあ?おりゃあ知らねえけど……もしかしてアレか?」
目をやるとドロドロになったアクアの服が転がっていた。
汚すぎてゴミかと思ったぞ。
盗賊が家探しした時に投げ捨てたのか……。
替えの服なんてもう無いぞ……。
仕方が無いので俺の服を貸してやることにした。ちょっと俺の方が背が高いのでサイズが大きいだろうけど何も着ないよりマシだろう。
服を渡して少し待っていると馬車の陰から服をだぼっとさせたアクアが出てきた。
「やっぱダサいな。サイズの大きい男物の服ってめっちゃ可愛いシチュだと思ったんだが……」
如何やらアレは肉体がある程度成長した女性限定の魔法らしい。
「そんなことより……リュート……汚い。洗ってあげる……」
俺も最近水浴びしてないし、ついでに頼もうかな。旅の間は体を濡れタオルで拭くだけだったし。
俺はお言葉に甘えて体を流してもらったのだが……さっきの当てつけなのか、アクアは水を温かくしてくれない。
「湯加減は……どう?」
全く白々しいセリフだぜ。よろしい、ならば戦争だ。
俺にだって男の意地ってもんがあるんだぞ。
「湯加減かー、良い感じだなー」
冷たいよ。でも俺は大人だ。このくらい余裕で我慢できる。
「……っ!良い感じ……?そんな……」
(ふふふ……俺の、勝ちだ……ッ‼︎)
と思ってたら水がピリピリし始めた。
「どう……?湯加減は……」
コイツ‼︎水に雷魔法で電気流してやがる‼︎
「くっ……!良い……感じ……だ……ぜ……?」
キツイ!前世でも電気風呂は苦手だったんだよな……。
しかも多分これ電気風呂よりも電圧高いし。
「…………ならば……っ!」
「いや、待て待て待て待て‼︎もうやめろ‼︎流石に怪我するだろ!」
アクアが目をキラーンと光らせて更に魔力を込めようとする。
やめろやめろ、加減ってもんを知らんのか。
「むぅ……ごめん……」
本気で申し訳なさそうな顔をするアクア。
「……俺も意地悪して悪かったな、正直言って冷たかったし雷魔法はもう勘弁」
某マサラ人みたいに電撃に耐性持ってる訳じゃないから。
「……はい、タオル」
「ん、ありがとう」
タオルを受け取ってガシガシ頭を拭く。
それをアクアがじっと見つめてくる。
「……頭拭くの……手伝う」
「いや、別に良いけど……」
「手伝う……」
「あ、はい」
何だか有無を言わせない様子だった。
アクアも反省してるみたいだ。
俺はアクアにタオルを手渡した。
アクアの手つきは意外と優しかった。前世の母さんとかエルザのことを思い出してしまった。
今の俺の母さんは俺が生まれてすぐに死んじまったからな……。
なんて感傷に浸ってたらジェイドが声をかけてきた。
「おい、兄ちゃん。いつまで水浴びしてんだ?もう準備できてるぞ」
「え?あ、うん。すぐ行くよ」
「何だぁ?嬢ちゃんに拭いてもらってんのか?仲のよろしいこって」
ジェイドはニヤニヤ笑いながらブラックホースの方へ向かった。
待たせちゃ悪いし、俺は急いで服を着替えた。
「おし、行くか」
「……うん」
俺はアクアの手を取って馬車へと向かった。
アクアの手は少し冷たかった。
今回は休憩回。こんなほのぼのしてるけど隣に盗賊います。