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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十一章 魔界編 其の二
179/220

魔王

---?side---


薄暗い部屋の真ん中に1人の男が佇んでいた。

顔に大きな二つの傷を持つその男は窓の外の景色をまるで物思いに耽るかのように静かに見つめている。


「ゼクス様」


1人の別の男が部屋へと入ってくる。

赤い髪の魔族だ。

傷の男は振り返り、呟くように言った。


「……アザゼルか……。どうした?」


アザゼルと呼ばれた赤髪の男はゼクスに跪く。


「魔界に……奴らが帰って来ました」


ゼクスはその言葉を聞くと羽織っていたマントを翻し、ツカツカと窓のそばまで立ち寄った。

太陽の日差しがゼクスへと差し込む。

ゼクスは口元を歪めながら振り返らずに言った。


「とうとう来たか……、やはり生きていた、と言うことか……」

「はい。処遇の方は、如何致しましょう?」

「殺せ。だが、()だけは生け捕りだ。分かっているな?」

「ハッ」


それだけ言うとゼクスは側にあるソファーへと腰掛けた。


「報告は以上か?」

「はい。情報が入り次第追って報告致します」

「ご苦労だった。下がって良いぞ」

「失礼いたします。魔王様(・・・)


アザゼルは恭しく一礼するとゆっくりと扉を開け、退室した。

アザゼルが退室し、部屋に一人きりとなったゼクスは静かに呟いた。


「リュート・エステリオ……。ククク……、やっと出会えたぞ……、クククク……!ハッハッハッハッ!」


1人の男の狂気じみた乾いた笑いがその場に静かに木霊した。



---リュートside---



ルシファーは俺との作戦の為、現在単独行動に出ている。

どうやらルシファーの昔の友人が1人、魔王城にいるらしい。

ルシファーが言うには確実に信用できるとの事だ。理由は俺にも教えられないらしい。


俺たちはと言えば馬車に乗ってゆっくりとアリルキアへ向けて移動中だ。

アリルキアに居るアスタの実家を拠点にするつもりなのだ。

実家といってもアスタの両親は既に死亡して居るらしく無人の家だが、アスタ曰く、拠点にするなら使ってくれとの事だ。


ちなみにこの馬車はアクロスという街で買った。金の持ち合わせがあって良かった。

出費を抑えたかったので馬一頭と幌馬車を購入したのだが、アスタが執拗に高い物を買いたがった。却下したが。


現在デウスエクス・マキナにはある役目を言いつけて居るのだ。

奴の事だ。そろそろ帰ってくると思うのだが……。


『マスター、ただいま。遅くなってごめんなさい。情報を持ち帰って来た』

「いや、早いくらいだ。で、どうだった?」


隠密行動力と兵力に秀でているマキナは大量のドローン型機械人形を飛ばして現在の魔界の情報収集だ。俺たちは何かと知らないことが多いからな。当事者だし、細かい事情に精通しておく必要がある。

マキナ曰く、彼女の使役するドローンには透明化能力がある上、魔力も持たない為、ほぼ探知が出来ないというスグレモノなのだ。


瞬間移動が使えるので戦闘になっても確実に戻って来れる。機械人形を使役すれば人出にも困らず、更に本体は高い戦闘能力を備えて居る。

これ程情報収集に適した人材も珍しい。


マキナは出現させていたドローンを何処かへ格納する。まるで消滅したかのようだが、本人曰く、『格納した』らしい。


『旧政権派の一部と接触した』

「顔を合わせてないだろうな?」

『ドローンを通して会話しただけ。信用度はイマイチ』

「一応聞こうか」


俺の言葉にマキナは『了解(アクセプト)』と短く答えるとツラツラと話し始めた。


『敵の頭はゼクス・バアルという男。魔王城崩壊当時、11歳。13の頃から頭角を表し、アザゼルとネヴィロスという2人の魔族と共に旧政権派を支えていたらしい。しかし、突然三人は反旗を翻し、革命活動を始めた。そしてそれが2年前の出来事』


マキナは一息な話すと少し息をついて俺の顔を上目遣いで見つめる。


『新政権派は旧政権派を倒し、政権を握ることを目的として居る。というか、ゼクスという男を魔王にしようとしている……?』

「そのゼクスってやつは……貴族か?」

『一応。マスターのパパの直属の部下の子供……だったかな……』

「ややこしい関係性だな……」


俺は目頭を押さえて息をつく。

マキナのドローンは今も数機から数十機が魔界の空を飛行して居る。

一時間程度で集まったものとしては上々だろう。


『どう?』

「なかなかの調査能力だ。やはりお前を仲間にできたのは俺にとって運が良かった」


素直に褒めておく。機械とはいえ流石は神だ。

というか俺の部下や仲間には褒められるとあからさまに喜ぶ奴が多い。主にアスタと祐奈。


『褒められたら嬉しい』

「お前もかよ。素直だな、オイ」

『素直は美徳』


マキナは澄まし顔で続ける。


『規模はまだ不明。奴らも戦力は隠しているみたい。これは推測の範囲内だけど妖精界の軍隊よりちょっと少ないぐらいだと思う』

「結構多いな……」


というか多過ぎる。

大方旧政権派を疎ましく感じている団体が力を貸しているのだろう。

新政権派の構成員は魔族だけじゃ無いことがほぼ確定した。


「なんで革命に多種族連れて来てんだよ……。他種族国家にでも変えるつもりか……?」


ボヤきながら空を仰ぐ。

久しぶりに見上げる魔界の空は澄んだ青に染まっていた。

夕方になるとコレが禍々しい色に染まるのだから不思議だ。何故か夕方にかけての魔界の空は別の場所の空に比べて暗い赤になるのだ。


『マスター。目的地はもうすぐ』

「見えて来たか」


マキナの指差す方向を見るとそこには街の入り口が見えてきた。

小さい頃に数日宿泊したアリルキアという街だ。

あの時は近くの山にフレイムが現れたせいで人の往来が少なかったが、今はそうでも無い。平和そのものだ。


「懐かしいな、アクア」

「……そうだね。……ジェイドさんに怒られたっけ……」

「思えば俺が怒られたのって人生であれが最初だったな……」


ちなみにフレイムにも説教された事があるので最後ではない。

魔王城の連中は基本的に俺を甘やかしていたからな。図書室の蔵書を燃やしても別にお咎めなんてなかった。


「さてさて、ウチはどこかな……っと……」


アスタが言いながら馬車を降りる。

割と賑わってはいるが前来た時よりマシと言った程度で、そこまで大きな街でもなくなっていた。


「アスタの家って誰かいるのか?」

「いや、居ないんじゃないすかね。もう10年以上帰ってないっすから」

「前はいたのか」

「はい、一応親兄弟がね。親は結構前にくたばっちまいましたけど」


サバサバとした態度でアスタは言った。

アスタはそういえば見た目の割に結構歳食ってたな。そりゃ親も亡くなってる訳だ。


「悪いこと聞いたな。すまん」

「あ、いや、気にしないでくださいっす。昔の話っすから」



そうこうしているうちに到着したらしい。

ベルが扉の前に駆け寄る。


「久し振りの我が家」

「だなー」


見上げると二階建てのようだ。

狭いが庭もあるし、馬車を置くスペースや馬のための小屋もある。

平均より少し裕福な家庭って感じかな。


「って、我が家って……。ベルとアスタって兄妹じゃ無いよな?」

「あ、はい。昔一緒に暮らしてたってだけで血は繋がってないっすよ?」


呆気からんと言い放つアスタ。

え、兄妹でもないのに親公認で一緒に生活してたのか?それなんてエロゲ?


「私は昔アスタの両親に拾われた捨て子だった。だから私はアスタと兄妹同然に育った。ちなみに私の年はトップシークレット……です」

「以外と重たい過去背負ってたんだな……」


アスタとは世話話はよくするのだが昔の話となればとんとしなかった。

こうして聞くのは新鮮だ。


「さ、遠慮なく入ってくださいっす。リュート様のものはリュート様のもの。俺のものもリュート様のものっすから!」

「何その変わったジャイアニズム」


言いつつ俺たちはアスタの実家に世話になるのだった。

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