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転生魔王の異世界征服  作者: 星川 佑太郎
十章 獣人界編 其の二
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サプライズじゃ無い


「いや、気の所為……って事にしておこう……。この件は俺の手には負えない……」


リーシャとサリアが……、まぁ、なんだ。御幸せに。


俺は少し額に手を当てながら当てもなく歩いた。

なんだか疲れきってしまった。劇的な出来事が起こると俺は頭を抱える癖があるようだ。


「む、リュートよ、どうした?顔色が優れないが」

「ミド。いや、気にするな。そんな事よりお前は調子どうなんだ?」


ミドがスゥ〜っと空中を滑りながらやってきた。歩くのが億劫らしい。これだから神様は。そんなんだったらその内腹が出るぞ。

実はこのカミサマはついこの間まで二日酔いで気を失っていたのだ。

それって二日酔いっていうのか?


「まぁ、年甲斐も無くはしゃいでしまった。しかし、もう快調だ」

「そりゃ、よかった。お前はもう天界(うえ)に帰るのか?」

「そうだな、そろそろ帰るか。ここに長居するのもよく無い。あ、ちなみに言っておくが、私の住処は天界では無い。私は龍神領域(アヴァロン)と呼ばれる固有の領地を持っているのだ。そこに住んでいる。ま、地上の存在が自力で到達することは不可能だがな」


ふふん、と鼻を鳴らしながら得意げにいうミド。

ミドが言うには龍神領域(アヴァロン)とは選ばれた神のみが入ることを許される神域だそうだ。

さっぱり分からん。

そう言えば前に『ウチに来い』と言われていたな。


「そこってルシファー同伴ならいけるのか?」

「まぁ、龍神領域(アヴァロン)への到達は出来るな。奴は天界の存在だから……。しかし、龍神領域(アヴァロン)への侵入は私の許可が必要だからな、私の家には基本的に誰もこんのだ。50年前は賑やかだったのだが……」

「あ、悪いな……。湿っぽくしちまって……」

「いやいや、気にするな。確かに当時は悲しかったが、今はもう乗り越えたさ」


そう言ってミドは遠い目をした。

ミドにはその昔、ヤトガミ・リョーマという恋人、もとい同居人がいたのだ。

本人は指摘するたびに真っ赤になって否定しているのだが、いい加減バレバレである。

しかし、意外と乙女な性格してるんだな、ミドの奴。

50年前はと言えば、その時はフレイムとリョーマさんとミドは3人で生活していたんだっけ……。

そして、リョーマが死に、フレイムはミドと袂を分かった。

そして俺はフレイムと出会い、その後ミドと出会った。

しかし、残念ながらその時にはフレイムは死んでしまっていた。


「リョーマやフレイムは今何をしているだろうか……。もしかすると2人で私を眺めているのかもな……」

「だと良いな……」


本当にそうだと良いな。

フレイムは死に際に『ずっとお前のこと見とる』って言ってたから案外今もミドと俺のことを見てるのかもしれない。


ミドはフッ、と息を吐いて天を仰いだ。


窓外から射しこむ陽光がミドの白っぽい髪に反射してキラキラと輝いて見える。


「私は……、長く生きすぎた。だから、お前達が死なないように、私が後悔しないように、行動しようと思う。直接助太刀は出来んがな」

「気にすんな。ミドが後ろにいてくれるだけで安心感が違うんだぜ?」

「ふはは、神冥利に尽きると言うものだ。それではな、私はもう行く」


そう言ってミドはフワリと宙に浮かんだ。


「お、おい。皆んなに何も言わねえのか?」

「お前に言ったからよしとしよう。それに、アクア達には別れは済ませてきた。子供を撫でてから帰ろうと思ってな」

「何だそれ」

「ふはは、年寄りの道楽だ。許せ。それではな、リュート。また会おう」


それだけ言うとミドは俺の言葉も聞かずにその場から消えた。


「おぅ……って、ちゃんと俺のセリフ聞けよ。せっかちな神様だ」


自分で年寄りとか言ってたけど人に言われるとキレるんだよなぁ、めんどくせえ神様だ。

せっかちでめんどくせえババアとか誰得なんだろ。

見た目だけは本人の言う通り若くてピチピチなのだが。いかんせん長生きなので思考がババアと化してる。


「さてと、何だか目的を見失ってた気がするが……。妖精王のおっさんに会いに行くか」


一つ用事を思い出した俺はブラブラと廊下を歩くのだった。


---


こんこん、とノックをする。


「おっさん、いるか?俺だ。リュートだ」

「む、リュートか。入れ」


開けるとそこには妖精王のおっさんとメイドが1人がいた。

一応王様なのでおっさんにもデスクワークぐらいあるのだろう。珍しい。


「なんだ、仕事中か?」

「そうだが、問題無い。用とはなんだ?」

「あぁ、アンタ、魔界の内乱の話知ってるか?」

「ふむ、話には聞いておる。ゼクスという男が新政権派の頭として台頭して来ておる。お主は旧政権の頭であろう?」

「そうなんだが……、実は俺、一回も魔界に帰ってないんだ……」

「な、何!バ、バカな!」


驚愕した妖精王はデスクに思い切り両腕をついて立ち上がった。


「そのような体たらくでどうして民の支持が得られよう⁉︎な、何をしておる!早く行かんか!」

「だ、だよなぁ……。って訳で、俺は魔界に行くんだが……。ジルの事を相談したい……」

「ええい!奴の捜索ならば任せておけ!さっさと行かんか!」

「え、あ、お、おぅ」


締め出されてしまった。

国のことはよくわからんが王様目線からすると俺はもしかすると相当ヤバイ事してるんじゃ無いだろうな?


「取り敢えず部屋に戻ってアクアに説明して……。そっから移動手段だな……。どうしたもんか。一応荷物の準備は出来てる。メンツは……今回は魔族連中だけ連れて行くか。アクアも行くって言って聞かねえし……」


すでに準備は終えている。

しかし、子供2人を連れて行くのもなぁ。


ちなみに、アルバはリーシャが面倒を見てくれると言っている。


「うし、ルシファー!いるか?」

「ハッ、お呼びでしょうか」


俺は歩きながらルシファーを呼んだ。

いつも通り超反応を見せるルシファー。ふと気になったのだが、ルシファーはいつもどこに居るのだろうか。

呼ぶと現れるのであまり気にしたことがなかったが……。


まぁいいか。


「魔界へ向かう。内乱を終結させるぞ。準備は……」

「完了してございます」

「相変わらずの仕事ぶりだ」

「恐れ入ります」


恭しく膝をつくルシファーに俺は素直に賛辞の言葉を送った。

というか、凄過ぎる。

俺もルシファーの忠義に報いることが出来ればいいのだが。

御恩と奉公の関係になろうにも俺は御恩をやったことがない……と思う。


と、少し考え事をしていたら自室の前に到着した。

自室とは言っても妖精王の城の内部に借りてる一室なので正確には俺の部屋ではない。


「ただいまー」


俺はゆっかりとドアを開ける。

中には勿論アクア達がいる。


「リュート、おかえり」

「魔界に行くことになったんだが、行くだろ?」

「行く」


アクアは二つ返事で頷く。うん、予想通りの反応だ。


「じゃあ、アスタ達にも連絡を……」

「リュート様!魔界に行くってマジっすか⁉︎」

「情報早いなぁ」


俺の後ろからドアをバタン!と開けながらベルとアスタが顔を出した。

というかどこから仕入れてくるんだこの情報を。


「リュート様、私も今回は同行する。我々三将軍の魔界での影響力を非常に高い」

「ベルの言う通りっす!勿論俺たちも行くっすよ!久しぶりの出番っすから!」

「あー、うん。じゃあ頼むわ」


暑苦しいな。

まぁ問題無い。最初からこの2人は連れて行くつもりだったし。


「さて、問題は足だな」

「はい、ここから魔界はあまりにも遠過ぎます。リマ・シャルリアの比ではありません。翼竜種(ワイバーン)を使ってもかなりの時間がかかるでしょう」


ここから魔界までの距離は非常に遠い。

位置関係で言えば魔界はこの世界の東端にあるのだ。

そして妖精界はこの世界の西端に位置する人間界の真隣に存在する。もう遠いなんてもんじゃ無い。

しかもここ、ミストレアは竜人界寄りに位置しているのでもう考えうる限り最も魔界から遠い場所なのだ。


「それならば心配には及ばん」


バンッ!と扉を開けて入ってきたのはフェリアだった。


「ふふふ、そう言うこともあろうかとお前が留守にしている間に経路(パス)を構築しておいたぞ」


ドヤァ。

フェリアはドヤ顔で胸を張った。相変わらず胸がない。


「貴様!どこを見ている!」


ばれた。


「悪かった悪かったって……。えーと、つまり、転移魔法で魔界に行けるってことか?」

「その通りだ」

「でも、正確な座標はどうしたんだよ?誰のところに……」

「聞いて驚け。ジェイドの家だ!」

「な、ま、マジかよ⁉︎」


ジェイド。

その昔、俺とアクアをまるで我が子同然に扱ってくれ、共に旅をした男だ。

昔は商人をしていたが、確か実家に戻って農家をするとか言ってたっけ。

アレからもう8年か……。久しぶりに会えるんだな……。


「……ジェイドさん……、久しぶりだね……。会えるの楽しみ」

「だな。あの時の礼もしたいしな。俺も今から楽しみだ」


俺はアクアと顔を見合わせた。

なんだか親の家に里帰りする気分だ。今から少し気分が高揚してきた。


「でもさ、よくジェイドさんの家に座標作れたな。会ったのか?」

「いや、勝手に作った。だからサプライズになるな」

「それサプライズじゃねーよ!不法行為だよ!」


したり顔でうんうんと頷くフェリア。昔より考えが柔軟になった気がするが、柔軟になった結果がコレか。

しかしまぁ、この世界には『人の家に勝手に転移魔法の座標を作ってはいけません』という法律は……ある訳ないか。


「まぁ、良い。いや、良くないけどまぁ良い。取り敢えずこれで足の問題は解決だな。出発は明日になるが、良いな?」

「はい、私はいつでも構いません」


ルシファーが真っ先に頷いた。


「俺も問題ないっすよ!」

「私は少し準備をしておく。どうせアスタは手抜かりがある」

「……私はオッケー……だと思う」


アスタ、ベル、アクアの順に相槌を打つ。

今回は魔界の内乱という神とは関係ない事案なので祐奈は連れて行かない方針だ。

祐奈は仲間内で唯一の人族なので人間界の捜索に回って欲しいのだ。


「一応祐奈に魔力回復用の針を作って貰っとくか。じゃ、今日のところは解散」


こうして魔界への大移動プランの話し合いはまだ日が出てるにもかかわらず早々に終わったのだった。


アヴァロンって実際はアーサー王の伝説でマーリンが住んでるところだったような気がする。

まぁ、そんなの関係ないんですけどね。

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